100文字のレシピでキッチンが少し明るくなった [日記と短歌]23,6,3
混沌に言葉を与え糧とする世界の交差点たるキッチン/夏野ネコ
料理は、まぁ好きな方です。
でもそれは趣味的なものではまったくなく、生きるためのスキルであって、むしろ混沌に対する日々の戦いの中で自然と身につけたものだから、雑多な冷蔵庫の中のものが一皿に収斂していくプロセスと、それを生み出した先人たちに驚異を覚えます。
川津幸子さんの名著(だと思いますよ!)「100文字レシピ」をパラパラ読んで、気になったものを作るのが好きです。
もう20年以上も前に書かれたみたいですが、レシピサイトの隆盛もTwitterもバズレシピ的文化もない頃に、シンプルに端的に、普段が少し素敵になりそうな料理を100文字で表現していたんですよね、凄すぎる。例えばこんな具合です。
ちょっと作りたくなってきませんか?
感情を沸かせるのが文章の力だとすれば、この「ちょっと作りたくなってくる」感情を沸かせるレシピの文字列も同じで、たった100文字ではありますが、この本のレシピはどこか品があって好きなのです。
正確なのだけど余白があって、作り手を信頼して書いているはずだし、そうでないと100文字に収めるなんて無理なんだと思う。だから、このレシピを読んでそれを作るのは、川津さんと作り手のコール&レスポンスなんだよな、と思いました。
予感を読者から引き出し、なおかつ作らせてしまった時点で著者である川津さんの圧勝。同時に私も楽しんで作っています。100文字レシピをいくつ自分のものにできるのか…そんな収集欲みたいなものも掘り起こされてしまったし、100文字のシンプルなレシピをいくつか自分にストックしておくことで情報の掴み方まで変わってくる。その時点で料理が作業から創造に、もうシフトしているんですよね。
うーん、そう思うとやっぱり料理は趣味かもしれない。