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「なぜ兄は、今日、人生を終わらせたかったのだろう」二〇二四年三月一六日、毒親育ちの兄が自殺した日

「なぜ兄は、今日、人生を終わらせたかったのだろう」二〇二四年三月一六日、毒親育ちの兄が自殺した日

不幸の報せはある日突然やってくる。出産を間近に控えた病室にも、美しく穏やかな春の日にもーー。家族を捨てた私と、家族を捨てなかった兄。夫と娘3人で生きる私と、30代で自ら死を選んだ兄。毒親育ちの副業ナースが綴る、「正しい家族のあり方」とは。

兄の死を、悲しむ資格がありますか

「俺もいま病院だ」
「なんで」
「にぃが…死んだ」
「は?」

 今日は産婦人科で妊婦健診の日。
 片道1時間かかる大学病

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「自殺した兄はあの日、何十回父に殴られたのだろう」どれだけ暴力をうけても“悪いのは自分”としつけられてきた毒親からの洗脳が解けた日

「自殺した兄はあの日、何十回父に殴られたのだろう」どれだけ暴力をうけても“悪いのは自分”としつけられてきた毒親からの洗脳が解けた日

暴力が日常だった。ひどく虐待されても「父と義母は正しい」のだと、洗脳されていた。その暴力が一線を超えたとき、兄は、私は……。毒親育ちの副業ナースが綴る、「正しい家族のあり方」とは。(前回はこちら)

「父と義母のとった行為は正しい」と……

 後にも先にも、"嫌な予感"を実感できたのはこの時だけだった。

 私が小学生4年生だった時。
 学校が終わり、1人で家に帰っていた。

 小道に入り、まっす

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[兄が死んだ②]  「兄の最期の晩餐は三千円だった」親の愛情が計量計のように見えたら、皆苦しまないで済むのに

[兄が死んだ②] 「兄の最期の晩餐は三千円だった」親の愛情が計量計のように見えたら、皆苦しまないで済むのに

兄が自殺した当日
兄が死んだ①
「なぜ兄は、今日、人生を終わらせたかったのだろう」

兄が死んだ②
「親の愛情が計量計のように見えたら、みんな苦しまないで済むのに」

 今日は、死んだ兄との初対面の日。

 寝ている娘を見て、夫とクスッと笑ったあと、また少しだけ寝ていた。
 目を開けてしまったら、今日が始まってしまう。
仕事日の朝とは比べられないぐらいの憂鬱感だった。

 だが娘の寝顔が、死ぬほど

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[兄が死んだ③] 葬式。もう通常運転な私だった。

[兄が死んだ③] 葬式。もう通常運転な私だった。

兄が死んだ①
「なぜ兄は、今日、人生を終わらせたかったのだろう」

兄が死んだ②
「親の愛情が計量計のように見えたら、皆苦しまないで済むのに」

 葬式の日。
新品の喪服に袖を通す。
袖を通すと実感がわくのか、とても憂鬱な気分になった。

 着替え終え、リビングへ行く。
娘が「かっこいいね〜」と言ってきた。
笑った。

 父からチョコをもらった。
渡すことができなかった、父から職場の女子へのお返し

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[兄が死んだ④] 老害を恐れろ!①/結婚式より葬式を張り切る祖母

[兄が死んだ④] 老害を恐れろ!①/結婚式より葬式を張り切る祖母

 兄が自殺し、葬式・火葬が終わった。

 来月には子どもが生まれる。
家族葬とはいえ、妊婦に加え2歳の娘を連れての1日。
帰路につく車の運転は集中できず、心身ともに疲れ切っていた。
娘より先に大人達が寝落ちしていた。

 夜中の23時
夫のスマホに電話が入り目が覚める。
深い睡眠の邪魔をされ苛立つ。
 知らない番号からの電話。
スマホには、“九州”と表示されている。

 祖母だ。多分。
「でなくて

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[兄が死んだ④] 老害を恐れろ!②/金の切れ目は縁の切れ目

[兄が死んだ④] 老害を恐れろ!②/金の切れ目は縁の切れ目

老害を恐れろ!①の続きです。

 私は電話で、祖母に声を荒げてしまった。
なんともみっともない光景だっただろうか…。
今、一人で本当に良かった。

 夫は娘を保育園に送りに行ってくれている。
夫に見られなくて良かった…
いや、逆に夫がいたのなら、こんなに取り乱さずにいられたかな…
少し冷静になる。

 ああ…キレた時点で私は負けだ…
同じ土俵に立ったのだ…
あんな婆さんと同じ土俵に…
 普段から祖

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娘に保険金を賭け続ける親。さすが!私の毒親よ。

娘に保険金を賭け続ける親。さすが!私の毒親よ。

胸糞が悪い。

 ここ数年、身内のことを引きずることは、ほぼなかった。
なぜなら私にとって毒父も毒祖母も、もう私の一部ではないから。
 怒りが湧くことがあっても、1時間経ったら忘れてる。
夫に愚痴ったり、他事をしたり、何より子どもとの忙しい生活のおかげで、すぐに忘れれる。

