10月の海へ行き、ただなにもせず帰った[日記と短歌]24,10,26
重たさをあずけ続けて人間は海の翼を奪っていった/夏野ネコ
タイトル通りです。
10月の海に行きました。
私の暮らしている街はいちおう海に面しており、港町の側面もあるのですが、一方で海岸沿いの多くは倉庫街になってもいるので「海の街」という自覚はほとんどありません。
でも一か所だけ「海だなー」という海岸があります。シーズンには潮干狩りでやたらと混雑するのですが、シーズンオフは静かでいいところ。
家からなんとなく歩いてざっくり1時間半くらい(結構遠い)なのですが、たっぷり歩きたい気分だったので歩いてきました。
まぁね、基本なんにもない。
浅い海がただ沖までずっと広がって、東京湾の奥のごちゃっとした遠景に時折、飛行機が飛んでいく。
この時間は引き潮らしく、波打ち際はだいぶに遠くへ行ってしまい、足元は波型にレリーフされた砂地が広がっています。
そこに小さな小さな砂団子がびっしりと延々あって、どうやらこれはカニたちの食事の痕跡らしい。砂の中のプランクトンを濾しとって食べている、とどこかで聞きました。
そんなわけでのどかです。
コンビニでビールでも買って潮風に当たりながら飲みたいな、と思うものの、帰りもたっぷり歩くことになるので諦めました。
色々とうまくいかなかったり心が窪んでしまった時に、なぜか人は海を見たがるのですが、まぁ確かにな、って思う。
海の大きさに比べて人間の小ささなんて、みたいな分かりやすい感慨はないのだけれど、この広大さに心すくわれる瞬間は確かにあって、それで多少は生き延びられる気がするし、生き延びよう、と思いました。
カニも生きているのだし。
そんな秋の海のこと。