イタリア・ローマ旅行をもっと楽しむためのおすすめ本を一挙紹介!
はじめに
これまで当noteではローマ観光に関する記事をご紹介してきました。
今回の記事ではそんなローマをもっと楽しむためにおすすめのガイドブック、解説書をご紹介していきます。ここで紹介する本を読めばローマ旅行がもっと楽しくなること間違いなしです。
では、早速始めていきましょう。それぞれのリンク先ではより詳しくその本についてお話ししていますのでぜひそちらもご参照下さい。
ローマをもっと味わうための必読ガイドブック5選!まずは入門的な書籍とローマの全体像を掴むためのおすすめ本を紹介します
石鍋真澄『サンピエトロが立つかぎり 私のローマ案内』
はじめに言っておきます。この本は最高です!
ローマの魅力を堪能するのにこれほど優れた作品は存在しないのではないでしょうか!それほど素晴らしい作品です。
「本書によってローマの魅力を会得した読者は、熱い旅心を呼び覚まされるにちがいない。(本書より)」
まさにこれです!この本を読むとものすごくローマに行きたくなります!そして観たい場所が一気に増えるので旅行スケジュールがパンパンになること間違いなしです(笑)
こちらが本書の目次になります。
ローマのメジャーどころもビシッと押さえられていますし、あまり聞いたことのない場所もあるかもしれませんが、読んでみると「おぉ!そうなのか!」と面白く読めます。ひとつひとつが発見の連続です。
2022年に私はローマを訪れ、こちらの旅行記を執筆しましたがそのメインの参考文献がこの『サンピエトロが立つかぎり 私のローマ案内』になります。
この本では終始わくわくする名解説を楽しむことができます。
その深さ、広さには驚くしかありません。漠然と見えていたローマの景色が変わること請け合いです。
最強のローマガイドブック、ここに極まりたり!!ぜひおすすめしたい最強のローマガイドブックです。
塩野七生、石鍋真澄『ヴァチカン物語』
上の『サンピエトロが立つかぎり 私のローマ案内』はローマ全体の最高の解説書でしたが、本書はローマカトリックの総本山、バチカンを知るためのおすすめガイドブックになります。
バチカンといえばサン・ピエトロ大聖堂。その美しさたるや、言葉にできません。
この本ではそんなバチカンの歴史とこの圧倒的建造物の美しさの秘密について解説していきます。
この本ではまず『ローマ人の物語』の著者である塩野七生氏によるバチカンのエッセイから始まります。とてもわかりやすく、入門者でも楽しく読み進めることができます。
そしてこの本の中盤からはバチカンの歴史とその美しさの秘密を石鍋真澄氏が解説していくのですが、この解説がとても刺激的でものすごく面白いです。バチカンの素晴らしさはどこにあるのか、その背後にどんな思想が込められているのかがよくわかります。
この本はバチカンを知るためにものすごくおすすめな一冊です。ぜひガイドブックとしてこの本を活用して頂けたらなと思います。バチカンをこれから訪れる方にも、これまで訪れたことがある方にもすべての方におすすめしたい作品です。
ナショナルジオグラフィック『ローマ帝国 誕生・絶頂・滅亡の地図』
この本はローマ帝国を学ぶ入門書としておすすめの一冊となっています。
ページ数は全96ページとかなりコンパクトで、図版や写真もたくさん掲載されていますので気軽に手に取ることができます。
私がこの本でありがたいなと思ったのはその読みやすさでした。
古代ローマについての知識がほとんどなくても読み進めやすい文章となっています。歴史の本となるとどうしても人物名や地名が大量に出てきて頭が混乱してしまいがちですが、この本は96ページというコンパクトな分量ですので要点がぎゅぎゅっと凝縮されています。
ですのであまり細かいところに立ち入らず、歴史の大きな流れをざっくりと学ぶことができます。
まずはこの本でざっくりとした流れを掴んでから他の参考書に進んでいくとスムーズだと思います。
