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マーケティングと書いて、やれることは全部やると読む
「マーケティングって、楽しいですよね」。
とある中小企業支援現場で、とある担当者が、ポロッとつぶやいた。
実際、相談窓口での相談内容は多種多様で、緊急的なものも多い。基本は、困りに困った人が、藁にもすがる思いでやってくるのが、相談窓口なのだ。
そういう現場の人からすれば、マーケティングという言葉は、仮想のお客様をイメージして、少し先を見据えていて。甘美な響きすらあるのだろう。
そもそもマーケティングという言葉自体、分かったような分からないような言葉だ。だいたい、日本語で人に説明できないような単語は、そもそも怪しい言葉なのだ(偏見だ笑)。
ただ、成功している企業のマーケティングは、案外泥臭い。やれることは全部やる、そしてやり切る。それこそが、マーケティングの本質なのだ。
今日は、そういうお話。
ゴンチャ、タピオカ旋風後も成長 2024/8/16 日経MJ
2018年ごろ、女子高生を中心に巻き起こったタピオカドリンクブーム。それをけん引したカフェの一つが、台湾発のティーカフェチェーン「ゴンチャ(貢茶)」だ。それから数年、ブームは下火となりドリンクを扱う店舗の多くが消えた中、ゴンチャはなおも成長を続けている。ゴンチャが生き残った理由は何か。
大変失礼ながら、タピオカミルクティーのお店に入ったことがない。ゴンチャという名前も、この前、コンビニでお茶を買うとき、同僚の女性から教えてもらった。「えっ、知らないんですか!?」と驚愕の表情で。
1.ターゲットを明確にする(20代以下の女性を愚直に見つめる)
それもそのはずである。40代半ばのおっさんが知る由もないのだ。私が悪いんじゃないのよ。
マーケティング本部スペシャリスト、ミシェル・ライ氏は「認知率は全体だと約6割だが、10~29歳の女性に限ると約9割に達している」と話す。
年代と性別で見ると約7割の来店者が10~29歳の女性だ。ライ氏によると「一般的にはライフステージの変化で、30代になるとカフェへの支出金額が下がる」。だからこそ、今後も20代以下の女性に注力する方針は変えるつもりはない。
おっさんなど歯牙にもかけない。20代以下の女性を、ひたすら愚直に見つめる。その理由も明確である(数字に基づいている)。ぐぅの音も出ない。
2.ブルーオーシャンでカスタマージャーニーを描く(おしゃべり歓迎、物語を大切に)
着目したのが「2人以上での来店」だ。ゴンチャは2人以上での来店割合が約4割に上る。「一般的なカフェは仕事をするのに適した静かな環境を用意している場合が多いが、ゴンチャは〝おしゃべり歓迎〟のティーカフェだと打ち出したい」とライ氏。
一般的なカフェ(=レッドオーシャン)とは戦わない。
業界リーダーのスタバでさえ、サードプレイス(=自分にとっての第3の居場所)と言って、静かな雰囲気を大切にしているわけだけれど、舞台裏では、競合ひしめく、血で血を洗う骨肉の争いが繰り広げられている。
うちはおしゃべり大歓迎!(=ブルーオーシャン)。
なぜなら、数字もそう言ってる(みんな2人以上で来店してる)、それがゴンチャというわけだ。
これまでは〝物〟で訴求することが多かったが、24年からは誰かと一緒にティーを楽しんでもらうための〝物語〟で訴求していくという。
「春という新しい出会いの季節に、友達と長く話して仲良くなってほしいという思いで企画した」と語る。結果、24年3月の売り上げは前年同月比約1.7倍、同社史上最高の売り上げを記録したという。
この考えに沿って、とあるメニューを物語に乗せて販売した(=カスタマージャーニーを描いた)結果である。四の五の言っても、結局は結果が出るかどうかなわけだが、結果も出た。
3.リピーター戦略(カスタマイズと学割)
ゴンチャはリピーターが非常に多く、ユーザーの約3割で売り上げの約9割を占めるという。ライ氏は「月に1回以上来店するお客様に、今後もアピールしていきたい」と話す。
一般的に、新規にお客様を獲得するより、リピーターになってもらう方がコストが低いと言われている。「ユーザーの約3割で売り上げの約9割を占める」のも、世の常だ(=パレートの法則)。そのリピーター対策は...
