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仏教のおすすめ入門書8選!入り口に最適なわかりやすい本をご紹介


「仏教に興味を持ったはいいけれど何から読んでよいかわからない。」

今回の記事ではそんなお声に応えて、仏教を知る入門書としておすすめの作品を紹介していきます。

それぞれのリンク先ではより詳しい本紹介をお話ししていますので興味のある方はぜひそちらもご覧ください。

では早速始めていきましょう。

仏教のおすすめ入門書8選

1 佐々木閑『仏教の誕生』


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『仏教の誕生』は仏教入門にぜひぜひおすすめしたい参考書です。仏教に興味があるけど何を読んだらよいですか?と聞かれたら最近はこの本を私はおすすめしています。それほどわかりやすく、読みやすいです。しかも仏教が私達の生活とどのように関わってくるかということも考えていけるので非常に実践的です。単なる知識で終わるのではなく、生きる智慧としての仏教を本書で知ることができます。

佐々木先生の本はとても読みやすくて、何か心にすっと入ってくるような優しい語りが特徴です。

この本では仏教のエッセンスや当時の時代背景などを解説してくれます。全く仏教の知識のない方にも楽しんで読めるよう本書は書かれているので初学者の方にも安心です。また、仏教のことをある程度知っている方にとっても「ほお!そういう考え方があるのか!」という新たな発見があると思います。仏教における戒を信号機に例えたお話には私もポンと膝を叩きました。

これまで当ブログでは様々な仏教書を紹介してきましたが、入門書としてはこの本がピカイチです。仏教入門のファーストチョイスにぜひおすすめしたい作品です。


2 中村元『中村元の仏教入門』

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中村元先生の教えは仏教を思想だけでなく、時代背景や実際にインドを訪れた体験を通して語るところにその特徴があります。初学者でもわかりやすい言葉で興味深い内容をたくさん語ってくれる中村元先生です。仏教の入門書としてまず間違いないでしょう。

「仏教を学ぶ」というと肩肘張って気合いをいれて取りかからなければならないと気負ってしまう方も多いかもしれませんが、まずは中村元先生の講義を聴き、その全体像を掴むのがおすすめです。言葉も柔らかく、すらすら読めるので、すっと仏教の教えが入ってくると思います。

もちろん、日常ではなかなか接することのない仏教語も出てきますがじっくり解説を読めばきっとその意味するところは伝わると思います。難解な哲学はこの本では展開されません。私達の身近な生活と繋がる仏教を中村元先生は説いてくださります。

日本の仏教を考える上でもこの本は素晴らしい入り口になります。何事も基本が大切です。日本仏教もこうしたインド仏教を基礎として生まれています。開祖のゴータマ・ブッダが生きた世界はどのような場所だったのか、時代背景はどうだったのか、その教えはどのようなものだったのか、それを知ることで見えてくるものが必ずあります。

この本は仏教の基本を学びたい方への格好の入門書です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。


3 中村元訳『ブッダの真理のことば』

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『真理のことば』というお経の原題は『ダンマパダ』といい、そして漢訳では『法句経』という名前で親しまれています。このお経はブッダの説いた教えに最も近いとされています。つまり、ブッダその人の教えを知るのに最も最適なお経ということが言えるでしょう。しかもありがたいことに、ひとつひとつの言葉が非常にシンプルでわかりやすいのです。二つほど例を挙げてみましょう。

「怨みに報いるに怨みを以てしたならば、ついに怨みの息むことがない」

「戦場において百万人に勝つよりも、唯だ一つの自己に克つ者こそ、じつに最上の勝利者である」

このように、『真理のことば』はひとつひとつの文が簡潔で、非常にわかりやすいです。哲学的なものというより生活実践としての言葉がそのほとんどを占めますのでとてもわかりやすく、すっと心に染み入ってきます。

