ブルシット・ジョブ ― クソどうでもいい仕事の理論 (デヴィッド・グレーバー)
(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)
このところ “仕事” に関係するような本はできるだけ読まないようにしているのですが、かなり話題になっているようなので、ひととおり目だけでも通しておこうと手に取ってみた次第です。
“ブルシット・ジョブ” というのは「くだらない、どうでもいいような仕事」のことで、著者はこう定義しています。
ひとつの「作業」という単位でブルシットなものもあれば、ひとつの「業務」の場合もあります。
さらには、「会社」そのものが、「業界」自体が、ブルシットなものさえあるといいます。特に昨今の「金融ビジネス」にはその類のものが多くみられるというのは首肯できる主張でした。
著者は、ブルシット・ジョブを5つの類型に整理しています。
これらのブルシット・ジョブを生み出す原因についても詳しく解説されているのですが、その中のひとつに、私がスッと理解できたコンセプトがありました。
「インターナル・マーケティング」です。
「(社内)マーケティング活動」に限らず、これに類する営みはどんな企業でも見られますね。
いわゆる “根回し” もそのひとつです。多くの根回し自体がブルシット・ジョブであるのと同時に、必要性が低いにも関わらず根回しをされるだけの立場の人もブルシット・ジョブ(パーソン)だと言えるでしょう。
さて、本書を読み通しての感想です。
論考の対象が欧米の職場であることから、今、在宅勤務の進展に伴い日本でも議論されている「JOB型雇用」をベースにした労働環境の実態の紹介や解説がされているのは興味深かったですね。
(ブルシット・ジョブといえども、何らかの「ジョブディスクリプション(職務記述書)」は準備されているんですね。その準備作業自体もブルシット・ジョブですが)
ただ、正直、とても読みづらい本でした。翻訳によるところもあると思いますが、おそらく原文自体のせいでしょう。もっとシンプルに分かりやすく論を進めることもできたはずです。
私自身の理解力不足に加え、欧米の様子に疎いこともあり、著者による例示や暗喩がかえって分かりにくさを助長していました。
面白いテーマの著作だっただけにちょっと残念です。