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言葉でないものが教えてくれる

山に行くときは登山アプリという便利なものもあるけど、たいてい紙の地図でコースを確認します。推奨ルートや自分たちの力にあったもの、時間難易度を参考にします。

その通常の登山路から外れた道を行く、バリエーションルートというものがあり、それをバリ山行さんこうというそうです。

バリ山行  松永K三蔵

会社の付き合いを極力避けてきた波多は同僚に誘われるまま六甲山登山に参加。やがて社内登山グループは正式な登山部となり、波多も親睦を図る目的の気楽な活動をするようになっていたが、職場で変人扱いされ孤立している職人気質のベテラン社員妻鹿めががあえて登山路を外れる難易度の高い登山「バリ山行」をしていることを知る……。

講談社

仕事、会社の傾き不穏な空気感と登山の爽快感、能天気さ、危険さがいいバランスとなっていて、山を上るような感じで読めました。

バリエーションルートを好む妻鹿は、仕事そのものもバリで(バリバリでないです)仕事の通常ルートでなく、我が道を行く姿勢に波多がイライラします。

山は遊びですよ。遊びで死んだら意味ないじゃないですか!本物の危機は山じゃないですよ。街ですよ!生活ですよ!妻鹿さんはそれから逃げているだけじゃないですか!

わたしはバリ山行はしない、できないしルート通りが好きだけど、バリのゾーンの入っちゃった妻鹿さんよりだな。トライアスロンをやっているからかな。

仕事以外は、遊び、逃げというのは違う。仕事以外に真剣になれる人がいい。

人と人がわかりあうのは難しい。仕事で関わる人ならなおさらだ。わかりあわなくってもいいのかもしれないけど。

一緒に山をのぼってわかりあう、なんていう単純なものじゃない。
だけど、そこには行動する、といものがある。

バリ山行は動くことで、通常ルートでない。
通常ルートでないものを知ることも大切だし、言葉より身体をつかって
わかることのほうが多い。

言葉でないものがが教えてくれる、最後の1行が爽やかだ。

百日草さんも読まれていました。

そこにたゆたう妻鹿さんの後ろ姿や生き様をみせることで、人生の哀歓のようなものを描いた、読後、ほろりとしてしまった作品でした。

感じ方は違っても、「後ろ姿」「生き様」という言葉でないもので伝わるのは同じかもしれないなと思いました。