そうしたわかりやすさ、率直さ、簡潔さがあったからこそこのお経が世界中で親しまれることになったのでしょう。

仏教入門としてこのお経は非常に優れています。お釈迦様が説かれていた教えに触れるにはこのお経が非常におすすめです。

上の二冊と合わせて読んで頂くことで仏教の基礎を学ぶことができます。

ここから仏教の教えが発展し、私達日本の仏教にも繋がってきます。日本の仏教との違いに驚く方もおられるかもしれませんが、その違いを知ることで私達の仏教とは何なのかということも見えてきます。やはり比べてみなければわからないことがあります。そうした意味でもこのお経は初期の仏教の雰囲気を知ることができるおすすめの一冊です。


4 松本照敬『ジャータカ 仏陀の前世の物語』

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本書はブッダ滅後2、300年頃に原型が出来上がったとされるジャータカのおすすめ入門書です。

ジャータカとはブッダの前世の物語のことで、利他の精神や自己犠牲が説かれた素朴な物語です。

その代表的なお話が法隆寺の玉虫厨子にも描かれている「捨身飼虎」です。飢えた母虎を救うために自らの身体を与えたという有名な物語です。こちらももちろん本書に収録されています。

法隆寺、玉虫厨子「捨身飼虎図(須弥座向かって右面)」Wikipediaより

他にも自分の身体を切って鷹に肉を与えて鳩を救ったシビ王物語やバラモンへの供養のために自ら火に飛び込んだウサギの話など有名な物語を本書で読むことができます。特にこのウサギの物語は「月のウサギ」の元となったお話でもあります。

私達にとっても身近な物語がこのジャータカには収められています。

有名な物語以外にも興味深い説話がどんどん出てきますので、ジャータカの雰囲気を感じる上でもこの本はとてもおすすめです。また、こうした仏教説話から大乗仏教の流れが始まってくるという意味でもジャータカを学ぶ意義は大きいと思います。

ぜひおすすめしたい入門書です。


5 竹村牧男『インド仏教の歴史「覚り」と「空」』

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この本はインドにおける仏教の歴史を学ぶのにおすすめの入門書です。文庫一冊でコンパクトにわかりやすく解説された本書は非常に貴重です。

「大乗仏教とはそもそも何なのか」
「日本の仏教とはそもそも何なのか。インドと何が違うのか」

これは非常に大きな問題です。本書ではそんな大問題をじっくりと歴史の流れと共に考えていくことができる素晴らしい解説書です。僧侶である私にとっても本書は非常に貴重な一冊となりました。

大乗仏教の誕生についてこれまで読んできた『シリーズ大乗仏教 第二巻 大乗仏教の誕生』や佐々木閑著『大乗仏教 ブッダの教えはどこへ向かうのか』などの本と比較しながら読むのも興味深かったです。

ぜひおすすめしたい一冊です。


6 吉田さらさ監修、漫画夏江まみ『漫画で教養 やさしい仏像』

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そもそも仏教に興味を持つきっかけとして仏教思想そのものよりも仏像を挙げる方も多いのではないのでしょうか。

京都や奈良のお寺で出会った仏像に心惹かれ、この仏さまはどんな方なのだろうと興味が湧く。私もその気持ちはよくわかります。

仏教に興味を持つ入り口として仏像は今もなお大きなものがあるのではないでしょうか。

本書『漫画で教養 やさしい仏像』はそんな仏像世界の入門書としてぜひおすすめしたい一冊です。

上の表紙画像を見て驚かれた方もおられるかもしれませんが、なんとこの本では仏教の仏様や菩薩様の世界を会社組織に例えて紹介がなされていきます。

「そんな不謹慎な」と思われるかもしれませんが、この本の内容はかなり本格的で、仏様に対するリスペクトが感じられます。

Amazon商品ページより
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仏像の本は数多くありますが、入門としてこの本はとても読みやすく、初学者も気楽に手に取ることができます。まずは気楽に仏教を知ってみたいという方にもおすすめです。

仏教入門の入り口としてぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

7 日本神仏リサーチ『日本の古寺100選 国宝巡りガイド』

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ひとつ上では仏像の入門書をご紹介しましたが、本書はお寺そのもののおすすめガイドブックとなっています。

