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ネコハル
2023年4月29日 19:33
今年の桜も終わったと口々に皆が言う青々と茂る桜の若葉を足を止めて見上げたりはしないそれでも桜は生きている誰にも称賛されなくても精一杯ひかりを浴びて道行く人たちの傍らでまた来年の春のために光合成と呼吸を繰り返し誰かに見られるためではなく美しい本能のままに桜は生き続けている
2023年4月29日 13:57
人魚は何を夢見たのだろう王子と結婚し生涯を人間として暮らすことそんなものにどれほどの魅力があったのか遠く深く広がる蒼い世界より妖しい歌声や秘密めいた囁きよりそうじゃない人魚が夢みたものはきっとささやかな反逆気まぐれな波に流されず激痛に耐えて自分の足で歩むこと王女という枷のないただの頼りない自分で生きることそして何より純粋に人間を愛し生涯を終えることそれらはあ
2023年4月27日 21:24
大粒の雨が降り出した午後こんな再会は誰かの悪意遠慮がちにかけられた声に長すぎた時を思い知る元気?うん親しげに笑ってみてももう他人より遠いその顔に降りかかる雨を拭ってあげることもできないじゃあねじゃあ、また守れない約束が昔から多い人だったもう会うことのない背中最後まで見送りたくなくて前髪から落ちる雫を見ていた
2023年4月26日 02:50
汚れなき心など持ち合わせていないあたしは煩悩の塊怠惰を極めるための計算も自分を良く見せるための装飾も無意識にやってしまう罪悪感を抱く暇も無くそれでもあたしは人畜無害のはず誰も傷付けたくはない誰も貶めたくはない向けられた敵意には応戦しても先に矢を放つことはない全人類とわかり合えるなんて夢物語は信じていないでも分かり合いたいと願う極彩色のシロップの甘さで
2023年4月22日 00:02
笑える間は笑っていよう洗濯してしまったメモ用紙のようにぐちゃぐちゃになった心でもそっとのばして優しくアイロンをかけて消えた文字は忘れればいいたとえそれが大切だった言葉でも最初から何もなかったと思えばいい笑っていよう笑えるうちはパリパリの心を撫でてもう大丈夫って自分におまじないをかけながらそれでもどうしても笑えなくなったら干からびた心をそのまま両手で包みこん
2023年4月19日 22:25
強がったままの午前0時前手を振るように鏡を拭いて今日の私にさようなら言えなかったことも言ってしまったこともキュッキュと拭き取って終わりにしようくもりのとれた鏡の前で古い歌のように笑ってみる魔法が解けた午前0時ぎこちない笑顔と小さく震える唇に忘れたい昨日が映っている
2023年4月14日 20:50
時が乾いた砂のように形なく零れ落ちるものならば逆らうのはもう止めよう目を血走らせ髪を振り乱しても留める術などありはしない記憶が濡れた砂のようにいつまでも纏わり付いても無理に擦り落とさなくてもいい肌が傷付き指先に血が滲めばまた隙間に入り込まれてしまうだけ黒く重く濡れた砂もいつかは乾きサラサラと零れ落ちるものだから剥がれ落ちた記憶はただの過去の欠片のひとつもう探
2023年4月7日 19:52
愛と恋の違いなんて言いたい人に言わせておけばいいそんな定義付けなんて意味の無い言葉遊び顔が見たい声が聞きたいたとえ会えなくなってもどこかで笑っていて欲しいこの想いに他人の付けた名前なんていらない身を焼き尽くす熱は胸の中に柔らかな指先で覆い隠そうそれが愛でも恋でも他の何かでも灰になれば本望躊躇いも後悔もない
2023年4月5日 01:39
桜の下でまた会えたあの校舎は建て替えられ面影も残っていないのに歳を重ねた私たちの距離は今もあの頃のまま震えながら戦ってきた投げ出さず背負ってきた一歩ずつ越えてきた聞かなくても分かる言わなくても分かってくれる過去と現在と未来の話をビュッフェのように味わいながら舞い落ちる花びらに手を伸ばし掴み損ねて笑い合う何者でもなかった私たちは何者でもないままでそれぞれの時を生
2023年4月1日 13:56
久し振りに見上げた空は薄雲が漂う青繰り返す過ちも遠ざかる夢ももうそれでいいのだと赦してくれるような叱責も慰めもなくただ強張る体に染み込むような広くやわらかな青
2023年4月4日 01:22
遠くなる会いたかった人も言いたかった言葉も追いかける情熱はない痛むほどの後悔もないただ捨てきれない過去が薄い膜のように不意に張り付いて息ができないだけ遠ざかる光もう風の音も聞こえない叶わないことばかり漂う海にひとり沈んでいくのは私海底はいつも夜光なんて初めから届きはしない