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なぞりのつぼ −140字の小説集−

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読めば読むほど、どんどんツボにハマってく!? ナゾリの息抜き的140字小説を多数収録! ※全編フィクションです。 ※無断利用および転載は原則禁止です。
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#カップル

140字小説【イメチェン】

140字小説【イメチェン】

 久々のデート。だけど気合い入り過ぎて、待ち合わせ場所に早く着いちゃった私。

「ゴメン、遅れた……って、うわっ! きったねぇ〜」
「『汚い』って何よ!? せっかくイメチェンしたのに!! 酷い!!」
「いや、違う違う! 『汚ぇ』じゃなくて『(髪を)切ったねぇ』って! ちょっ、待って――」

140字小説【お熱】

140字小説【お熱】

「ごめん、今日は朝から熱があるみたいだから会えない」
「何を言ってるんだい、君はいつだって僕にお熱だろ?」
「そう思うなら、今すぐ会いに来てくれる?」
「もちろん! 冷めないうちに、君の熱を貰いにいくよ!」

 一週間後……

「ゴホッ、ゴホッ……ごめん、僕は君にお熱みたいだ……」
「あっそう」

140字小説【選択肢(一択)】

140字小説【選択肢(一択)】

 彼女は俺に選択肢というのを与えてくれない。例えばデート先では……

「この赤の服と青の服、どっちが私に似合うと思う?」
「う〜ん、青かな?」
「え〜っ、私は赤だと思う!」
「じゃあ聞くなよ」

 またお家では……

「熱いお茶と冷たいお茶、どっちがいい?」
「淹れながら聞くなよ。あと湯気出てるし」

140字小説【たいせつな話】

140字小説【たいせつな話】

「今日は君に、たいせつな話があるんだ」
「たいせつな話? 何?」
「うん。今度、君を僕の両親に紹介するときに、ちょっと必要なものがあって……」
「必要なもの? お菓子とか、お酒とか?」
「いや、雪かきと防寒具かな。ほら、うちの実家《新潟》だからさ」
「なるほど、それは大雪(たいせつ)だね」

140字小説【罪深き者たち】

140字小説【罪深き者たち】

「あ〜っ、5分遅刻〜! 彼女を待たせるなんて、《遅刻罪》で罰金なんだからね! あとさぁ、見てすぐに気づかない? 私、髪1センチ切ったんですけど〜。気づけなかった君は《気づけなかった罪》で罰金ね! ってか今、他の女の子見てたでしょ! はい《よそ見罪》〜!」
「そういう君は《ウ罪》ね」

140字小説【何が気に入らなかった?】

140字小説【何が気に入らなかった?】

 プロポーズするために、奮発して彼女をオシャレなレストランに誘った。
 だけど料理が届いてまもなく、彼女は鬼の形相で僕の顔面に一杯の水をぶちまけてきた。
 しかも茫然とする僕に「このハエが!」とまで吐き捨てて……

「動かないで! 今叩き潰してやるから!」

 ……トドメに頬をビンタされた。

140字小説【2ミリ】

140字小説【2ミリ】

「あっ」
「あっ」

 ラスト1個の卵焼きに箸を伸ばすと、ちょうど彼氏と箸先同士が触れ合った。
 それが何だか嬉しくて、ここは仲良く半分こしようと箸で切ろうとすると……

「ちょっと待って」

 と、どこからともなくメジャーを取り出してきた彼氏。

「俺の方が2ミリ小さくね?」
「お前の心も小せぇよ」

140字小説【弾ける恋】

140字小説【弾ける恋】

 せっかくの初デートなのにアナタは全然手を繋ごうとしてくれない。
 もしかして緊張してる? そう思いこちらから歩み寄ろうとしても、アナタは避けるように私の前をツカツカと歩く。
 だから思い切ってアナタの袖に手を伸ばし、ようやく掴めたと思ったら。

 ……弾けるように、彼の服が全部脱げた。

140字小説【膝枕=起爆スイッチ】

140字小説【膝枕=起爆スイッチ】

 子どもの頃、父に甘えたくて膝枕してもらったら、父が屁をこいた。

 学生の頃、初めてできた彼氏とのお家デートで彼氏に膝枕してもらったら、彼氏が屁をこいた。

 やがて大人になり結婚した今、夫に膝枕してもらったら、やはり夫も屁をこいた。

 いよいよ私の頭がおかしいんじゃないかと思い始めた。

140字小説【つまりそういう関係】

140字小説【つまりそういう関係】

「もう終わりね、私たち。別れましょう」
「ちょっと待ってくれよ! 俺の何がいけなかったって言うんだ!?」
「アナタとは《うえお》な関係だったのよ!」
「何だよそれ、どういう意味だ!?」
「自分で考えたら?」
「……まさか《愛がない》って言いたいのか?」
「やっぱり《相容れない》わね、私たち」

140字小説【遮光性】

140字小説【遮光性】

 今日は初めて彼氏(吸血鬼)が私の家に来る日。

「お待たせ。はい、どうぞ〜」
「お邪魔しま〜す……ぐぁぁあああっ!?」
「えっ、ウソ!? 十字架なんて置いてないし、ニンニク臭のする料理なんか作ってないし、それにカーテンだってちゃんと閉めたのに!?」
「遮光性がないとダメなんだぁぁぁ!!」

140字小説【ふわふわした気持ち】

140字小説【ふわふわした気持ち】

 大好きな彼女と初めてのキス。それはまるで雲の上まで舞い上がるような、ふわふわとした気分で。
 彼女が今どんな顔をしているのか、どうしても気になり目を開けてみると。
 僕らは抱き合ったままなぜか雲の上にいて、本当にふわふわしていた。

「もう離さないでね」
「君こそ絶対に離さないでね!?」

140字小説【憧れた関係】

140字小説【憧れた関係】

「おい彼氏」
「何だ彼女」
「別に。ただ呼びたかっただけ」

 僕らはその呼び方に憧れていた。
 そしてその憧れは、やがて……

「おい旦那」
「何だ妻よ」
「別に。ただ呼びたかっただけ」

 僕らはようやくそう呼び合える関係になれた。それはこの先も、ずっと――

「おいクソジジイ」
「うるせぇクソババア」

140字小説【こんやくじ】

140字小説【こんやくじ】

「ねぇ、私たち付き合って2年になるし、そろそろあの話を……」
「うん、あとでね。それより今夜9時から見たい番組があるんだ」
「……あっそう、じゃあ婚約時まで見させないから!」

 このあと、ほどなくして僕らは結婚した。
 しかし妻からは、未だにテレビ見たさで結婚の約束をしたと思われている。