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カフェで混じり合う2つの世界

休日の行きつけのカフェはいつも満席だ。
近くに商業施設があることもあり、ご近所さんが集まるというよりは全国から様々な人が集っているのが常である。

やっとのことで見つけた空席に座ると、隣席ではカップルがコーヒーとケーキを味わっていた。その装いから、結婚式への参列後だったようだ。


難読な本を読むにはカフェが良い。
適度な騒音がBGMとなり、本の世界に没頭できる気がするからだ。

今日持ってきた本は、ここ最近で3本の指に入るほどの難読書である。全体像を把握するのにも、詳細をイメージするのにも言葉足らずだと感じざるを得ない文章なのだ。しかしその分、私が自由に創り出す世界観を味わえるのも言うまでもない。

頭の中のイメージをどんどん膨らませながら、宇宙論のような、心理学のような、見たことのない世界をゆったりと自由に創り上げる。

その頭の中の新しい世界に没頭し始めたその時、知ってはいるが馴染みのない音が入ってきた。


はっとして私はカフェの世界に戻り、その音がどこから発せらたのか耳に全集中してみる。

音は隣席のカップルの方からから聞こえてきた。


あれ?
明らかに日本人という外見のカップルが、ポルトガル語を話しているように聞こえるのだ。

難解な本を読んで私は頭がおかしくなったのだろうか?一瞬自分の感覚を疑ったが、どうやら間違いない。


いつかポルトガルの田舎町を歩いて旅してみたい。その気持ちから始めたスマホアプリでのポルトガル語学習。半年続けた結果、「I have an apple.」くらいは言えるようになっていた。

その学習の中で何度も聞いたフレーズの一つが今、音として隣席から聞こえてきているのだ。


ポルトガル語を母国語として話す地域は主にポルトガルとブラジルだ。想像だが恐らく、お隣のカップルは日系ブラジル人の方々だろう。


一人コツコツと積み重ねていたポルトガル語学習の成果を確認できたのは、思わぬ収穫だ。だが隣席のカップルに話しかけるほどの上達は、まだまだ先の話になるだろう。

今日のところは満足した耳に日本語とポルトガル語のフィルターをかけ、難解な本の世界の構築作業へと戻った。

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