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愛のこと

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自分と誰かを大切に想うこと
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#小説

淡い思い出は恋にならず

淡い思い出は恋にならず

いつだったか

飲み物を飲んだ後にする
下唇を舐める仕草が
すきと言われた

無意識に舐めてしまうたび
その人のことを思い出す

これを思い出と呼ぶのかな

私は
それを恋とは呼ばなかったな

君はホットケーキを焼かない

君はホットケーキを焼かない

私はまたホットケーキを焦がした。

私は料理があまり得意ではない。下手くそというよりかは、作ることを面倒くさがってほとんどしないために、いつまで経っても上達しないのである。こんなに偉そうに言い訳をしてみたものの、ホットケーキなんて、小学生になる前の子どもがはじめて自分で作るようなお菓子、それさえもまともに作ることが出来ないのだから、きっと本当に向いていないのだろうと思う。

ホットケーキの失敗はこ

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わたしのーと

わたしのーと

まいにち すこしずつ 考えていること                     あの人に話したい くらいに 大きくなってきたら   ひっそりと 言葉だけをとっておく

すべてを見せてしまうのは 勿体ないから             なんて 言い訳をしながら                                      伝える勇気のない きもちを そっと                  

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乞文

乞文

雨の日は会えない 晴れた日は君を想う

今夜はこんな邦題の映画を観ようと、久しぶりにキャンドルに灯をつけました。映画がはじまって、5分で妻がなくなりました。それ以上の感想はここで書くのはやめにしておきます。もしもあなたがこの映画を観たら、続きはその時にでも話しましょう。                            

映画を観ながら、いろいろなことをぼんやりと考えました。言葉にできるほど

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637円と45分

637円と45分

今日の君との時間

玄関が開く。おかえりなさいのハグをして、お互いの1日を労わり合う。近くのコンビニまで散歩する。いつものカフェオレと、君のとおんなじパンを真似っこして カゴに入れると、君が笑う。レジの小太りのおじさんが打ち出したのは、637円。300円ずつお金を出して、今日は私が50円を払う。

お店を出たら、早速お揃いのパンを開けて、なんとなくかんぱいしてみる。おいしいね。と言ったあとは、ふた

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会いたいと言えない夜に

会いたいと言えない夜に

自分の感情が黒くなっていくのを感じる。会いたいと言ったって会えないことくらい頭では分かっている、それが良くない。寂しい、会いたい、会えなくて悲しい。そんなブルーな感情を、どうしようもないからと、そのままにしてしまうから。そのうち、ブルーの涙を流していた心は鉄のように錆びついて、茶色く濁った言葉が漏れ出してくるようになる。会えなくて寂しいのにあなたはとても楽しそう。いっそのこと連絡を取らずにあなたを

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さよなら、大好きだった人

さよなら、大好きだった人

男の子という存在が、苦手だった。女の子が得意かといえば、そうでもなかった。人と関わることが上手とは言えなかった私は、その欠点を補おうとしてか、テストで点数を取ることに夢中だった。理屈で片付けられない感情が方向性を見失い、思わぬところで誰かを傷つける。青春という綺麗事で片付けられがちな学生時代の、そんな自己中心的なところが嫌いだった。自分が、どこかで同じようなことをしてしまうのが怖かった。何もしなけ

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運動靴と赤い金魚

運動靴と赤い金魚

紹介してくれる映画の趣味で、その人の感性がなんとなくわかるような気がする。価値観ともまた違う、言語化し難い感覚の問題で、五感で言えばにおいに近い感覚だ。

頭数合わせを頼まれた飲み会で話したその人は、なんとなく、おんなじような目的でここにいるような気がした。その場の空気を読むのが上手で、いいところにいい言葉を投げ入れるけれど、あまり画面には映らない、外野手みたいな人だった。ガツガツとプライベートに

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もやもや

もやもや

 今日も、彼は夕食を食べるとすぐに眠ってしまった。余ったお米を取り分けて、洗い物を済ませた。彼はそれらを「少し寝てからやる」と言い残して横になったけれど、すやすやと気持ちよさそうに寝息をたてており、一向に起きる気配はない。これは朝までぐっすりコースだな、と諦めて読みかけの本を開いてみるけれど、なかなか頭に入ってこない。一人の夜を素敵に過ごしてやろうと意気込んで、試行錯誤してみるがなんだか心が満たさ

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