(注:本稿は、2020年に初投稿したものの再録です。)
変わったタイトルの本ですね。
今回の東京オリンピック開催にあたっての新国立競技場の設計者としても有名な隈研吾さんの自伝的エッセイです。
建築家に至るまではオーソドックスなキャリアを歩み、主な経歴や実績だけを辿ると順風満帆のようにみえる著者の半生ですが、実際は、それこそ「走り回った」山あり谷ありの様相だったようです。
そして、その過程で著者が経験し感じたことは、私にとっても刺激的な気づきになりました。
たとえば、中国での仕事を通して知った「大人のロジック」について。
超中央集権国家の中国ですが、それゆえに「政策の柱」になる思想は徹底しています。
もうひとつ、「歌舞伎座改築プロジェクト」で気づいた隈さんの覚悟について。
このあたりの高揚感は、“さもあらん”と感じ入りますね。
さらに、面白かったのが、モダニズム建築の巨匠と言われるル・コルビュジエの著者の評価(意味付け)を語ったくだりです。
痛快でとても納得できる指摘ですね。
さて、最後の覚えは、本書を通じて現れ出た著者隈研吾さんの生き方のポリシーです。
“「信頼し合える仲間」と建築という協業プロセスを「楽しむ」こと”、いいですね、素晴らしいですね。