・リピーターに楽しんでもらうために、レギュラーメニューにカスタマイズの余地を持たせるのがゴンチャのグローバルルールだ。
・ゴンチャは学割を実施している。常に新しく学生になった層にアプローチして、学生人気を維持していきたい。
多様性教育を受けてきた今の若者は、飲み物をどうしたいのか。どうするとまた来てくれるのか。この辺は、競合を分析し、お客様のニーズをよく調査していると言いたい。
4.常にお客様志向(お待たせするのを解消したい)
ゴンチャ全店舗の24年1~3月期の来店人数は前年同期比約1.4倍(中略)、この状況についてライ氏は「来店人数が増加すると好調にも見えるが、店舗数が変わらず来店人数が増えることは、お客様をお待たせしていると捉えることもできる」と分析。
ドミナント出店(近くなのに2店舗も3店舗も出店すること)って、他社を押しのけるとか、お客様を囲い込むとか、そういう文脈でばかり考えていたけれど、「お客様をお待たせしている」から新しい店を出さなきゃって、素敵な発想だと想った。常にお客様志向であることが成長志向にも繋がることが、よく分かる。
5.両利きの経営も忘れずに(コンビニでも売ってみる)
既存事業一辺倒では、イザというときに立ち上がれない。とはいえ、新規事業ばかりやっていると、屋台骨が傾く。両方のバランスが大切、それが「両利きの経営」。
ゴンチャはX(旧ツイッター)のフォロワーが50万人以上、LINEの『友だち』登録者が約150万人。この人たちには状況を提供しやすい一方、それだけに頼っていたら、知る人ぞ知るブランドになってしまうと危機感を持っている
好調な業績の一方で、既存事業、ティーカフェの限界も感じていることがよく分かる。新規事業で打ち出したのが...
キリンビバレッジと提携し、7月には人気のティー2種「黒糖烏龍(ウーロン)ミルクティー」と「阿里山烏龍ピーチティーエード」をペットボトルとして商品化し、全国のセブンイレブンで販売を開始した。ライ氏は「ゴンチャに行きたくても行けないお客様との接点をつくりたい」と説明する。
あ、これか!これで、40代のおっさん(私)も、ゴンチャを知ることになったわけか(冒頭の話)。「ゴンチャに行きたくても行けないお客様との接点」以上の認知度向上をもたらす、日本全国、津々浦々にあるコンビニの力よ...
6.従業員満足度を確かめる(それが顧客満足度を高める)
ユーザーだけでなくクルーに対しても月1回のNPS(ネット・プロモーター・スコア)調査を実施している。ライ氏は「クルーに対するNPS調査は『今のゴンチャの商品をお客様にどれだけお薦めしたいか?』と聞くもの。毎月数値化し全社で共有しており、売り上げとの相関が高い」と明かす。
注目したいのは、「売り上げとの相関が高い」という部分。
お店の人が心からオススメしてくれるなら、私たちも安心して購入できる。
マーケティングと書いて、やれることは全部やると読む
どうだろう、ゴンチャ。
マーケティングというよくわからないカタカナでひとくくりにしてしまっているが、何のことはない、やれることを全部やっているだけ、やり切っているだけ、という真実に気付かされる。
ただこの、やれることを全部やっている、しかもやり切っている企業が、世の中にいったいどれくらいあるだろう。
やれることを全部やるだけ、やり切るだけで、うちの会社もまだまだ伸びる。そう想って、スマホを閉じました。おしまい。
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