日本人の宿題 : 歴史探偵、平和を謳う (半藤 一利)
(注:本稿は、2022年に初投稿したものの再録です。)
いつもの図書館の新着書籍リストで見つけた本です。
半藤一利さんの著作は、今までも何冊も読んでいますし、最近では「墨子よみがえる」や「戦争というもの」を読んだところです。
それらの著作に通底する半藤さんの “平和への想い” や “非戦の誓い” は、私たち一人ひとりがしっかりと受け継ぐべき大切なものだと思います。
本書は、生前のNHKラジオ番組での半藤さんの「語り」を再構成して書籍化したものとのこと、その中から特に強く心に残ったお話をいくつか書き留めておきます。
まずは、戦後の「高度成長期」に対する半藤さんの評価を語ったくだりです。
その後回しの “つけ” は、今なお我が国に重苦しい影を残し、その結果日本人のレベルは大いに低下したと半藤さんは語ります。
然らば、その対策は何か?
その教育をもって、「論理的にものを考えることができる能力」を養うべきだとの主張です。
ただ、半藤さんがそう話したのは2008年のことです。10年以上を経て、どうでしょう、残念ながら半藤さんが危惧していたとおり、「教育」面でも迷走は続き、日本人の劣化はさらに進んだように感じます。
もうひとつ、こちらは半藤さんの代名詞である “歴史探偵” の由来秘話です。
最初に “歴史探偵” を名乗り始めたのは、あの坂口安吾だったというのです。文藝春秋の入社前、半藤さんは坂口安吾宅へ原稿を取りに訪れ、そこで坂口安吾本人から彼流の “歴史の見方” を教授されました。
残された史料のネガを想像して、その裏に隠されている “歴史” を探索していく営み。半藤さんは坂口安吾から歴史を探る楽しさを教えられたのでした。
そして最後は、半藤さんの若者へのメッセージ。
15歳のとき経験した “東京大空襲”。その体験を書き留めつつ、半藤さんはこう訴えています。
こういう体験を自らのこととして伝えられる人に代わって、歴史を記した書物が “人々にとっての戦争の実像” を語り継いでいくのです。とても大切なことだと思います。
本書が伝える “15歳の戦争体験” は、今の若い人たちに贈る半藤さんからの魂のメッセージです。