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日記と短歌

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その日その日に起こったことや感じたことを短歌一首とともに記します。
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記事一覧

短歌と私と「私」の貌と〜日本現代美術私観を見て[日記と短歌]24,11,15

おしよせるイマを薄目でやり過ごす踊るならでもこの手を取って/夏野ネコ   もうすっかり会期は過ぎてしまったのですが、東京都現代美術館で行われていた展覧会「日本現代美術私観」を見てきて、そしたら短歌について考えてしまった、って話です。 この展覧会は高橋龍太郎という精神科医の個人コレクションで、1960年代から現代に至るまでの日本の現代アートを、n=1の単眼的「私」視点であるからこそ、表現者である「私」たちの連なりが、時代性とともに1本の線として俯瞰できる。と、そのような道

次々と殖えていくゴーヤとつきあった夏のこと[日記と短歌]24,11,6

まだ夏の亡者と暮らす冷え冷えと他人行儀なゴーヤを割りて/夏野ネコ   ちかごろは本格的に涼しくなって世間も秋の装いですが、いまだ来たるべき寒さに対する心の準備ができていないので夏の思い出話をします。 この夏、ゴーヤが次々とやってきました。 むろん彼らに足があるわけではないので要するに貰いものです。 知人からある日貰った1本の小ぶりなゴーヤ。 「余ってるからあげる」、と。そうして少し苦笑いしながら 「たくさんあるんだよーもう」とも。 グリーンカーテンで植えていたのか、家

硬質に、エキゾチックに、座右の銘が決まった話[日記と短歌]24,10,30

傷ついたダイヤを融かす温度帯あなたを迎え容れては腐敗/夏野ネコ ある日のこと、私の歌や文章のことを「硬質寄りなエキゾチックな雰囲気」と評して下さった方がいました。眞木環さん ( @_mk_tmk )です。 どうしてか伝わらなかった(と思われていた)私自身の歌についてフォロワーの皆さんに教えを乞うた、という文脈の中でのお話ですが、その言葉の質感にもう瞬間、心が捕らわれてしまいました。ユリーーーーカと叫びたいくらいでした。 そうか、私の書くものは「硬質寄りエキゾチック」な

10月の海へ行き、ただなにもせず帰った[日記と短歌]24,10,26

重たさをあずけ続けて人間は海の翼を奪っていった/夏野ネコ タイトル通りです。 10月の海に行きました。 私の暮らしている街はいちおう海に面しており、港町の側面もあるのですが、一方で海岸沿いの多くは倉庫街になってもいるので「海の街」という自覚はほとんどありません。 でも一か所だけ「海だなー」という海岸があります。シーズンには潮干狩りでやたらと混雑するのですが、シーズンオフは静かでいいところ。 家からなんとなく歩いてざっくり1時間半くらい(結構遠い)なのですが、たっぷり歩き

皇居ランナーデビューを果たしました![日記と短歌]24,10,21

足音の似たひとばかり焼き付いた走るあなたが薄れるにつれ/夏野ネコ 体力づくりや気晴らしも兼ねてぼちぼちジョギングをしている私なのですが、先日ついに皇居デビューを果たしました! 皇居、 いつの間にやらランナーの聖地的扱いになった場所ですが意外とその歴史は古くって、なんでも前回の東京オリンピック(1964年!)に遡るそうです。 でも体感的にはここ10年くらいでしょうか。特にメディアに取り上げられたりしてブームになったのは。 まぁいずれにせよ聖地です。ええもうオシャレなラン

いなくなってしまった凄いレジのおばさん[日記と短歌]24,10,1

かなしみが20円ぶん乗っていて20円安くなる大根/夏野ネコ スーパーマーケットを選ぶ際、価格や品揃え、立地などと並んで「レジのひとの能力」も割と重要じゃないかな、と思っています。 そのレジスキルで凄いおばさんが近所の地元系ストアにおり、ほどよく良心的な生鮮の品揃えもあって、私は優先的にそのお店を利用していました。 世の趨勢はセルフレジですが、おそらくそのストアにはそこまで投資を回す余裕がなかったのでしょう、パートの方たちが相変わらず手打ちで頑張っていました。 中でも彼

ほぼ完全麦食となった昨今の私について[日記と短歌]24,9,16

大麦を鍋に一合さざ波と聴こえて凪を待ちわびるなり/夏野ネコ この夏日本を襲った令和の米騒動ですが、すでに新米も出回りはじめたものの需給バランスの関係か価格は少々お高めです。 もともと私は白米をそのまま炊いて食すことは少なく、ストック用に炊くにあたっても米3:麦7の麦ごはんなので、主食における米消費率自体がそもそも高くありませんでした。 なので改めて「私にとって君は必要なのだろうか」「本当に君じゃなきゃダメなのか」と、新米の幟のもとに鎮座する高価な白米さんと対峙して思う

