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日記と短歌

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その日その日に起こったことや感じたことを短歌一首とともに記します。
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#日記

調子の出ない一週間を生きるためのつくおき [日記と短歌]24,7,22

月曜のベッドの中は圏外でパイナップルを食べたっていい/夏野ネコ 週休二日のお仕事に従事しているので土日は基本お休みです。お休みと言いつつ割とアクティブに遊び回る事も多いので逆に体は休まっていないかもだけど、でも心は回復できていたと思います。今までは。 それがここのところアクティブさが後退してしまい、呆然と休むことが多くなってきています。何をしているのかよくわからない、せめてネトフリで面白いの観るとかなら良いのですがそれもなく、まして本を読むでなく、次の週に向けた買い物や

炊き込みご飯で「今を生きる」を考えた [日記と短歌]23,11,29

見渡せば私の今のことごとく明日に奪い去られる、返せ/夏野ネコ 胚芽押麦を250gに白米135g、この分量で麦7割の麦ごはん3合ぶんになります。そこへ戻した芽ひじきと切り干し大根、適当なキノコ類、人参、油揚げ、あとは生姜ひとかけ、味付けは「ほんだし」とお醤油。炊き上がったら別に茹でておいた大豆を混ぜこんで完成するこれが、私のいつもの炊き込みご飯です。 いったいに私にとって炊き込みご飯というものは効率的な栄養摂取の手段であって、そこに情緒みたいなものは実はあまりありません(

夜明け前の20分が好きで仕方がない [日記と短歌]23,10,15

薄明がためらいがちに切り離す戻らぬ日々はレールのひかり/夏野ネコ   朝型なのかどうかわかりませんが、割と早起きです。まいにち概ね朝の5時半には起きてもそもそと朝食の支度を開始するのですが、調子の良い時はさらに早く、そうですね、4時半くらいには起きだして近所をひと回り、スロージョグとかしていたりします。 ちょうど十月なかばの今の時期、関東地方の夜明けは5時30分前後くらいなのですが、それより前、朝の5時頃、薄明の始まる時刻から20分間くらいの時間がことのほか好きです。

使い慣れたペンみたいになってよUpNote [日記と短歌]23,6,22

キライってノートの走り書きめくる腕には赤く採血の跡/夏野ネコ ノートアプリとしてながらくEvernoteを使っていたのですがこのたびUpNoteに乗り換えました。 きっかけはPCのOSをアップデートした際に一度ログアウトしたEvernoteに再ログインできなかったことで、パスワードがなぜか通らず困ってしまい、でも目の前色々書きたいこともあるし、なので同期している別の端末からノートを一旦サルベージした上でアプリの引っ越しを決めたのでした。さようならEvernote、いまま

私にとって短歌は世界認識のためのインターフェースだった [日記と短歌]23,6,8

境界を吐息でひろげ紫陽花が私の言葉に満ちる六月/夏野ネコ 短歌が今より上手になりたいな、と日頃より思うし、そうなるための心がけめいたことも、まぁ微々たるものですがしているつもりではある。感じ入る歌を読んだ時も、どうして感じるのだろうと、その構造を考えたりもしている。と書いてみるに要するに私はごく普通の歌詠みな訳ですが… でも立ち止まる。上手ってなんだろうかと。 たとえばうたの日に投稿しても評価がさっぱりだったとか、タイムラインの薔薇報告にいいなーと思いつつめちゃくちゃ悔

100文字のレシピでキッチンが少し明るくなった [日記と短歌]23,6,3

混沌に言葉を与え糧とする世界の交差点たるキッチン/夏野ネコ 料理は、まぁ好きな方です。 でもそれは趣味的なものではまったくなく、生きるためのスキルであって、むしろ混沌に対する日々の戦いの中で自然と身につけたものだから、雑多な冷蔵庫の中のものが一皿に収斂していくプロセスと、それつまりレシピを意図して生み出した先人たちには驚異を覚えます。 川津幸子さんの名著(だと思いますよ!)「100文字レシピ」をパラパラ読んで、気になったものを作るのが好きです。 もう20年以上も前に書か

イオンとすかいらーくの緩いデストピアにぼくらは幸せに暮らしている [日記と短歌]23,5,2

この街のかなしき種子の運び屋のぼくは遠くの街で樹になる/夏野ネコ 久しぶりに会って他愛なく近況を語り合おう、コロナもおさまってきたし、ということで友達の住む街へ遊びに行きました。 駅前の商業施設を中心に開発された街です。ど真ん中にイオン、周囲をチェーンの外食が固めており、街から一歩も外に出なくても快適に暮らせそうで、正直このままスペースコロニーとかになってもいいのでは?くらい完結した世界に見えた。 そんな世界の中心イオンでワインとチーズとサラダを、イオンが手がけるカルディ

