もしも願い事が無くなるなら

小さい時は
早く大きくなりたかった
ガラスケースに立つロングドレスの人形がホントの母親なんじゃないか、
って思ったこともある

ママに怒られると

今思えばママが20代前半で私は生まれた
私のその年頃は自分に必死だった
時代も街も違うけど

だからって
ママが私にしたこと言ったことは
正当化して欲しくない

あれは
愛情で包んだ自己愛でしか無かったから
常に、ではなかったけれど



自分が楽をするために
自分の手間が減るために
自分の得になるように
そうしたから。私のためを思うかのような口振りで


だから気が付かなかった
こんなに経つまで
だから私は自分にも悔しい
愛情と思った中身は空『くう』だったから




今になってママも頑張って来たのかも、
と考えてみた
私の為に



ママは色々考え付かなくて考え及ばなくて
分からなくてきっと、そう言った、になったんだろう
全部ぜんぶ受け止めて来たのに




いつからか
両親もただの男と女なんだ、と思った
唯一無二の特別な存在から普通のオトコとオンナに格下げになった
それはきっと私が成長出来たから




ママ、あちこち私ママを連れて行ったね
北海道は函館と札幌へ
長崎も鹿児島も立山黒部アルペンルートも横浜も京都も青森も御在所もハワイも




花も見に行ったね
杜若も桜も梅もチューリップもコスモスも藤も紅葉も菊も紫陽花もラベンダーも




親戚中が
ママちゃんはいいねぇ麦茶があちこち連れていってという度、誇らしい顔して笑ってたね

結構、してあげたいは叶ったよ？
いつかハワイに
いつかアルペンルートに
いつか小樽に
いつか石原まき子さんに。。
と思ってたら、どれも叶った

だけど
その思い出も消えてるのかな…
そして
私の事もいつか誰だか分からなくなるのかな…

もしも願うことが無くなる日が来たら
それは幸せなんだろうか

ママを連れて行きたい、は全て叶ったけど
まだ私は願いたいことがある

記憶や自分の周りが分からなくなったら、
私は困るけど
ママはきっと、自分が困ることじゃないと思うんだろうね

願うことが無くなる日が来たら、
叶える方法を悩まなくていいだけだろうか

多分きっと私は怒るし、辛いけど
出来るだけママのままでいて欲しいと思うのは願い事になるんだろうか

願うことが無くなる日が来たら
それは…

どんな景色なんだろう
私は
ママは
笑っているだろうか

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