プシュカルという聖地〜聖〜【インド#16】
「プシュカルは聖地」と散々書いてきたが、全く聖地感に触れないまま「俗」なことと「欲」なことにばかり触れてきたので、そろそろ聖地のことを書こうと思う。
プシュカルはヒンドゥー教の巡礼地として有名なのだが、いくつかある他の巡礼地とは大きく異なる点がある。
インドで、ブラフマー神を祀っている唯一の聖地(唯一というものの他にもあるらしいとも聞く。それがどこなのかは不明なので、かなりレアなのは確か)なのである。
ヒンドゥー教では、世界の創造神であるブラフマー神、維持神であるヴィシュヌ神、破壊神であるシヴァ神が3大神として崇められている。
シヴァ神は絶大な人気だし、ヴィシュヌ神もメジャーだが、ブラフマー神はあまり人気がない印象を受ける。
世界にしろ何にしろ、創るだけではだめで、それを維持していくことの方が大変だし、創った後が肝心というか、時には破壊して再生することの方が重要ということなのかな、と何となく浅い頭で考えたり。
しかし、この世界を創った神なので、凄いのは確か。
そんなブラフマー神だが、プシュカルにはプシュカル湖という湖があって、そのガートに沐浴場がある。
プシュカル湖がなぜそんなに聖地なのかというといくつか説はあるが、ブラフマー神が放った白鳥が蓮の花を落としたらそこが湖になったという説がよく知られている。
プシュカルとは青い蓮の花という意味らしい。そんなプシュカル湖の回りをぐるっと散歩した。
聖地なので靴を脱がないといけないため、鳥のフンと牛のフンに気をつけながら裸足で歩いた。
プシュカルは湖ももちろん美しいのだが、プシュカル湖を囲むような山々がまた聖地感を際立たせる気がする。
なかでも、ひときわポコっとした山が目立つ。
ブラフマーの妻サヴィトリを祀ったサヴィトリ寺院があのポコっとした山の頂上にあるらしい。
ウダイプルJamesのおすすめサンセットスポットでもあったので行ってみることにした。
頂上からプシュカル湖は、えらく遠くに見えたが、歩いて帰った。
着いた頃には真っ暗だった。
そして膝がガクガクと大爆笑していた。
インドで唯一の(くらいにレアな)ブラフマー寺院にも行ったが、全て撮影厳禁で裸足で手ぶらで参拝しないといけない割に、内容的には非常に地味なお寺であった。
プシュカルはヒンドゥー教の大聖地だが、ヒンドゥー教寺院もあれば、シィク教寺院もあるし、教会もモスクもある。インドの聖地はミックス感があって面白い。
プシュカルに来てびっくりしたのは、毎日毎日夜中1時まで爆音が鳴り響いていること。
頭が割れそうな爆音をスピーカーで鳴らして練り歩いている。
結婚式シーズンだからね、とナメタちゃんは言っていたが、それにしても毎日毎日。
本当に頭が割れそうだし寝不足が続く。
昼過ぎにファラフェル屋でチャイを飲んでいると、ひときわ爆音のパレードがあって、ザワザワしている日があった。
ファラフェル屋のミコいわく、「今日はシヴァラトリの日だから!」とのこと。
「シヴァラトリ」とは偉大なシヴァの夜という意味で、シヴァ神の威光を讃えて毎年行われるヒンドゥー教のお祭りの日らしい。
このお祭りの日の夜は、シヴァ神を通して暗黒と無知を克服する日らしく、夜通し寝ないで行われる祭りらしい。
いや、寝た方がいいよ。と思う。
プシュカルでのシヴァラトリは、具体的には、爆音での神様パレードだった。
そして、花を積む荷車も一緒にパレードしている。
花を神様たちに投げて祝っているような様子だったが、ファラフェル屋のミコが花をガッと掴んで、知り合いの旅人達に花を投げつけてふざけはじめた。
それを受けてやり返し、花の投げ合いになった。
祭りの時の、この本題からズレる楽しみ方は好きである。
祭りでアドレナリンが出ているので、GRの惨劇はひとまず置いといて私も花を投げて、はしゃぐことにした。
ああ、楽しい。
みんな笑っている。
むしろ笑い転げている。
花の嵐が通り過ぎると、またマーチングバンドが登場。
ターバンがラジャスタン感があっていい。
そしてシヴァラトリのお祭り、昼の部のクライマックス!
いよいよ、満を持して、シヴァ神の登場である。
道に落ちている、というか敷き詰められている花を拾って投げる。
シヴァ神だけは誰がどう見てもシヴァで良かった。
シヴァ神の登場に、オーディエンスも一番盛り上がる。
私ですら、「うわー!とうとうシヴァ降臨!」と心の中で興奮していた。
神様それぞれのコスチュームとアイテムが個性的だが、シヴァは群を抜いて圧倒的である。
(シヴァと言えばおてだまさん。分かりますよねこの気持ち)
シヴァの中の人も酔いしれている気がする。シヴァ神役をやるだけで、己の中からカリスマ性が出てくるのか、カリスマ性のある奴が選ばれるのか。おそらく両方だと思う。
シヴァ神降臨の盛り上がりは、阪神優勝の時の御堂筋パレードで、星野監督が現れた時のようだ。(という例えが、20年前のことだと知って今震えた。)
シヴァタイムが終わると、馬に乗った高貴な感じの若者の行進が続いた。
このパレードは、プシュカル湖の周りの通りを何時間かかけて練り歩いて続いた。
通りの道がお花畑となっていた。
夕方に裏通りを歩いていたら、掃除をしている人たちに遭遇。
通りのお店も、商売をいつも通りに再開させていた。
ラジャスタンの旅は、砂漠祭りから始まり、シヴァラトリというお祭りまで体験できて、とても楽しかった。
ブラフマー神を祀るプシュカルでのシヴァ神をたたえる祭り。
インド、ヒンドゥー教において、いかに神様がアイドルのような、カリスマ性を持った身近な存在なのかを感じられるお祭りであった。
旅先でその土地の祭りを体験して、「ハレ」と「ケ」を少しだけ垣間見られることは、とても有意義な気がする。だから旅先の祭りに参加できる時はとてもありがたい気持ちになるし、いつも以上にはしゃいでしまうし、楽しい時間となる。
余談。
GRのレンズにべっちょりついた花の花粉や花びらのかけらなどを、オペすることにした。
今思えば昼間にすればいいのに、なぜか夜にヘッドライトを装着して行った。
祭りは何が起こるか分からないから、次からはiPhoneの撮影だけにしようと強く思った。
世界多分一周旅のインド編は、まだまだ続きます。#世界多分一周旅インド