早寝癖のせいでやらかした[日記と短歌]24,9,09

うたた寝を共にした時すこしだけ交換される未来すぐ来い/夏野ネコ 先日、LINEオープンチャットでの歌会に参加したのですが、遅刻した上に速攻で寝落ちしてしまい事実上ほとんど会話に参加できなかった、というやらかしをしてしまいました。 その日は早朝から外出の予定があり、帰ってきたのがちょうど歌会開始の21時、で手早くシャワーを浴びて軽くお腹になんか入れて、念の為(なんのだ)レモンサワー1缶を用意して21時半ごろにチャットへ入りました。 とここまでは良いのですが、ハタと気づくと

北原白秋の家に遭遇した[日記と短歌]24,8,26

足音は月より来たりただいまと言うがごとくに屋根を照らせば/夏野ネコ 私は歩くことが好きで、10キロくらいなら普通に歩いてしまうから、休日の散歩などでもけっこうな距離になったりします。 この日はウォーク&ジョグで気ままにテトテト回っていました。 熱暑も一息ついた朝方は思いのほか涼しく、お、これはいけるぞと軽快に進んでいたものの気温はグングン上昇し、携えたペットボトルの水も尽きた所で途中の公園に寄り道して水を補給しました。 で、そこにあったわけですよ。北原白秋の家が保存さ

秘伝のタレを作ると料理が捗るよ[日記と短歌]24,8,21

果たせない約束だから簡単に破らないまず米を炊きます/夏野ネコ 料理は効率的な栄養摂取の手段、なーんて嘯いている私ですが、振り返るに食べ物や料理にまつわる日記が多いんですよね、ははは、ひねくれているな! 少し前に「二段熟成仕込み」なる強そうなお醤油をいただきました。 これがけっこうな濃い味なので主として煮物に使っていたのですが、いかんせん用途が限られるので鮮度のあるうちに使い切れません。 なのでその子をベースに久々に秘伝のタレを作ったのでした。 と言っても簡単なもので、

お盆の類型的風景に泣きそうになった[日記と短歌]24,8,14

君という石に幾重と滲みゆく水よりのぼり立つ夏の雲/夏野ネコ ひさしぶりにお盆に帰省をしました。 わたしの郷里は内陸の山の中にあって、日本各地と最高気温を競っているような町なのですが、ゆえにこそ最高気温がその名のごとく最高潮に達するお盆のころにはぜんぜん帰省をしていませんでした。 だってまあ暑い、本当に暑い。 ああでもこんな感じだったな、と、お盆を迎えた郷里に久々降りたって思います。 ふんわりと香ってくるお線香の匂い、蝉時雨、ばかみたいに青い空と入道雲、どこからか聞こえ

少しずつ遅くなってゆく8月の朝を愛でる[日記と短歌]24,8,12

気づかれぬよう愛しあう時をまた伸ばして青い八月の朝/夏野ネコ 夏至からはや1ヶ月半、いやもっとか。 8月は、始まった瞬間から終わりが定められているような切ない月です。この暑いさなかにほんのりと涼しい空気が混じる8月特有の瞬間が、だから愛おしくも寂しい。 如実にわかってしまうのは朝の遅さです。 私は毎朝5時には起床するので日々少しずつ朝が削られていくのをリアルタイムで眺めています。 夏至の頃は、5時といえばすでに日が昇っていたのですが、8月に入りお盆シーズンの最近では、

長くなりたがる文章を飼い慣らしたい[日記と短歌]24,8,8

雄弁をなつかしむよう金色の夕陽は君の手紙へと降る/夏野ネコ 身辺雑記に短歌をつけるnoteを書き始めて、もう1年と9ヶ月がたちました。そっかもうそんなになるのか、と改めて最初の頃のnoteを読んでみたのですが、短いんですよね全般的に。 翻って最近はというと長文傾向に加えて更新も少ないので、うーん、これはちょっと意識して改めた方が良いかもしれないと思いました。 いったいに文章というやつは、特に書くことに慣れるに従って長くなりたがるんですよね、私の場合かもですが。 なんだ

熱中症に気をつけないとね!な真夏のジョギング記[日記と短歌]24,8,5

夏雲が陽を遮った数秒のエンドロールを君に見ている/夏野ネコ 仕事とストレスとアルコールで雑巾みたいになりながら終電で家へと帰った土曜日でした。 このままだと本格的に何も成し遂げない休日になりそうだったので、む、これはやばいと心を入れ替えて熱暑のさなかジョギングを敢行したら、熱中症、とはいかないまでも予想を超えて疲れ果てたという情けない話です。 もともと体を動かすのは好きで、平日毎朝のプチ筋トレも欠かしません(たまに欠かします)し、ぼちぼちジョギングもしています(まぁまぁ