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真夜中の恋はみな悲しい

真夜中の恋はみな悲しい

普通の人の唯一無二の恋。
ルッキズムや社会的なステータスに囚われない登場人物たちの恋愛を描き、人が恋物語に抱いているある種の綺麗な恋路という幻想にアンチテーゼをぶつけることで、本当の意味での恋を突きつける。

聖は冬子の反対側にいる対称的な(=世俗的な恋遊びをする)存在として配置されている。
タイトルは、フィッツジェラルドの『すべて悲しき若者たち』へのリファレンスか。他にモチーフがあるのかはわから

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Dear 成瀬あかり

Dear 成瀬あかり

拝啓 成瀬あかり様

拝啓 成瀬あかり様

西武大津店がなくなってしまってからのその後の滋賀はいかがでしょうか。
西武に捧げる夏を過ごしたあなたの住む街にも冬には雪が舞うのでしょうか。
それともあなたはすでに古都で黒髪の乙女のごとく爽やかに、鴨川の冷涼さにその健脚を浸しながら学究を謳歌しているのでしょうか。
はたまた何かのさだめで、東の赤い門の元に煌めいていますか。
それともその真っ直ぐな眼差しで

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ゴールデン街奇譚

ゴールデン街奇譚

ゴールデン街飲み歩き

最近、ひょんなことからゴールデン街で飲むようになった。

日々飲み歩くというような程のことではない。ただ、仕事や何かで近くに寄った際に、一軒二軒と店を訪ねて、数杯の酒を飲んで帰るというだけだ。

そうした飲み方がうまくいかない時には、気づけば朝ということもないではないのだが。

ほとんどは酒を求めているというよりは、
店に立っているスタッフの変わらぬ顔を見るためと、
入れ替

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傲慢と善良

傲慢と善良

人が人を想うという個人的なことと、
結婚という社会的な制度の干渉。
ここにも個人と社会の対立がある。

他人を鏡として映して
その中に自分を見ること。
その自分を高く評価する自己愛。
自分に見合う人を"選ぶ"という態度にみえる傲慢さ。

他者から与えられる存在で、
その社会/家族/環境が与える外的な軸を
内的な基準として受け容れること。
その他者にとっての理想の枠の中で生きるという善良さ。

二つ

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今日も一日

今日も一日

脱魔術化された世界

20歳までは、自分の内面に湧き上がる様々な情念がこの世界のすべてだった。
周りの人からどう見えているのかにばかり気を取られ、自分がどんな人間で、これからどうなっていくべきなのかが、なによりも最優先で大事なことだった。

他人と違う特別な誰かでありたいと願いながら、
他人と違うことに戸惑い、狼狽える。

この世の誰でもいいから、誰かと完全にわかり合えると思っていたし、
わかり合

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赤から青に変わる頃に

初ノート記事です。

一月末で大学最後の期末試験と引っ越しが終わり、少し時間が空いたので久しぶりに色々と本でも買って読んでみようという気になって下北沢の三省堂へ。
いつもの悪い癖で本屋で雑多に並ぶ本を眺めているとあれもこれも欲しくなってしまう。小一時間悩んだのちに、結局厳選した4冊を購入。
そのうちの一冊がカツセマサヒコの『明け方の若者たち』だった。

Twitterの妄想ツイートで有名な著者のこ

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