ローマ帝国に興味があるけど何を読んだらわからないという方にぜひともおすすめしたい1冊です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
『地球の歩き方ローマ2018~19』
私はこの『地球の歩き方』に度肝を抜かれました。
これまでも私は海外に行く度に『地球の歩き方』にお世話になっていたのですが、今回紹介する『ローマ』はその中でも飛び抜けて充実した旅ガイドになっています。
私がそれを実感したのは下でも紹介する石鍋真澄著『ベルニーニ』に出てくる教会や彫刻を探している時でした。
『ベルニーニ』の巻末にも地図は一応掲載されてはいるのですが、できればもっと詳細なマップがほしい!そこでもっと見やすい地図を求めてこの本を手に取ったのですがそれが大正解!ばっちりベルニーニゆかりの地も収められていました。
私はこの『ローマ』版を買う前にすでに『イタリア』版を買っていました。と言いますのも私はローマだけではなくミラノやフィレンツェ、ヴェネツィアなどいくつもの都市を巡る予定があったからです。
ですが、最初はこの『イタリア』版で十分だったのですがローマを学べば学ぶほど行きたい場所が増えてきたのです。しかもベルニーニゆかりの地や文学ゆかりの地となるとかなりマニアックな場所も出てきます。
そうなると『イタリア』版では対応しきれません。
そこで改めて『ローマ』版を買って見てみるとそれらマニアックな場所もばっちり収録されているではありませんか!
地図もしっかり細かい所まで掲載されていますし、解説も充実しています。これは素晴らしい!
私はこれまで当ブログで様々な本を紹介してきましたが、まさか『地球の歩き方』を紹介する日が来ようとは!(笑)
ですがそれほどクオリティーの高い素晴らしい1冊となっています。
高階秀爾『フィレンツェ 初期ルネッサンス美術の運命』
ローマ観光とフィレンツェをセットで観光される方も多いのではないでしょうか。
フィレンツェといえばボッティチェリやレオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロなど言わずもがなの巨匠の作品が今なお世界中の人を魅了し続けている華の都です。
ですがそんなフィレンツェではありますが、いざこの街がどのような歴史を経てどのように芸術が花開くことになったかというのは意外とわかりにくいです。
ルネサンス芸術という言葉は知っていてもいざこの芸術が実際にどのようなものなのか、それが黄金期を迎える時代背景は何だったのか。私にとっても、わかるようでわからない微妙な問題でした。
この本ではそんなフィレンツェやルネサンス芸術についてわかりやすく学ぶことができます。ローマとフィレンツェは同じイタリアにありながら成り立ちや文化がかなり異なります。この本を読めばローマとフィレンツェ、両都市についての理解が深まること間違いなしです。やはり比べてみてはじめて見えてくるものがあります。イタリア旅行をもっと楽しむためにぜひおすすめしたい名著です。
古代ローマ帝国をもっと知るためのおすすめ参考書
本村凌二『興亡の世界史第04巻 地中海世界とローマ帝国』
この作品はタイトル通りローマ帝国の興亡の歴史の解説書になります。この本でありがたいのはローマ帝国の歴史はもちろん、ギリシャやカルタゴなど地中海諸国との関係性も網羅している点にあります。
そしてハンニバルやカエサルについての解説も豊富にあるのも嬉しいです。
ローマ帝国の長い歴史をまとめるとなるとどうしてもひとつひとつの出来事については薄くなってしまいがちです。ですがこの本ではあえてそこを割り切り、ハンニバルとカエサルという超ビックネームについて手厚く解説を加えています。私としてもカエサルとハンニバルについてもっと知りたいなと思っていたところでしたのでこれはありがたい解説でした。
もちろん、他の人物についてもわかりやすくてドラマチックな解説がなされていますのでご安心ください。この本は最初から最後まで一つの小説を読んでいるかのような面白さです。
佐藤幸三『図説 永遠の都 カエサルのローマ』
