何のため?
抜き足、差し足、忍び足…
ぬきあし、さしあし、しのびあし…
呪文みたいに唱えながら歩いているこの方たち。
そうです。おふたりさんです。
「何してるの?」
声をかける私にふたりは同じポーズをして
「しーっ!」
………
理由はよくわかりませんが
何やら静かに歩く練習をしているみたいです。
一体なぜそんなことを?
けれどふたりはにこにこするだけで
何も教えてはくれません。
ううむ。気になるなぁ…
それは何のため?
*
その後もふたりは相変わらず練習を続けていました。
静かにそーっと歩く練習は
色んな場所でしているようでした。
例えばこんな所でも…
今日は爪が鋭く尖った彼の前を通る訓練をするといいます。
果たして、寝ている彼を起こさずに
静かに通り過ぎることができるのでしょうか?
抜き足、差し足、忍び足…
ぬきあし、さしあし、しのびあし…
寝起きが悪い彼の目の前を通るなんて
私には怖くて考えられませんが
おふたりさんは真剣そのもの!
なぜそんな危険を冒してまでこんな練習をしているのか?
結局彼は目覚めることなく練習は無事に終わりました。
しかしふたりが練習をする理由は
今もわからないまま…
それは何のため?
*
おや?あんな所にもおふたりさんが。
今日はここで練習するのかな?
ん?これはもしかして…
今まで頑張ってきた練習は、誰にも気づかれずに
お菓子をつまみ食いするための練習だったのね~!
…と思って見ていたのに
おふたりさんはお菓子の方を見向きもせず
そのすぐ横をすーっと通り過ぎて行きました。
あれ?おかしいなぁ。
これも違うっていうんなら、なんであんなに練習を?
うーんやっぱりわからない…
それは何のため?
*
おふたりさん、ついについに
練習の成果を発揮する時がやってきたみたいです!
抜き足、差し足、忍び足…
ぬきあし、さしあし、しのびあし…
えぇ?あ…そういうことだったのかぁ!
本番はね
実はこれだったんです。
ふたりは寝ている赤ちゃんの可愛い顔を
近くで見てみたくて、ずっと練習をしていたのでした。
恐らく自分たちが歩く足音のせいで
眠っているのを起こしてしまったら
可哀想だと思ったのでしょうね。
だからふたりは何度も何度も練習をしました。
うるさくないように。
起こさないように。
すやすやできるように。
「それであんなに…」
これまでのふたりのあの猛特訓は
眠っている君のためだったんだね。
やっと近くで寝顔を見ることができたふたりは
とっても嬉しそうです。
そして、声は出さず優しく語りかけます。
「ま・た・く・る・ね」
こうしてふたりはにこにこしながら
静かに帰っていったのでした。
抜き足、差し足、忍び足…
ぬきあし、さしあし、しのびあし…
*****
最後までお読みいただきありがとうございました。
おふたりさん、とっても嬉しかったみたいですよ。
はぁ~よかったよかった!
恐らく今後は、お菓子のつまみ食いにも
この練習が活きてくることでしょう。笑
おふたりさん
練習お疲れ様でした~。
ではまた。
最後まで読んでいただきありがとうございます🐨! いただいたサポートは創作の為に大切に使わせていただきます🍀