 なのでこの感覚は久しぶりだ。
半日も、父に対して胸糞悪さを引きずっていることが。
 私は父を捨てたが、父は父で、子どもをと

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兄の遺影への違和感/美しくないと、子を肯定できない父へ

兄の遺影への違和感/美しくないと、子を肯定できない父へ

 あの時に感じた違和感を形にしようと思う。
ずっと、ずっと、ひっかかっていた。

 兄が32歳で自殺した。

 兄の葬式の前の日に父から電話がきた。
「にぃ(兄)の写真、持ってないか?」
持っていなかった。
 でも私が娘を出産した時の家族写真がある。
撮ったのは約3年前。
父もデータを持っているはずだ。
 3年前の写真なら遺影に使っても、まあ良いのではないだろうか。
父に伝えた。

 葬式の当日、

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私が世界一だ。世界で一番、夫と子どものいい写真が撮れる。

私が世界一だ。世界で一番、夫と子どものいい写真が撮れる。

 この人のこの記事を読んでからというものの、私の中の写真を撮るということが、ぐっと面白く、楽しく、美しいものになった。
 なんなら、自分の写真いい!とまで思える。
つまり、自分が撮るものに大変満足できるようになった。

 幼少期より、自然に対する憧れが強かった。
だからなのか、その自然を切り抜いた、絵や写真に惹かれることが多かった。

 自分からこの惹かれるものを生み出してみたかったが、私は美術の

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ワーママ三十路女、ひとりで海に浸る  

ワーママ三十路女、ひとりで海に浸る  

 ひとりで海へ行った。
2才の子どもがいるのに。私も夫も仕事が休みの貴重な家族休日の日に。

 以前危篤になった遠方の祖父に私一人で会いに行こうとしたら、祖母に「夫と子どもを置いて女が1人で来るなんて考えられない。あなた1人だったら来るな」と言われ、1才の娘を連れて6時間の旅路についたのを思い出した。
この日のことを祖母が聞いたら激怒するだろう。つまり母親なのにってやつだ。

 勢い余って海に行っ

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30代ワーママ、人生の棚卸しに30万円つかう

30代ワーママ、人生の棚卸しに30万円つかう



①1人暮らし。仕事に没頭できた時期。

 看護師7年目。
優秀かそうではないか、結構差が見えてくる。
私は全然、優秀ではない。
それでも、
「今日の一緒の夜勤だれだろー。あ、田淵さんか!田淵さんとの夜勤は安心、ラッキー」
「田淵さんの後の引き継ぎは安心できる」
とか言われていたから、「まあ、普通に仕事できる人」的なポジションだったと思う。
「普通に周りから信頼得られているのだろうな」と思いなが

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[インタビュー]乳児院、養護施設、暴力、刃。「僕、運がいいんです」

[インタビュー]乳児院、養護施設、暴力、刃。「僕、運がいいんです」

 今、私の目の前に、生後2ヶ月の息子が眠っている。

 3ヶ月後に、この子と離れて暮らす。
そう想像してみるが、この気持ちは悲しいなんて感情では整理できない。
刺されたことなんてないけど、胸に刃をあてられたような気分になる。
きっと、同じような感覚になる親は沢山いる。

 だが、生後5ヶ月で親から離れることになった子の気持ちなど、もう大人になってしまった我々には理解できない領域の感情だ。
母親を求

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乳児院、養護施設、暴力、刃。「僕、運がいいんです」/二

乳児院、養護施設、暴力、刃。「僕、運がいいんです」/二

 二話目のインタビュー記事です。
生後5ヶ月の時に、親のDVや虐待によって乳児院に入った21歳の青年にインタビューした。彼の親権をもつ母親は、1シーズンに1回の面会もドタキャンするような精神的な不安定さが垣間見え、彼は乳児院を出た後も16年間児童養護施設で過ごした。養護施設で過ごしながら、彼は小・中・高校の生活が、様々な不調やトラブルにより通えなくなっていった。

一話目↓

ドラマを見て「親がい

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乳児院、養護施設、暴力、刃。「僕、運がいいんです」/三

乳児院、養護施設、暴力、刃。「僕、運がいいんです」/三

 三話目のインタビュー記事です。
建城(タテキ)さんは、親のDVや虐待が原因で生後5ヶ月で乳児院に入り、16年間児童養護施設で過ごした。中学生の時はイジメによって不登校になった。しかし彼の周囲の人達の助けもあり克服され、定時制の高校で生徒会長をしたりと建城さんに良い兆しが見え始めていた。しかし、やはり毒親は子どもの足を引っ張る存在でしかないと言い切れる出来事が起きていく。

一話目↓

二話目↓

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