上でもお話ししましたが、やはり仏教への入り口は仏像やお寺そのものであることが多いのではないでしょうか。お寺の境内や仏像のある空間に身を置くと心がふっと軽くなり、浄化されるような感覚を味わった方も多いと思います。私もその一人です。特に京都の東寺や三十三間堂は私も大好きで、いつもその素晴らしさに感動しています。

本書ではそんな日本の古寺が新書にコンパクトにまとめられています。しかも宗派ごとにお寺がまとめられていますので、どの寺がどの宗派かがとてもわかりやすいです。どの寺がどの宗派かというのは意外と難しいですが、この本を読めば一目瞭然です。

宝島社のこちらの商品紹介ページでは試し読みもできますのでそちらも参考にして頂ければと思います。

お寺巡りのガイドブックとしてもこの本は役に立つことでしょう。これは良書です。ぜひおすすめしたい一冊です。

また、仏像やお寺巡りに興味のある方向けにこちらのまとめページを作ってみました。

ぜひこちらもご参照ください。


8 高田好胤『心 いかに生きたらいいか』

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本書は薬師寺再建の立役者高田好胤師による作品です。私が本書を手に取ったのは当ブログでも以前紹介した太田信隆著『まほろばの僧 高田好胤』がきっかけでした。その本では高田好胤師について次のように紹介されています。

高田好胤は、小学校五年生のときに薬師寺に入り橋本凝胤管長を師父として訓育された。凝胤は南都仏教の伝統を受け継ぐ菜食不犯、峻厳な傑僧であった。

青年僧の時代は、境内で修学旅行生の案内に明け暮れた。ガヤガヤいいながら寺にやってきた生徒たちの中には、好胤の話を聞いているうちに心を打たれて、帰りには合掌するようになったというものもいた。「寺は金閣、庭は竜安、坊主は薬師寺べリーグッド」と書いた手紙が舞い込んだ。好胤の〝青空説法〟を聞いた修学旅行生は、二百七十万人にのぼる。

薬師寺は中世の戦乱で兵火にあい、創建当初の建物は東塔しか残っていなかった。住職を引き継ぎ管長職に就いた好胤は、老朽化していた仮建築の金堂の復興を発願した。その費用十億円を寄進しようという企業の申し出もあったが、百万巻の写経を勧進し、一巻千円の納経料を集めて、白鳳様式の壮麗な金堂を再現した。募財のために全国を駆けめぐって、説法をした。東へ西へはげしく、行き来していたので、「好胤、矢の如し」といわれた。(中略)

昭和三十年代の後半から、日本の経済は急成長して物資が豊かになった反面、心の温もりとか、人情とかいったものが、希薄になった。「いつくしみ」や「恩」というような言葉は、もはや、日常の中でも、出てこないようになった。

好胤は、「物で栄えて、心で亡びる」と言い続けた。「忙しいという字は、立心偏、つまり、心が亡ぶ、ということです」といった。

薬師寺は、深遠で難解な唯識教学を根本とする法相宗であるが、好胤は、その教義を、生活感覚でわかりやすく説いた。「仏教は、まるいこころの教えです」と表現した。ユーモアをまじえて、人びとの心に安らぎを届けた。

草思社、太田信隆『まほろばの僧 高田好胤』P2-4

薬師寺の伽藍が写経のお布施によって建てられたというのは有名な話ですよね。私もその話を聞いた時、なんと立派なことかと感動したものでした。

そして私自身、かつて薬師寺の僧侶の法話を聞き感動したひとりです。私も中学生の頃にこの薬師寺を訪れ、上の引用に書かれていたようにその説法に感銘を受けて帰ったのでありました。「薬師寺には素晴らしい僧侶の方々がいる」、そのことだけでも私にとって大きな救いとなったのでした。私自身、お寺の長男として生まれ、後継ぎとなる上で色々な葛藤もありました。ですが、この薬師寺の僧侶の姿というのは中学生ながら憧れといいますか、僧侶という生き方に尊敬の念を抱くきっかけとなったのを覚えています。