この本はカエサルの歴史と古代ローマ帝国の中心地フォロ・ロマーノを見ていくガイドブックになります。
この本はとにかく写真や図版が大量に掲載されていて現地の様子をイメージするのにとても助かります。
また地図も充実していて、何がどこにあるのかというのも知ることができます。そしてそれらひとつひとつの歴史もこの本では学ぶことができます。
これは現地で実際に歩く際に非常に役に立つものと思われます。
私も該当箇所をコピーして現地に持って行くことにしました。これがあれば現地で見逃してしまいがちなものまでしっかりと予習していくことができそうです。
歴史の大きな流れを掴むことも大切ですが、それだけだといざ現地に着いたとしてもどこに何があって何が見どころなのかを掴むのかは至難の技です。やはり実際にそこに何があるのかがわからないと厳しいものがあります。
そういった意味でこの本は非常にありがたいガイドブックとなっています。
エドワード・ギボン『ローマ帝国衰亡史』
この作品は1776年に発表された『ローマ帝国衰亡史』という壮大な作品を編訳し一冊にまとめたものになりますが、それでも500ページを超える大作となっています。
あれほどの繁栄を誇ったローマ帝国がなぜ崩壊していったのか。
単に蛮族が侵入したから崩壊したという単純な見方でいいのだろうか。
繁栄を謳歌するローマ帝国内で何が起こっていたのか。
それらを考えるのにこの作品はうってつけです。
そして歴史の流れを追いながら現代にも通ずる教訓がこの本では語られます。これが深いのなんの・・・!
小説のように読みやすいギボンの文章に加えて様々な考察が語られていく本書はやはり名著中の名著です。
そして章と章の間に置かれた訳者解説も非常に充実しています。
本編だけではわかりにくい箇所もこの解説のおかげでその流れも掴みやすくなります。
この本を読んでローマ帝国についてもっと興味が湧いてきました。知的好奇心が刺激される名著です。
カエサル『ガリア戦記』
カエサルはローマ帝国を代表する英雄です。カエサルといえば「賽は投げられた」、「ルビコン川を渡る」、「来た、見た、勝った」、「ブルータス、お前もか」などの言葉でも有名ですよね。
そしてそのあまりのカリスマぶりは多くの作品でも取り上げられ、あのシェイクスピアも『ジュリアス・シーザー』という傑作を残しています。
さて、そんなカエサルによる文学作品がこの『ガリア戦記』になります。
実際にこの本を読んでみるとその流れるような文章に驚くと思います。古代ローマやギリシャは弁論術が盛んだったということで、カエサルもそのように自分の功績や戦闘の経緯を雄弁を用いて語るかと思いきやものすごく淡々と語るのです。
しかも主語を「私」ではなく「カエサルは」という書き方をしており、あくまで第三者による「報告書」のスタイルを取ります。
これでは淡々とした単なる報告書になってしまうのではないかと思ってしまったのですが、読み進めている内に不思議な変化が起きてきます。
いつの間にか読んでるこちらが「カエサル・・・すごいな・・・!」という気持ちに支配されるようになっていくのです。
文体はあくまでシンプル。余計な形容はありません。ですがなぜかその戦闘の経緯や戦士たちの武勇が臨場感たっぷりに伝わってくるのです。そしてそのガリア遠征を冷静に指揮していくカエサル。カエサルの卓越した指揮や全体を見渡し、正確に分析する力があるからこそこの戦いは勝ち続けているという印象が湧いてくるのです。これは読んでわかるすごさです。
2000年以上後の時代を生きている私ですらこうなのですから、当時今か今かとハラハラしながら戦況を待ち望んでいたローマ人に対しどれほどの熱狂の与えたかは想像を絶します。
あのキケロが絶賛するしかなかったカエサルの『ガリア戦記』。ぜひその名著を読んでみたいと手に取ってみたのですがこれは大正解。「こんな作品が古代ローマにあったのか」と驚くことになりました。英雄カエサルは文才も超一流でした。
