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サイトウ・キネン・オーケストラの音色

今年も、長野県松本市でセイジ・オザワ 松本フェスティバル(旧称:サイトウ・キネン・フェスティバル松本)が開催されました。1992年にスタートし、今年31年目を迎えたこの国際音楽祭は、いまではすっかり松本の夏の風物詩として定着しています。

サイトウ・キネン・オーケストラは、国内外で活躍する音楽家でフェスティバルの間だけ編成される、期間限定のオーケストラ。

ひとことで音楽家と言っても、この顔ぶれがなかなかすごい!
ソロ活動をされている方、オーケストラで首席奏者をされている方、音楽大学で教鞭をとられている方など。

そんな一流の方々が集まった、オールスターのようなオーケストラ。上手くないはずがないんです。

わたしも過去3回、オーケストラプログラムを聴きに松本へ足を運びましたが、他のどのオーケストラとも比べられないエネルギーと音の渦で、その後数日余韻に浸るほど感動しました。


これは2016年の冊子 とてもスタイリッシュ

さて、そのフェスティバル、通常は松本へ行かなければ体験できませんが、なんと今年はその他の地域でも、会場から生中継でスクリーンコンサートが開催されることになったのです。それも地元の文化会館で、入場無料。これは行かなきゃ損!損!

ということで、8月25日、行ってまいりました。

エントランス天井


サイトウ・キネンの旗


ホール入り口

この青い旗がお気に入りです。開催地の松本では期間中、街中を含めいろんな場所でこの青の旗が飾られ、まるでヨーロッパのどこかの都市のような雰囲気になり、それを見るだけでうきうき心が躍ります。

今回は全席自由席なので、はやめに会場へ入って席を確保。会場は小ホールで、ステージに超大型スクリーンが設置され、光通信ケーブルでキッセイ文化ホールから演奏を中継すると案内がありました。人の入りはざっと見た感じ200人くらいでしょうか。年配層が多い気がします。

気になるプログラムはこちら↓↓↓

サイトウ・キネンでよく演奏される、ベートーヴェンもマーラーもなく、オール近現代プログラム。この中で聴いたことがあるのはラヴェルの《ダフニスとクロエ》だけ。新鮮な気持ちで聴くことができるから、それもまたよし!

開演を待つあいだ、過去のオーケストラ演奏を思い出していました。なんといっても2007年に初めて行った時の衝撃と感動が忘れられません。そのときの曲目は、ベルリオーズ作曲:幻想交響曲。小澤征爾さんが得意とする曲です。

マエストロを尊敬する団員の結束力はすさまじいものでした。よくありがちな手抜き、妥協は一切なし!特に見せ場がある金管チームは、演奏前に肘タッチをしていて、いくぜ~という意気込みとチームワークの良さが一層伝わってきました。

こんなすごい演奏が松本で聴けるなら、ベルリンもウィーンも行かなくていいや、と思える最幸のひととき。このオーケストラしか出せない音。

※ ※ ※

そうこうしているうちに開演の時間になったので、スクリーンに注目。この日の指揮者はステファン・ドゥネーヴ氏。指揮台へ登ってから演奏が始まる、わずかな時間の緊張感がたまりません。

指揮者の腕が動き、オーケストラの音が会場に満ちると、あっという間にサイトウ・キネンの世界へ。これこれ!この音!弦楽器のうねるような、唸るような響き。サイトウ・キネンの音!

最初のプログラム、<ウェストサイドストーリー>はテンポもよく、指揮者も団員もノリノリで楽しそうに演奏していました。途中、指パッチンしたり、マンボ!と掛け声したり。

大型スクリーンのおかげで、会場ではおそらく見えないであろう団員の表情もよく見え、私が唯一知っている大宮臨太郎さん(N響)や、古川展生さん(都響)さんのお顔もはっきりと。いいですね~。

2曲目の<チューバ協奏曲>は、数々の映画音楽で有名なジョン・ウィリアムズ作曲。もしかしてスター・ウォーズ的要素があるかも?と耳を澄ませていましたが、残念ながらチラリともなく、もうすこし複雑な曲でした。でも、発見がありました!チューバって、あんなに優しい音が出るんですね。

休憩を挟んで後半は、フランス人作曲家の2曲で、どちらも合唱とソプラノ歌手つき。この日のソプラノ独唱、イザベル・レナードさんの声の張りとボリュームの素晴らしさにうっとり。

音楽家にもいろいろな種類がありますが、わたしが個人的に一番すごいなと思うのは、声楽家です。自分の身体ひとつで、広いホールでオーケストラ相手にあんなに響かせることができるなんて。

お顔を観察していると、口の開け方をほんの少し変えただけで、声色ががらりと変わる。いったいどういう口腔の形ならあんなに響くのだろうかと不思議でなりません。

至福のサイトウ・キネンの時間はあっという間でした。もしまた来年以降同じような企画があれば、ぜひ足を運びたい。それにしても、設営や通信や手間がかかっているだろうに、こんな素晴らしい演奏を無料で聴けるなんて。長野県のありがたさよ。

帰り道、余韻にひたりながらハンドルを握る手のひらは、拍手のしすぎでひりひりしていました。それもまた、よし。


本日のBGM;
ベルリオーズ作曲 幻想交響曲
指揮:小澤征爾
演奏:サイトウ・キネン・オーケストラ
2014年キッセイ文化ホールライヴ録音

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