日本人へ 国家と歴史篇 (塩野 七生)
この前読んだ「日本人へ リーダー篇」の姉妹編です。
本書でも塩野七生さんの歯切れのよい主張がふんだんに開陳されています。
ひとつひとつの意見に対しては、私としては首肯できないところも結構あるのですが、他方「なるほど」と感じるところも数多くありました。
たとえば、そのひとつ、代表作「ローマ人の物語」を書き終え、その行程を振り返ってみたときの塩野さんのことばです。
「ローマ人の物語」の著作一本に集中したことにより、塩野さんは、それに関連する情報のみをすべて自分の頭の中に泳がせることができたそうです。その結果、さまざまな情報が、想定外な関係性もたどりながら「ローマ人」という軸に自然にまとまっていったというのです。
このあたり、もちろん私は類似体験をしたことすらありませんが、さもありなんという感じはしますね。
また、こんなフレーズもありました。
さて、本書は、「文藝春秋」の巻頭エッセイとして連載されたものを再録したものであるせいか、時事問題や政治に関する小文も数多く載せられています。
その中のひとつ「安倍首相擁護論」の中での塩野さんの言葉は、「政治」のひとつの側面を的確に突いたもので、ストレートになるほどと思わせるものでした。
まさに現下の問題は、「理性に基づいて行使しているか」という点ですね。
もうひとつこの類の小文で、塩野さんらしさが発揮されているのが「夢の内閣・ローマ篇」と銘打たれた章です。ローマ帝国の皇帝の歴々を配した塩野的「夢の内閣」の紹介です。
「内務(総務)」「外務」に続いて「防衛省」と来るのも塩野さんらしく、その防衛省のトップに配されたのは「ハドリアヌス」でした。その選定理由のくだりです。
最後に、私としては、どうしても受け入れられないという典型的な塩野さんの主張のくだりを書きとめておきます。
そうでしょうか・・・? 私は違うと思います。