ジェラール・クーロン、ジャン=クロード・ゴルヴァン『古代ローマ軍の土木技術 街道・水道・運河などの建築技術をイラストで再現』
この作品は古代ローマ時代の驚異の建築技術について知ることができる作品です。タイトルにもありますようにイラストが多数掲載されていますので視覚的にもイメージしやすく、とてもわかりやすい作品となっています。
古代ローマの建築といえばコロッセオやパンテオン、水道橋など様々なものが思いつくと思います。
およそ2000年も前の時代にどうやってこんな巨大な建物を作れたのか本当に不思議ですよね。この本はその不思議に迫れるありがたい本です。
その中でも私が特に驚いたのはクレーンの存在です。人力ではありますが巨大なクレーンを設置して石を高く吊り上げたり、重しをつけてハンマーとして使っていたというのには驚きました。この記事では掲載できませんがこの本のイラストを見ればびっくりすると思います。建物の最上部ほどの高い位置に足場を作り、そこにクレーンを設置して石を運び上げているのです。こんな大作業が2000年前にしてすでに行われていたということに呆然とするしかありません。
また橋の建設の仕組みなども「えっ!そうやって作っていたの!?」と度肝を抜かれました。ローマ人の技術力の高さには驚くしかありません。
ローマの驚異的な建築物がどのようにして作られたのか、またそれらを担った人的システムはどうなっていたのかを知れるおすすめの作品です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
さらに詳しく知りたい方におすすめの参考書
ここから先はかなりの分量になってしまうので、リストのみここに掲載します。
ローマの芸術、文学についてのおすすめ参考書
『もっと知りたいラファエッロ 生涯と作品』
ラファエロは言わずもがなですが、ミケランジェロ、レオナルド・ダ・ヴィンチと並ぶルネッサンスの巨匠です。
この本では一枚一枚の絵を解説付きでじっくりと見ていくことになります。ラファエロの生涯を辿りながら時代順に作品を見ていくので作風の変化なども感じることができます。
バチカン美術館にもラファエロ作品は数多く展示されていますので、そのガイドとしてもこの作品はとても便利です。
宮下規久朗『闇の美術史 カラヴァッジョの水脈』
「闇に灯る光は、人に厳粛で宗教的な雰囲気を呼び起こす」
「こうした夜の恐怖の中から様々な宗教や信仰が生じたのは自然であり、そこに灯火が重要な役割を果たしたのも当然であった。それは人を暗く恐ろしい闇の世界から解放し、救いに導くように思われるのだ。」
著者がこう語るように「光と闇」の感覚は人間にとって根源的なものではないでしょうか。
ですが、現代を生きる私たちは電気の光に囲まれているため、闇を感じることが少なくなりました。闇を感じることが少なくなると人間はどうなってしまうのか。これは非常に重大な問題です。私達は明るい世界に慣れきっていますが、実は闇を感じないが故に失ってしまったものもあるのかもしれません。
この本ではそんな「闇と光」の関係を絵画を通して深く考察していく作品になります。カラヴァッジョについての理解を深める上でもこの本はとてもおすすめです。
僧侶としてもこの作品は非常に興味深いものがありました。
高階秀爾『バロックの光と闇』
この本ではじっくりとバロック芸術の特徴を見ていきます。ダ・ヴィンチやミケランジェロ、ラファエロなどのルネッサンス全盛期の芸術とバロックは何が違うのか、どのようにしてバロックの技術が生まれてきたのかということもわかりやすく説かれます。
特にベルニーニの解説はまさに珠玉です。これを読めばベルニーニ巡礼をしたくなること間違いなしです。
バロック芸術そのものだけではなく、その時代背景まで知れるこの作品はぜひぜひおすすめしたい逸品です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
石鍋真澄『ベルニーニ バロック美術の巨星』
この作品は17世紀のローマで活躍した天才芸術家ベルニーニについて語られた伝記です。
