短編小説 「お酒の遍歴」
私が初めて、お酒の味を知ったのは、小学生高学年の頃だった。
本格的なお酒ではなく、ウィスキーボンボンのようなチョコの中にお酒が入ったものだった。
「お母さん、これ何?」
と私は母に聞いたのだった。
「私にはまだ早い」
と言われたがどうしても気になった私は、母の目を盗んで、一粒口に放り込んだ。
噛んだ瞬間広がったのは、お酒の風味だった。
母がお酒を飲んだ後によく香っていた匂いだった。
次に特徴的だったのは、その強烈な甘さだった。
甘いものが好きな私でも、歯が溶けるかと思うほどの