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知っておきたい地球科学 : ビッグバンから大地変動まで (鎌田 浩毅)
(注:本稿は、2023年に初投稿したものの再録です。)
いつもの図書館の新着本リストの中で見つけた本です。
著者の鎌田浩毅さんの本は今までに「世界がわかる理系の名著」「一生モノの勉強法」等を読んでいます。
京都大学名誉教授というタイトルのわりにはちょっと規格外的な鎌田さんの雰囲気に惹かれて、この本にもトライしてみました。
私は、高校時代 “文系” だったので授業で習ったのは「化学Ⅰ」と「生物Ⅰ」だけ。「地学」は履修していません。もともと小さいろから「宇宙」には興味があったのですが「地球科学」は完全に門外漢で超素人です。
鎌田さん流の解説を正しく理解しているか大いに気になりつつも、新たな知識やエピソードの中から私の関心を惹いたところをいくつか書き留めておきます。
まずは、“地学” からみた「地球温暖化」の捉え方について。
“長尺の目” からのスコープでみると今日の危機的といわれている状況はまた別の評価になります。
(p122より引用) さらに、地球を数十万年という地質学的な時間軸で見れば、現在は氷期に向かっている。・・・すなわち、現在は寒冷化に向かう途上の短期的な地球温暖化かもしれないのである。
もちろん地球温暖化がこのまま急激に進行すれば、BISが警告するような対策が必要だ。一方、地球の歴史を長期的に見ると、自然界にはさまざまな周期の変動があり、現時点の予測が大きく外れることも考慮しなければならない。国際政治や経済に振り回されることなく、地学の目で捉えるからこそ見えてくるものもある。
確かに、気候変動(温暖化・寒冷化)に影響を与える要因は「二酸化炭素の増減」以外にも自然界には「火山」「太陽」「地球(自転・公転・地軸)」等々いろいろな要素があるんですね。
原因を極小化/限定化してしまって他の要因を捨象してしまうような議論は「科学的」とは言えませんね。確かに気をつけなくてはなりません。
こういった有益な指摘の他にも、さまざまな気づきがありました。
たとえば “月” について。
「月の誕生」のプロセスは既知の学説でしたが、その「月が影響を与えた地球環境や動植物の生態」についての解説はとてもダイナミックで初めて知る面白い内容でした。
また、「地磁気が宇宙線(太陽風)から生物を守っている」という事実は私にとっては新たな知識でした。
磁気圏が地球を覆ったことで、生物が深海から栄養分豊富な浅海へ、さらには地上にも進出できたというのです。
(p48より引用) もし地球上に地磁気がなければ、生物は現在のように高度に進化することはできなかっただろう。生命を育む貴重なバリアが地球深部の動きによって作られたように、地球上の現象ではたくさんの要因が相互に影響を及ぼし合っている。
生物の生存環境を理解するためには、地球内部を把握する視点が重要である。このように現代の生命科学は地球科学とも密接に結びついているのである。
なるほど、学問相互の関わりは、知れば知るほど拡がりと深まりが増していき興味が湧きますね。
さて、本書を読んでの感想です。
“地学” というジャンルで扱われるテーマや現象が、私たちの「日常生活」にとても身近なものとして影響を与えている実態がとてもよく分かりました。これは、おそらく “地学” に限らず、「化学」「物理」「生物」といった高校レベルの “理科系科目” には共通のことなのでしょう。
今の社会を鑑みるに、こういった「基礎的な理科系学問の知見」を「現代社会や生活における課題解決」に活かすという真っ当な姿勢が、あまりにも軽んじられているように感じてなりません。
一言で言えば “「反知性主義」の蔓延” です。“無知な大声” にかき消されてしまう、それは恥ずべきことだと思うのですが、どうにもそれを指摘したり話題にしたりすることですら、まともに受け止められないところにまで “社会の劣化” が進んでいるようにも感じてしまいます。
それゆえに、本書のような啓蒙書の存在意義は大きいのです。
鎌田さんの解説も素人分かりする丁寧なもので、私レベルですら多くの気づきが得られた有益な著作でしたね。