ベルニーニといえば何と言ってもサン・ピエトロ大聖堂にありますこちらの作品が有名です。
初めて見た時、その独特な姿に言葉を失ってしまうほどの衝撃を受けたバルダッキーノ。
そしてそのバルダッキーノの先にはカテドラ・ペトリというこれまたベルニーニの傑作が配置されています。
そして「ミケランジェロとベルニーニが設計したサン・ピエトロ大聖堂の美の秘密を解説 イタリア・バチカン編⑥」の記事でもお話ししましたが、ベルニーニはこの大聖堂内の装飾やバチカン広場の設計も担当しています。
なぜバチカンはこんなにも美しいのか、そこにはベルニーニという偉大な天才がいたからこそなのでした。
この伝記はそんなベルニーニとは何者だったのか、そしてこの人物が生まれてくる時代背景とはどのようなものだったのかを知ることができる素晴らしい作品です。
この本も私の旅行記で主要な参考文献となっています。
ローマをもっと深く味わうために必読の参考書です。ものすごく面白い伝記です。ぜひおすすめしたい逸品です。
中島俊郎『英国流 旅の作法 グランド・ツアーから庭園文化まで』
この本はイギリスやフランス、ドイツの上流階級にとってローマという街がどのような存在だったのかがよくわかる参考書です。
ローマの古代遺跡は18世紀や19世紀の貴族たちを惹きつけてやみませんでした。
あのゲーテやアンデルセン、メンデルスゾーンなども皆ローマを愛し、その芸術に反映させています。
なぜヨーロッパの上流階級は皆ローマを目指したのか。古代遺跡のクオリティが高いから?いやいや、そこには知られざる様々な背景が隠されていたのでありました。
この本は知的好奇心がものすごく刺激される作品です。とにかく面白い!目から鱗の事実がどんどん出てきます。
ゲーテ『イタリア紀行』
ゲーテの『イタリア紀行』はヨーロッパの文化人に絶大な影響を与えました。
この作品が「旅行記もの」の傑作と言えることは間違いないです。
そして『イタリア紀行』を読んで感じたのは、やはりゲーテは詩人であるということ。
あまりに豊かで繊細な感受性。
彼は目に見たもの、聞こえてくるもの、感じられるもの全てに開かれています。普通の人なら気づきもしないようなことに熱心に感じ入り、美しくも情感たっぷりな言葉でそれを歌い上げます。
詩人の心、感受性豊かな心というのはこういうことなのだなということを感じさせられます。
この旅行記はある意味芸術家の心構えを知ることができる書と言えるかもしれません。目の前にある世界をどのように感じていくのか、その奥底に潜む秘密にいかに分け入っていくのか、その過程を記した書物がこの『イタリア紀行』なのではないかと思います。
ゲーテの『イタリア紀行』に憧れたヨーロッパ人が、彼のように思索しようと旅に出たのも頷けます。ヨーロッパ最大の文学者、詩人であるゲーテの影響力の源泉をこの作品で感じられたように思います。
18世紀末、19世紀以降においてのイタリア旅行はもはやゲーテと切り離すことはできなくなりました。それほどゲーテの『イタリア紀行』はヨーロッパに影響を与えたのでした。
この作品はゲーテの感受性の秘密も知れるおすすめな作品です。また、記事内でも紹介しましたがカニを見て喜ぶゲーテという意外な素顔も観ることができます。人間ゲーテを知れるのもこの作品の嬉しいところです。
アンデルセン『即興詩人』
アンデルセンはデンマーク出身の童話作家です。ディズニー映画の原作となった『人魚姫』や『雪の女王』、『親指姫』など数々の名作を生み出してきました。
この作品はアンデルセンの出世作として知られています。そしてその出世作にして「アンデルセンらしさ」がすでに爆発している作品となっています。どういうことかと言いますと、この作品では美しい女性に恋する真面目で繊細な青年の悲哀が描かれているからです。後の童話でも何度も繰り返される真面目で繊細な心優しい主人公の型がすでにこの作品で完成されているのです。
歌姫アヌンツィアータに恋した主人公アントーニオ。彼の人物造形は後の童話の原型と言っていいほどアンデルセンらしさ全開です。
