光圀伝 (冲方 丁)
(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)
冲方丁氏の小説を読むのは、ベストセラーになった「天地明察」に次いで2冊目です。
今回の主人公は「水戸光圀(黄門)」。
水戸黄門といえば東野英治郎さんの姿をいの一番に思い浮かべてしまう世代ですが、本書ではどんな人物として描かれているのでしょうか。
まだ光國が若いころ、宮本武蔵と沢庵に邂逅したシーンの描写です。
このころは、如何ともし難い大きな格の違いが明らかです。
「詩で天下をとる」との志を抱き、そのためには京人を唸らせろと武蔵に諭された光國は、藤原惺窩の子である細野為景と親交を結びました。そして、その力量をまざまざと見せつけられました。
水戸光圀といえば、世直しの「諸国漫遊」。
当然、史実としてはその形跡はなく、紛れもなく後世のフィクションですが、そのあたり、著者は光圀の「大日本史」編纂の史料蒐集の営みとして、こういう形で物語に織り込んでいます。
さて、本書を読んでの感想です。
正直なところ「天地明察」で感じたような新鮮なインパクトはありませんでしたね。「天地明察」のエピソードを重ね合わせる工夫はありましたが、主人公の光國のプロットも平板、ストーリーも全体ボリュームの割には単調でかなり残念に思いました。
こちらは、さすがに映画化はされないでしょう。