夏野ネコ

何者でもないひとが短歌をつくっています。Twitter(と言い続けるのも意固地な気がしてきた)が主な活動場所ですが、ここではつくった短歌をまとめたり、それについて文章を書いたりします。

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マガジン

  • 日記と短歌

    その日その日に起こったことや感じたことを短歌一首とともに記します。

  • 連作短歌

    連作、というほど大げさなものではありませんが、連なりの中で表現したものたち。だいたい思い立って一気につくります。

  • 月々のうた

    毎月つくった自選短歌をピックアップしてまとめています。

  • Re : 散文夢

    夜と朝のはざまにある「あっち側の私」の体験を「こっち側の私」が記述する、ごく個人的なマジックリアリズムの記録です。

  • 写真と短歌

    ひょんなことからやってきたGR Digitalというオールドコンデジで日常の写真を撮りながら短歌詠んだりします

最近の記事

短歌と私と「私」の貌と〜日本現代美術私観を見て[日記と短歌]24,11,15

おしよせるイマを薄目でやり過ごす踊るならでもこの手を取って/夏野ネコ   もうすっかり会期は過ぎてしまったのですが、東京都現代美術館で行われていた展覧会「日本現代美術私観」を見てきて、そしたら短歌について考えてしまった、って話です。 この展覧会は高橋龍太郎という精神科医の個人コレクションで、1960年代から現代に至るまでの日本の現代アートを、n=1の単眼的「私」視点であるからこそ、表現者である「私」たちの連なりが、時代性とともに1本の線として俯瞰できる。と、そのような道

    • 8首連作短歌:父を送る

      ラジオよりデスペラードの流れをり瞼は父を夏に閉じ込め 帰宅せし動かぬひとの白きかお撮りて見もせず削除もできず 抱き締めていいかわからず頬骨を指でなぞれば日々と日々、日々 保険より服だったんだあのひとの背広が次から次と出てくる シャンとしたひとだったよね、叔母さんの言葉で着せた最期のスーツ こんなにも話しかけたことはなかった返る言葉もないというのに もう食えぬ人をば送るサラチキを齧るごめんよ腹が減るんだ ああ寝てる寝てるラジオをつけたまま知らんぷりする目覚めない

      • 月々のうた:2024年10月

        寝息には甘さがあって部屋の中いくつも浮かぶきみのマシュマロ ご利用が計画的でつまらないひとと海など一緒に行くか 木犀をあびては愛の集積を放つラブホの室外機たち 真夜中の平行世界くちびるが他のあなたを感じとったら 傷ついたダイヤを融かす温度帯あなたを迎え容れては腐敗 だいたい1ヶ月で30首、というのがざっくりの発表ペースであるらしい夏野です。 作る方で言うと突如的にアップするsuiu、ネプリ企画への参加、noteの短歌日記、いちごつみ、実は一番多いと思われる出すアテ

        • 次々と殖えていくゴーヤとつきあった夏のこと[日記と短歌]24,11,6

          まだ夏の亡者と暮らす冷え冷えと他人行儀なゴーヤを割りて/夏野ネコ   ちかごろは本格的に涼しくなって世間も秋の装いですが、いまだ来たるべき寒さに対する心の準備ができていないので夏の思い出話をします。 この夏、ゴーヤが次々とやってきました。 むろん彼らに足があるわけではないので要するに貰いものです。 知人からある日貰った1本の小ぶりなゴーヤ。 「余ってるからあげる」、と。そうして少し苦笑いしながら 「たくさんあるんだよーもう」とも。 グリーンカーテンで植えていたのか、家

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        記事

          硬質に、エキゾチックに、座右の銘が決まった話[日記と短歌]24,10,30

          傷ついたダイヤを融かす温度帯あなたを迎え容れては腐敗/夏野ネコ ある日のこと、私の歌や文章のことを「硬質寄りなエキゾチックな雰囲気」と評して下さった方がいました。眞木環さん ( @_mk_tmk )です。 どうしてか伝わらなかった(と思われていた)私自身の歌についてフォロワーの皆さんに教えを乞うた、という文脈の中でのお話ですが、その言葉の質感にもう瞬間、心が捕らわれてしまいました。ユリーーーーカと叫びたいくらいでした。 そうか、私の書くものは「硬質寄りエキゾチック」な