「デビュー作にはその作家のすべてがある」とよく言われますよね。私は彼の童話を読んだ後にこの『即興詩人』を読んだわけですが、「あぁ、アンデルセンらしいな~!」と何度も唸ることになりました。それほどこの作品はアンデルセンの作家人生に大きな影響を与えています。
そしてこの『即興詩人』は何より、アンデルセンのイタリア紀行がもとになって生まれた作品です。「イタリア紀行」といえばゲーテの『イタリア紀行』が有名ですが、まさにアンデルセンもこの永遠の都ローマやフィレンツェなどから多大なインスピレーションを受けていたのでした。
『即興詩人』は美しきイタリアの姿がどんどん出てきます。むしろ、その美しきイタリアこそ主人公とすら言えるかもしれません。
シェイクスピア『ジュリアス・シーザー』
「賽は投げられた」、「ルビコン川を渡る」、「来た、見た、勝った」、「ブルータス、お前もか」
これらを見てピンとくる方もおられると思います。
私自身、ジュリアス・シーザーという名ではピンと来なかったのですが、この人物のローマ式の本名はと言いますと、ガイウス・ユリウス・カエサルとなります。ローマ字表記ですと、JULIUS CAESAR。これの読み方の違いがジュリアス・シーザーとユリウス・カエサルという違いなのですね。
なるほど、カエサルと聞くと「あぁ、そういうことか」となる方も多いかもしれません。
『ジュリアス・シーザー』は私の中でも強烈な印象を残した作品でした。あらすじや背景を知ってから読むと最高に面白い作品でした。非常におすすめです。
さらに詳しく学びたい方へのおすすめ参考書
ここでも上の古代ローマと同じく、紹介しきれなかった本のリストを掲載します。
ローマ・カトリックについてのおすすめ参考書
G・ブアジンスキ『クラクフからローマへ』
この本はヨハネ・パウロ2世が教皇となった一年余の1980年に書かれました。
ヨハネ・パウロ2世(1920-2005)は1978年から2005年間、ローマ教皇として在位していました。
この作品はそんなヨハネ・パウロ2世がポーランドで生まれ、そこからローマ教皇となるまでの人生をまとめた伝記です。
彼の伝記を読んでいるとヨハネ・パウロ2世は若い頃から猛烈に勉強し、無類の読書家であったことがわかります。彼は詩人でもあり、哲学にも通じていました。彼の偉大な所はその幅広い視野にあります。彼はカトリックの司祭でありながら、それと敵対するマルクス主義の理論にも詳しく、彼の前では共産主義者もたじたじとしてしまうほどだったそうです。
ヨハネ・パウロ2世は独善的に思想を押し付けたりしません。ナチスやソ連の弾圧に苦しんだ体験がそうした傾向を強めたのかもしれません。彼のそうした懐の広い大きな心に私は何度も胸打たれました。私はこの伝記を読んで何度も泣きそうになりました。伝記を読んで泣きそうになることはほとんどない私ですが、この本では何度もそういう箇所がありました。私はすでに何度もこの本を読み返しています。きっとこれからもこの本は私の大切な一冊となることでしょう。
石鍋真澄『教皇たちのローマ』
この本もぜひおすすめしたい衝撃の一冊です。私はこの本にとてつもないショックを受けました。まさに私の中にあった常識が覆されたかのような凄まじいショックでした。
バチカンと言えばその美しい美術館やシスティーナ礼拝堂、サン・ピエトロ大聖堂など、何も知識がなくても圧倒される素晴らしさがあります。
ですが、これらの建造物や芸術が生まれてきた背景には何があったのか、その流れを知ることで全く違った世界が現れてきます。
この本を読めば衝撃を受けること間違いなしです。これまで見えていたローマ・バチカン像が変わると思います。
これはぜひおすすめしたい作品です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
陶山昇平『ヘンリー八世 暴君かカリスマか』
ヘンリー八世といえばシェイクスピアの『ヘンリー八世』で有名なイングランド王で、16世紀前半から中頃にかけて在位した人物です。
