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【短編小説】週3日投稿

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SF・ミステリー・コメディ・ホラー・恋愛・ファンタジー様々なジャンルの短編小説を週に3日(火〜木)執筆投稿しています。 全て5分以内で読めるので、気になるものあればご気軽に読んで…
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2024年10月の記事一覧

【短編】『爆破予告』

【短編】『爆破予告』

爆破予告

 爆破予告があった。期末試験を明日に控えた中でその知らせは端末を通じて学生全員に一斉に届いた。私はてっきり試験を受けたくない者によるタチの悪い脅迫かと思っていたが、そうではなかった。当日大学は閉鎖され、爆弾処理班も動員されたにも関わらず、爆破は起こった。初めにその事実を知ったのは、学生寮に住む学生たちだった。図書館から煙が立ち昇るのを寮の屋上から確認したのだ。すぐさま消防車のサイレンの

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【短編】『海の底』

【短編】『海の底』

海の底

 目の前には闇が壁となって立ちはだかる。どこからか聞こえてくる波打つ海の音が、鼓膜に心地良さを与える。柔らかいひだ状の膜が骨も爪も歯もない細い体を包み込む。膜は激しく揺れ動き、洗濯機のように縦に横に転がる。外で何が起こっているのか全く見当がつかない。わかるのはこの暗闇がいつまでも自分を自由から遠ざけるということだけだ。

 ついこの前までいた戦場でのことを思い出した。

 空中にはいくつ

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【短編】『美しき欲情』

【短編】『美しき欲情』

美しき欲情

※この作品内には、一部性的な表現や暴力的な描写が含まれます。

 スーパーのレジ打ちの音で、私は興奮する。その感情の高まりは、特に決まった目的を持っているわけでもなく、シンプルに興奮するのだ。ストレスが解消されるわけでもなく、何かの欲求が増すわけでもない。それは名前のない些細な感情だ。

 ピッという音が響く一瞬の間にあらゆる出来事が起こっている。商品のバーコードが読み取られ、その情

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【短編】『不便な時代』

【短編】『不便な時代』

不便な時代

 巷で人気を博しているスマートフォンがあるという。人気とは言っても姿形は至って普通のスマートフォンと同じだ。側面はペンのように細く、表面はタロットカードのように縦に長い。特別な機能があるのかと思いきや平凡だ。むしろスマートフォンにしてはスマートな方ではない。僕が実際に購入し、使ってみてそう感じたのだ。インターフェースの反応も遅く、つい長く使っていると熱くて触れなくなってしまう。そんな

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