(注:本稿は、2023年に初投稿したものの再録です。)
いつも利用している図書館の新着本リストで目に付いた本です。
内田樹さんの著作は今までも何冊か読んでいます。本書は、映画作家の想田和弘さんとの対談を書き起こしたものです。
私にとっては、少々哲学的、抽象的な議論もありましたが、なかなか興味深い気づきを与えてくれました。
お二方ならではといったコメントも含め、そのいくつかのくだりを覚えとして書き留めておきます。
まずは、「今回の東京オリンピック」について。
広告代理店による「感動の商品化」と位置づけた内田さんに続いて、想田さんの本質を突く指摘です。
そして次は「新型コロナウィルス禍」により明らかになったことについて、内田さんはこういった点を挙げています。
この新型コロナ禍に対する政策を進めるうえで、現政権の “マーケット至上主義的価値観” を重視する「新自由主義的姿勢」が垣間見られました。
この風潮の中、内田さんと想田さんは改めて「デモクラシーの本来的思考」を解りやすい例示を示して説いています。
と内田さんは語ります。
現実は、さらにそこに「低投票率」という要素も加わります。そうなると51は過半数かどうかも怪しくなり、「民意を得た」とは到底言えない状況なのが実態でしょう。
と想田さんは話します。まさにそのとおりですね。
こういった “民主主義” や “多数決” の基本的な考え方を、本来であれば、初等教育のなかでしっかりと理解させるべきなのですが、今の世情をみると永田町あたりで授業をした方がよさそうです。なんと情けない状況でしょう。
さて、本書の内容に戻りますが、お二人の対話は「時間」をテーマにした思索にも進んでいきます。“直進する時間” と “循環する時間” です。
想田さんは牛窓(岡山県)での暮らしで “循環する時間” で生きることを実体験しています。
この話を受けて、
と、内田さんは “定常経済” への移行は、今に生きる人類にとっての歴史的ミッションだとも語っているのです。
とても面白い刺激的な議論だと思います。
このところ “脳みそに優しい” エンタメ的な小説を手に取ることが多かったので、やはり時折はこういったテイストの本を読むのもいいですね。