うたは読まれてこそ完成するのかも [日記と短歌]23,4,26

海だねと喩うネットにそれぞれの太陽をもつ歌の島々/夏野ネコ 少し暮らしが落ち着いてきて、ゆっくり本を読んだりもできるようになりましたので、名著と名高い玉城徹さんの「茂吉の方法」を最近ちょっとずつ読んでいます。 短歌を作る方には釈迦に説法ではありますが、斎藤茂吉の作品より133首を取り上げつつ、作者の思いやその時々の境遇、作歌背景などをほとんど考慮「せず」、ただ歌のありようを俎上にあげ批評していく、非常にストロングスタイルな本です。 たとえば作者が初出の出来を嫌ってか後

もやもやした時はSNSを少し離れるね [日記と短歌]23,4,22

彼なりの正しさのなか100文字目さいしょの蝉が今年も鳴いた/夏野ネコ アンガーマネジメントについて、私がふだん気をつけていることがふたつあります。 1)怒りとは「自分が正しい」という思い込み、の意識 2)やばい状態になったら「その場を離れる」 ひとつめ。 私自身仕事柄いろんなアイデアを出したり実行したりする機会が多いので、人の話を聞き、過去の事例を見、そこから掛け合わせで膨らませていくプロセスのためにも、自分のアイデア/ロジック、ひいては「正しさ」に固執するのは悪手な

川は平和、川は自由、川が好きだ [日記と短歌]23,3,7

ランナーが手を振り返し爺さんの自転車を抜く土手には桜/夏野ネコ わが家から徒歩15分ほどのところにまぁまぁ大きな川ありまして、その河原と土手がすこぶる好きなんですよね。 土手には広めのサイクリングロードが通っており、ロードバイクの人、ゆったりポタリングの人、ランニングの人、犬と散歩する人などが思い思いに行き交っています。河川敷に目を転ずれば少年野球に草野球、サッカー、ゲートボール、フリスビー、ピクニックする家族、あっちでは楽器の練習、こっちではスケボー、向こうでは釣り、は

はじめての「いつごつみ」が尊かった [日記と短歌]23,3,5

傘の先まで届かずに告白が滲んでしまう雨の行間/夏野ネコ はじめて「いつごつみ」をやりまして、それが大変に感動的だったので書きます。 短歌の方には釈迦に説法ではありますが、いつごつみ、とは歌の中の「一語」を拾い次の歌に詠み込むのを二人交互に繰り返す、短歌界隈でよく行われているゲームのような作歌方法で、「一語」を「摘む」から「いちごつみ」なんですね。 アカウントを作って最初の頃はこの風習をよく知らず、TLに流れてくる 「いちごつみどなたかしませんか〜?」「ごめんなさい締め切

アルコホリックは匂いで記憶を取り戻す [日記と短歌]23,2,13

あの夏の濡れたアスファルトの匂いだけが僕らを繋いでくれる/夏野ネコ 短期記憶が最近どうも、思わしくない時がある。もちろん原因はわかっていて、多忙による疲れを軽減させる名目でのアルコール摂取とそれに伴う睡眠時間の減少、による疲労、という負のスパイラルなので、アルコールを控えてしっかり睡眠をとれば記憶力もバッチリ、パフォーマンスも気持ちよく上がるわけです。原理的に。 でも、頭と身体とが疲れ果て、お風呂で寝落ちして、夜中の寝入りに缶チューハイなどを開け、何もかも放り出すように

400字くらいの話を書くと一首詠めると気づいた [日記と短歌]23,2,9

首都高に流れるひかり How to が汚した恋の知らぬ行き先/夏野ネコ noteに来て面白いなぁと思ったのは、日々書き続ける仕組みが行き届いて、書く、発表する、のサイクルを楽しめるようかなり入念に設計されている点で、文章書きがどうやら苦手でなかったらしい私は、だから日記みたいなエッセイみたいな雑文を数日おきにアップする習慣を手に入れてしまった。 その日記を元に短歌を一首したためているのだけど、「ある程度の長さの文にして景を記していくと歌の解像度が上がっていく」というのは

誰かを迎えにいく道の、かけがえのなさ [日記と短歌]23,2,1

手を振って大きく歩く晴れた日はすべての道が君に通じる/夏野ネコ 「一番好きな道は、帰り道です。」という広告のコピーがありました。確か三井かどこかの不動産デベロッパーのコマーシャルだったように思います。家族の待つ家に帰る道が好き。とても素敵な世界観ですよね。 その先に待っている誰かに通じている道は、歩いているだけで特別になる。私の場合「誰かを迎えにいく道のり」がとても好きです。 ちょうど先日、人を迎えに行く機会があって市の中心部まで散歩がてら5キロほどを歩きました。電車で