従業員が辞める理由
従業員が辞める理由はいろいろとある。
人間関係が悪い、給料が低い、キャリアが築けない……、さまざまだ。ブラック企業はもってのほかだけど、ホワイト企業でも「このままではダメになる」と将来への危機感を感じて辞める人もいる。
㈱マイナビ「転職動向調査2024年版」の結果もそれを物語っている。1番多い「給与が低い」という理由でも11.5%しかない。全部足しても50%に満たない。本当にさまざまだと思う。
ちなみに、私も転職活動をしている。きっかけは経営陣との「倫理観の相違」だ。「価値観」は、そもそも大なり小なり違うという前提をもっていて、そこまで気にならない。だが、「人としてどうか」という倫理観の相違は、従業員が不幸になり、一緒に未来をつくりたくは無いと感じさせるものだった。
さて、人事総務としては、従業員の退職は大きな課題である。最近では人手不足の影響もあり、やれエンゲージメントだ、やれ待遇改善だと離職を防ごうと対策を立てている。もはや、人に選ばれない組織は存続できないと言われている。あなたの組織でも、そういった取り組みをしているのではないだろうか。
いったい、従業員は何故辞めるのか。
最近、理由は1つに帰結していると感じている。
「人間関係が悪く、ここで働いていると心身の健康を保てない」
「給料が安く、上がらず、生活が向上するイメージがもてない」
「同じことの繰り返しで、成長ができない」
「あぁ、未来が見えなくなったんだなぁ」と思った。
全部「未来への希望がもてない」ということに集約されると思う。
実際に退職者インタビューをして、会社の将来が不安という理由で辞めていく人もいた。しかし、こんなにも「未来」が重要なキーワードだとは思っていなかった。
人間関係改善のために飲み会を、社長との座談会を、資格取得支援を……。いろいろな施策が一気に色褪せた。私は、わかっていなかった。軸とするべきは「未来」だったのだ。
今日を耐えた人が目の前にいる。今日は耐えられたのだ。それが明日は、1年後は、10年後は耐えられない。希望がない。
頑張ったやつが報われる、人の尊厳を踏みにじる人は罰を受ける、あの人のようになりたい。ここで将来のイメージができる、未来をつくっていきたい、そう感じさせる「何か」が要るのだ。
自分自身でやりたいことが明確になり、辞めていくことは仕方ない。喜ばしいことでもある。しかし、縁あって出会った従業員が「未来がない」と辞めていくのは、恥ずべきことだと思う。
理念に嘘をつく、ルール破りをほったらかす、協力すべき責務を放棄する、迷走だと感じる朝令暮改、上がらない給料、変化できない閉塞感……。そんなことを改善せずに、「ほら、飲み会を推奨するいい会社でしょ」「従業員の話を聞く、いい社長でしょ」「我が社は資格取得を奨励します」では芯を喰わない。
従業員が辞める理由は「未来がない」だ。そして、組織にも未来は必要である。「未来」を軸にする。結果として同じような施策になるかもしれないけれど、芯が違う。
リーダーシップの透明性、成長を支援する人事評価、成果に注力できる規範の整備……。
未来を語る。そして語れる。朝令暮改でも進んでいる行先はわかる。見えない未来が、ちゃんと在るのだと感じさせる。そんな「何か」にアプローチしていきたい。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
足跡を残していただければ幸いです。