以前読んだエンゲルスの「空想より科学へ」の流れで手にとってみた本です。
本書のあとに執筆された「1984年」で有名なイギリスの作家ジョージ・オーウェルが、スターリン体制を痛烈に批判した風刺作品です。
登場する人間は、ロシア帝国、大英帝国、ナチス・ドイツ等、動物は、豚が主役クラスで、スターリン(ナポレオン)とトロツキー(スノーボール)、レーニン(メージャー爺さん)といった具合、確かにかなりスパイスが効いていますね。
まず、人間(ロシア帝国)が経営する農場に飼われている動物たちに、豚のメージャー爺さんが現状変革を訴えます。
そして農場で動物たちの反乱が起こり、あっけなく人間たちは追い出されてしまいます。
動物たちだけの農場でリーダーシップを取ったのは、ナポレオンとスノーボールという2匹の豚でした。搾った牛乳を前に1匹の豚ナポレオンはこう言いました。
実はこの牛乳は、豚たちの餌だけに混ぜられていたのでした。
そして、農場運営に関し、ことあるごとに対立していた2匹の豚ですが、スノーボールの追放によりナポレオンが実権を握ることになりました。
ナポレオンによる独裁のはじまりです。
この独裁政権下の豚たちによる官僚制の実態を、オーウェルは皮肉を込めてこう描いています。
ナポレオンの独裁が進むにつれて、人間を追い出した反乱直後に決められた「七戒」が改変されていきました。元の言葉にどんどん「但し書き」がついて、意味が反転していったのです。そして、その極めつけがこれです。
巻末に「序文」として準備されていた「出版の自由」という小文が載っていますが、その中に、本書を世に出すにあたってのオーウェルの気概が記されています。
本書は、刊行にあたって、「この時期、この内容は『差し障り』がある」というイギリスの出版社の自主規制の対象とされました。
オーウェルが闘ったのは、スターリンの独裁主義・全体主義だけではありませんでした。相手は、「自由主義」でもあったのです。