ヘンリー八世は並外れたカリスマ、暴君とも知られており、離婚問題でローマカトリックと対立し、そのままイギリス国教会を立ち上げたことでも有名です。そこからイギリスの反カトリックの流れが出来上がり、陰謀うずめく血みどろの政治闘争が続けられることになります。こうした流れで出てくるのが血まみれのメアリーやエリザベス女王になります。この2人が共にヘンリー八世の子だったというのは興味深いですよね。
さて、私がこの本を手に取ったのは一見ヘンリー八世とは関係のない1527年のサッコ・ディ・ローマ(ローマ劫掠)事件がきっかけでした。私がこの事件を知ったのは上でも紹介した『教皇たちのローマ』のおかげです。
この事件は1527年にローマが攻撃され、虐殺、略奪の限りが尽くされた恐るべき出来事でした。
そしてこの本を読んでいて私はふと頭をよぎるものがありました。
「あれ?1527年といえば、この辺でヘンリー八世がイギリス国教会を作ろうとしていなかったっけ・・・もしかしてヘンリー八世がこんな大胆なことができたのはサッコ・ディ・ローマでバチカンが弱っていたからではないか?」
私はこれまでシェイクスピアの伝記を読んだ関係で、何となくではありましたがイギリスの流れを知っていました。そしてその歴史とイタリア・ローマ史がビビッと繋がった瞬間でした。これは今すぐにでも確かめたい!あのヘンリー八世はこの時どんな状況だったのだろう!私は居ても立っても居られなくなりこの本を手に取ったのでした。
そして読んでみて驚きました。サッコ・ディ・ローマ事件はやはり大きな影響を与えていたようです。まぁ、正確に言えばそもそもサッコ・ディ・ローマ事件が起きてしまったというそのこと自体がローマカトリックの弱体化とヨーロッパの複雑な政治情勢を示していると言えます。こうした国際情勢の中ヘンリー八世がどのように動いていたのかを知れるこの伝記は非常に興味深いものがありました。
実際、この本はものすごく面白いです。著者の語りも素晴らしく、歴史の流れがすっと入ってきます。ヘンリー八世という圧倒的カリスマの驚異の人生を私達は目撃することになります。
この本はシェイクスピアファンにも強くおすすめしたいです。この王の娘が後のエリザベス女王であり、その治世で活躍したのがシェイクスピアです。彼が生きた時代背景を知ればもっとシェイクスピア作品を楽しむことができます。時代背景を離れた芸術はありません。私にとってもこの伝記は非常にありがたいものとなりました。
佐藤彰一『宣教のヨーロッパ』
イエズス会といえばまず思い浮かぶのはザビエルではないでしょうか。私もそのイメージが強いです。
この本でももちろんザビエルについて語られるのですが、今回私がこの本を手に取ったのはそのイエズス会の創始者イグナティウス・デ・ロヨラに興味があったからでした。
この本はそのイグナティウス・デ・ロヨラの生涯や思想を知る上で非常にありがたい作品でした。
この本では彼がどこで生まれどんな過程を経てイエズス会の創始者となったのか、そしてその時代背景はどのようなものだったのかということを学ぶことができます。ザビエルとの関係性を知れたのも嬉しかったです。ローマの歴史を知る上でもとても有益な一冊です。
さらに深く学びたい方へのおすすめ参考書
おわりに
以上、たくさんの本を紹介してきましたがいかがでしたでしょうか。
ローマはあまりに奥が深い。そして知れば知るほどはまってしまう底なし沼のような存在です。私もこのローマの浪漫にすっかりとりつかれてしまいました。
壮麗なローマカトリック文化に触れるもよし、古代ローマに思いを馳せるもよし、芸術や文学にのめり込むもよし、実に幅の広い魅力があるのがローマです。
この記事が皆様のお役に立てましたら私としては幸いでございます。
以上、「ローマおすすめ参考書一覧~歴史、文化、宗教、芸術!これを読めばもっとローマが面白くなる!」でした。
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