そしてこの『まほろばの傑僧 高田好胤』の中で、師のベストセラーとして紹介されていたのが本書『心 いかに生きたらいいか』でした。

上の引用に説かれていましたように、高田好胤師は難しい専門用語や哲学を話しません。身近な話題と絡めながら仏教をわかりやすくお話しして下さります。

本書は仏教の体系的な解説を聞ける教科書的な参考書ではありません。ですが、師の語る言葉の節々にその教えがはっきりと表れています。仏教の教えと共に生きるとはどういうことか。その具体的な姿を高田好胤師は私達にわかりやすく示してくれます。

この本は仏教の入門書としてぜひおすすめしたい作品です。「仏教を学ぶ」というとなかなかハードルが高くなってしまいがちですが、そんな方にはまずこの本をおすすめしたいと思います。そういう方にこそ師は仏心ほとけごころの種をまいてきたのです。ぜひ師の言葉を聴いてみてはいかがでしょうか。


おわりに

今回の記事では仏教の入門書としておすすめの8冊をご紹介しました。

次の記事ではそこからさらに進んでより深く仏教を学びたい方へのおすすめ本を紹介していきます。

そのラインナップだけここに挙げておきましょう。

もっと仏教を知るためのおすすめの参考書


1 中村元『古代インド』
2 『新アジア仏教史01インドⅠ 仏教出現の背景』
3 中村元『ゴータマ・ブッダ』
4 奈良康明『〈文化〉としてのインド仏教史』
5 『仏教の思想5 絶対の真理〈天台〉』
6 竹村牧男『華厳とは何か』
7 鎌田茂雄『仏教の来た道』
8 森三樹三郎『老荘と仏教』
9 『仏教の思想8 不安と欣求〈中国浄土〉』
10 『新アジア仏教史11 日本Ⅰ 日本仏教の礎』

インドについてのおすすめ参考書


1 森本達雄『ヒンドゥー教―インドの聖と俗』
2 辛島昇・奈良康明『生活の世界歴史5 インドの顔』
3 藤井毅『歴史の中のカースト 近代インドの〈自画像〉』
4 保坂俊司『インド宗教興亡史』
5 マーティン・J・ドハティ『インド神話物語百科』
6 上村勝彦『バガヴァッド・ギーターの世界 ヒンドゥー教の救済』
7 渡瀬信之『マヌ法典 ヒンドゥー教世界の原型』
8 カウティリヤ『実利論』
9 W・ダルリンプル『略奪の帝国 東インド会社の興亡』
10 間永次郎『ガンディーの真実―非暴力思想とは何か』

スリランカ仏教のおすすめ参考書~日本仏教との比較のためにも


1 『東南アジア上座部仏教への招待』
2 杉本良男『スリランカで運命論者になる 仏教とカーストが生きる島』
3 澁谷利雄『スリランカ現代誌』
4 ゴンブリッチ、オベーセーカラ『スリランカの仏教』
5 馬場紀寿『仏教の正統と異端 パーリ・コスモポリスの成立』

これだけ見ても何が何だかわからないかもしれませんが、仏教を学ぶのに仏教だけを見ていても見えてこないものがあります。

私が仏教を学ぶ上で大切にしているのは「宗教は宗教だけにあらず」という視点です。

宗教は単に信仰や教義だけで成り立つのではなく、当時の時代背景や政治経済、文化、歴史、国際情勢など様々な要因が組み合わさり成立しています。ですので私は仏教を学ぶ上でも当時のインドの時代背景やバラモン教、ヒンドゥー教などの他宗教との関連なども重視しています。

というわけで私のチョイスする参考書は仏教書としては一風変わったラインナップになりますがきっと皆さんの新たな発見のお役に立てるのではないかと確信しております。

次の記事も引き続き参考にして頂けましたら幸いです。

以上、「僧侶がおすすめする仏教入門書7選!入り口に最適なわかりやすい本をご紹介」でした。

次の記事はこちら

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