居酒屋の誕生 江戸の呑みだおれ文化 (飯野 亮一)
(注:本稿は、2015年に初投稿したものの再録です)
何かの書評欄で目に止まって気になった本です。
「居酒屋」をテーマに、その誕生から発展の歴史を多面的な観点から説き起こした著作でなかなかユニークですね。
さて、居酒屋の起源は、江戸時代、「酒屋で酒を飲む(「居酒」)」ようになったのが始まりらしいのですが、現在のような「ちょっとした料理」との組み合わせで酒を提供するというスタイルは、「煮売屋」で酒を出すようになった流れによるものだそうです。
江戸時代初期から煮売屋はその数を増やしていきましたが、「火」を使う商売だったので「火事」の原因にもなりました。そのため、度々奉行所からの町触で、夜間の営業が禁止されました。
禁止されても、その実態としては取り締まりは徹底されませんでした。民衆のニーズの高まりはどうにも抑えきれなかったようで、この夜間営業禁止令も綱吉時代には解禁されています。
こうして居酒屋はその数を増やしていきましたが、その定着に伴い居酒屋で供される料理も多彩に変化していきます。
煮売屋の流れで芋煮などの煮物から店先で焼いた団子や田楽・・・、そういう中で江戸末期には鍋料理を売り物にする居酒屋も登場しました。
この鍋料理、初期は一人用の「小鍋」でした。それが、ひとつ鍋を囲んでという姿に変わっていくのですが、そのひとつのきっかけが、遊里での流行りごとだったのだそうです。
本書では、こういった居酒屋にまつわる様々な話題が、それこそ山のように紹介されています。
目次を眺めても、
どれもこれも興味を抱かせるものですね。
さらに、それらのエピソードは、豊富な図版や当時の川柳などとともに解説されていくので、見ても読んでも楽しい本です。
ちなみに、食卓や腰掛といった店内の様子も、私たちがテレビや映画の時代劇で見慣れている居酒屋風景とはかなり違っていたようです。
本来の居酒屋の姿を知るにつけ、江戸時代の町場の息吹が鮮やかに浮かび上がってきますね。