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マグロ
ふくやま様の素敵なイラストを使わせて頂きます。ありがとうございます。
✅この記事は3分で読めます。無料です。
みなさんこんにちは。にしやんです。
今日は『マグロ』をテーマに書きたいと思います。
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日高 敏隆著『動物の言い分 人間の言い分 (角川oneテーマ21)』で面白い記事を見たので共有したい。
ある動物の体のごく一部を写真で見せて、「さて、この動物は何でしょうか?」とあてさせるゲームがある。
カマキリの顔とかはまだわかりやすいが、ライオンのしっぽの先などを出されると、なかなかあてられない。
昔からよくあったゲームだが、今もテレビなどによく登場するところをみると、いつの時代にも共通したおもしろみがあるようだ。
そしてこのゲームは、人間がある動物を、どのように抽象して認識しているかを示してくれる点で、たいへん興味深いものがある。
この反対は一筆書きだ。
細部にはふれず、全体の印象をさっと一筆で描く。
それでもわれわれは、たとえば「あ、ネコだ!」と思うのだから、人間はある動物をそんなふうに認識しているらしいことがわかる。
そんなとき、たとえば足のうらのディテールなどを描きこまれたら、かえってネコだかトラだかわからなくなってしまう。
とにかくわれわれは、このように全体のイメージで動物をとらえているために、ふだんはあまり注意したことのない部分のディテールを見せられると、それがなんだか少なくとも瞬間的には理解できなくなってしまうのだ。
ぼくの古くからの友人というか先輩で、絵のひじょうにうまい人がいる。
その彼が昔、ある高校の生物の先生をしていたころ、生徒から突然、「先生、サンマにウロコはありますか?」と質問され、立ち往生したことがあると語ってくれた。
イワシにはある、タイにもある、というのはわかるのだが、かんじんのサンマはどうだったか、まったく思いだせなかったというのである。
動物の体の各部分、部分は、それなりの機能をもっており、それに応じた場所にあって、その機能に適した形状をしている。
たとえば魚の目だ。
マグロのように速く泳ぐ魚は、目は頭のいちばん幅の広い部分にある。
なぜそうなのか。ぼくはあまり考えたことがなかった。
それを教えられたのは、なんと航空工学の人からだった。
それは戦後、国産の旅客機第 1号であった YS─11を設計した、当時、日本大学におられた木村秀政先生である。
もう三十年ほど前、 NHKラジオでの対談の中で、話は飛んでいる飛行機がまわりの空気の気圧を計りたいときどうするかということに及んだ。
機首から気圧計を突きだすと、飛行機は風を切って飛んでいるのだから、そのものすごい風圧を計ってしまうので、じっさいの気圧を知ることはできない。
逆にたとえば翼の後端から後ろ向きに気圧計を出せば、飛行機はプロペラないしジェット・エンジンから後ろ向きに噴出される気流の反動で前へ進んでいるのだから、気圧計はその陰圧を計ってしまう。
「じっさいには、飛行機の頭部のいちばん幅の広い部分から計器を出して計ります。こうすれば、陽圧でも陰圧でもなく、外のじっさいの気圧を計ることができます」。
こういいながら木村先生は紙に絵を描いてくださった。
それはちょうど魚の胴体のような機体の、
頭部のまん中へんのあたりだった。
先生はそこに丸い印をつけた。
それはまさに、魚の目と同じように見えた。
「魚の目みたいですね」とぼくが思わずいうと、「そうなんです。魚も同じことなんです」と先生はおっしゃった。
魚の目がもっと口先近くにあると、速く泳ぐ魚だったら目は水圧で体の中に押し込まれてしまう。
もっと後ろにあったら、泳ぐのに伴う陰圧で目はたえず吸い出されてしまう。筋肉の力でそれをたえず補正するには大変なエネルギーがいる。
だから魚の目はあの場所にあるのだ。
あまり速く泳ぎまわらない底魚の場合には、こんな制約はない。だからアンコウとかハゼとかヒラメなどでは、目はとんでもないところにある。
にしやん