          硬質に、エキゾチックに、座右の銘が決まった話[日記と短歌]24,10,30

          10月の海へ行き、ただなにもせず帰った[日記と短歌]24,10,26

          重たさをあずけ続けて人間は海の翼を奪っていった/夏野ネコ タイトル通りです。 10月の海に行きました。 私の暮らしている街はいちおう海に面しており、港町の側面もあるのですが、一方で海岸沿いの多くは倉庫街になってもいるので「海の街」という自覚はほとんどありません。 でも一か所だけ「海だなー」という海岸があります。シーズンには潮干狩りでやたらと混雑するのですが、シーズンオフは静かでいいところ。 家からなんとなく歩いてざっくり1時間半くらい(結構遠い)なのですが、たっぷり歩き

          10月の海へ行き、ただなにもせず帰った[日記と短歌]24,10,26

          皇居ランナーデビューを果たしました![日記と短歌]24,10,21

          足音の似たひとばかり焼き付いた走るあなたが薄れるにつれ/夏野ネコ 体力づくりや気晴らしも兼ねてぼちぼちジョギングをしている私なのですが、先日ついに皇居デビューを果たしました! 皇居、 いつの間にやらランナーの聖地的扱いになった場所ですが意外とその歴史は古くって、なんでも前回の東京オリンピック(1964年!)に遡るそうです。 でも体感的にはここ10年くらいでしょうか。特にメディアに取り上げられたりしてブームになったのは。 まぁいずれにせよ聖地です。ええもうオシャレなラン

          皇居ランナーデビューを果たしました![日記と短歌]24,10,21

          大河の支流のその隅で

          ゆっくりと船はいく。 その船には航路も時刻表もなく、川に住む者なら求めれば誰でも乗せる。 小さな村もくまなく回る。 だが定期汽船の停泊する町ならいざ知らず、多くの村には艀のような気の利いたものはない。だから乗客はたっぷり百フィートほどを泳いで船へと渡らなくてはならない。 そもそもこの図体だけはでかい船に繊細な接岸の操船などできないし、やろうとしたら川縁の小さな家々を壊してしまうだろう。航海長は誇り高い戦士の血を引く男だが、できないものはできないのだ。 それに求められてい

          大河の支流のその隅で

          月々のうた:2024年9月

          空が死を選んだような夕焼けのすべて欲しくて硝子を砕く うたた寝を共にした時すこしだけ交換される未来すぐ来い さみしさを静かに描く夏空に飛行機雲は秋の補助線 夜は秋きみの手にもう汗はなくやがていつかの花火の熱さ 世界史は東武ワールドスクエアに降る雨でその穢れを落とす 9月が過ぎました。薔薇をひとつ、またいただけてよかったなって9月でしたがこれを書いているのは10月10日。はやくも月の初旬を過ぎてしまった。 暑さ寒さも彼岸まで とは本当によく言ったもので、お盆に続い

          月々のうた:2024年9月

          いなくなってしまった凄いレジのおばさん[日記と短歌]24,10,1

          かなしみが20円ぶん乗っていて20円安くなる大根/夏野ネコ スーパーマーケットを選ぶ際、価格や品揃え、立地などと並んで「レジのひとの能力」も割と重要じゃないかな、と思っています。 そのレジスキルで凄いおばさんが近所の地元系ストアにおり、ほどよく良心的な生鮮の品揃えもあって、私は優先的にそのお店を利用していました。 世の趨勢はセルフレジですが、おそらくそのストアにはそこまで投資を回す余裕がなかったのでしょう、パートの方たちが相変わらず手打ちで頑張っていました。 中でも彼

