湯川学さんへ
わたしがあなたに初めてお会いしたのは20年前でした。あなたもわたしもまだ若く、あなたは34歳ぐらいだったと思います。『探偵ガリレオ』でした。物理学者で大学助教授のあなたは、論理的でない子どもが苦手でじんましんがでてましたね。
知的で幅広い雑学や観察力、推理力、瑞々しくテンポ良い草薙さんとの会話に惹き込まれ、偏屈なところはときにユーモラスであなたに夢中になり、あなたを追いかけていました。
今回は、『沈黙のパレード』のあなたについて書いてみたいと思います。
アメリカから帰ってきたあなただからなのか、年を重ねたからか、あなたの友人である刑事の草薙さんも言ってましたが、少し変わりましたね。あ、助教授でなく、教授になったからもあるのかしら。
居酒屋で常連になり相席して、他のお客さんと仲良くなったり、あなたから「親友」という言葉が出るなんてびっくりしました。
4年ぶりに草薙さんにあったあなたは、引き締まった体つきは以前のままだったけど、髪にはほんのわずかに白いものが混ざってましたね。40歳を過ぎたぐらいかしら。
わたしの時間は20年流れているのに、あなたはまだそこにいるのですね。ずるいな。
だけど、今回あなたにお会いして思ったのは、年を重ねるのは悪くないということです。しがらみが大嫌いで冷静なあなただけど、今までもやさしさや情は感じることもありましたが、今回のあなたは下町のおせっかいなおじさんみたい。
でもそれは、『容疑者Xの献身』のご経験があったからなのね。だからこそ人に対して深く思いやれるのね。湯川さん、あなたの推理は犯人見つけの自己満じゃなく、優しさなんだと思いました。
『親友』の悔しい思いを晴らしてあげたかったんですね。
今回の事件は複雑で、司法や裁判でも絶対はないと思いました。あなたはいつものように科学の実験に喩えましたが、答えに客観性を持たせることが大切だと知りました。物理は苦手だけど、あなたの授業は受けてみたいな。
たくさんの沈黙がパレードしてました。
自分を守るための黙秘権の沈黙と、誰かを守るための沈黙と、死んでしまった永遠の沈黙。
仮説か真実か。どれが本当なのか。最後までわからない真実にはまってしまいました。
ジツニオモシロイ!!
あなたが、もうひとりの湯川学さんについてどう思っているのか興味深いです。テレビや映画の湯川学さん。
映画が公開されましたね。パレードの様子、映像だと迫力があるでしょうね。あなたのお気に入りの『なみきや』の炊き合わせも見てみたい、食べてみたいです。
またあなたに会えるのを楽しみにしています。
読んでいただきありがとうございました。
KANA