          いなくなってしまった凄いレジのおばさん[日記と短歌]24,10,1

          連続短歌:エモーショナル禁止令、のときの3首です

          2024年の夏、エモーショナル禁止令のハッシュタグとともにリリースされたネプリに参加しました。 総勢88名、とにかく大勢の方のエモ禁短歌が読めるというすごいたくらみでしたよね。 そのエモーショナル禁止令、既に出力期日もだいぶ過ぎたところで夏野の3首をおさらいする次第です。 エモ禁と一言で言っていますが「何をエモと捉えるか」については各人でフォーカスするポイントが違います。その様々なアプローチが楽しい。私はこんな感じでエモを解釈して臨みました。 んで、以下の3首ですね。 ま

          連続短歌:エモーショナル禁止令、のときの3首です

          ほぼ完全麦食となった昨今の私について[日記と短歌]24,9,16

          大麦を鍋に一合さざ波と聴こえて凪を待ちわびるなり/夏野ネコ この夏日本を襲った令和の米騒動ですが、すでに新米も出回りはじめたものの需給バランスの関係か価格は少々お高めです。 もともと私は白米をそのまま炊いて食すことは少なく、ストック用に炊くにあたっても米3:麦7の麦ごはんなので、主食における米消費率自体がそもそも高くありませんでした。 なので改めて「私にとって君は必要なのだろうか」「本当に君じゃなきゃダメなのか」と、新米の幟のもとに鎮座する高価な白米さんと対峙して思う

          ほぼ完全麦食となった昨今の私について[日記と短歌]24,9,16

          足音の来し夕べを忘れ得ずひかりをためるネコジャラシたち

          写真と短歌(5) 足音の来し夕べを忘れ得ず ひかりをためるネコジャラシたち 人類が滅んだような 午後の終わり 最後のセミが鳴いて もうここには来ない靴音を 確かに聞いたんだ 遠い遠い熱帯に生まれた ゆるやかな風が 落とし物ひろうみたいに 夕焼けの粒のなかへ音は 彼らも聞いたろうか

          足音の来し夕べを忘れ得ずひかりをためるネコジャラシたち

          早寝癖のせいでやらかした[日記と短歌]24,9,09

          うたた寝を共にした時すこしだけ交換される未来すぐ来い/夏野ネコ 先日、LINEオープンチャットでの歌会に参加したのですが、遅刻した上に速攻で寝落ちしてしまい事実上ほとんど会話に参加できなかった、というやらかしをしてしまいました。 その日は早朝から外出の予定があり、帰ってきたのがちょうど歌会開始の21時、で手早くシャワーを浴びて軽くお腹になんか入れて、念の為(なんのだ)レモンサワー1缶を用意して21時半ごろにチャットへ入りました。 とここまでは良いのですが、ハタと気づくと

          早寝癖のせいでやらかした[日記と短歌]24,9,09

          月々のうた:2024年8月

          君という石に幾重と滲みゆく水よりのぼり立つ夏の雲 解体のだいぶ進んだ銭湯の富士にはじめて雲がたなびく まだ夢を抱きしめている銀紙に香るわずかなカカオみたいに 白の海つめたい方へ寄り添って不在を暖めたらまた戻る チェキ色にぼくら夏へと固着してその他の夏はただ蝉の声 8月が終わりました。 終わりゆく夏に向かってたくさん詠むぞー!と言ってはみたものの全然数は作れませんでした。でもだからと言って無為な1ヶ月だったか、というとそうでもなく、ただもう早く過ぎ去ってしまっただけ

          月々のうた:2024年8月

          北原白秋の家に遭遇した[日記と短歌]24,8,26

          足音は月より来たりただいまと言うがごとくに屋根を照らせば/夏野ネコ 私は歩くことが好きで、10キロくらいなら普通に歩いてしまうから、休日の散歩などでもけっこうな距離になったりします。 この日はウォーク&ジョグで気ままにテトテト回っていました。 熱暑も一息ついた朝方は思いのほか涼しく、お、これはいけるぞと軽快に進んでいたものの気温はグングン上昇し、携えたペットボトルの水も尽きた所で途中の公園に寄り道して水を補給しました。 で、そこにあったわけですよ。北原白秋の家が保存さ

          北原白秋の家に遭遇した[日記と短歌]24,8,26