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従業員が辞める理由

 従業員が辞める理由はいろいろとある。

 人間関係が悪い、給料が低い、キャリアが築けない……、さまざまだ。ブラック企業はもってのほかだけど、ホワイト企業でも「このままではダメになる」と将来への危機感を感じて辞める人もいる。

 ㈱マイナビ「転職動向調査2024年版」の結果もそれを物語っている。1番多い「給与が低い」という理由でも11.5%しかない。全部足しても50%に満たない。本当にさまざまだと思う。

転職理由
給与が低かった・・・・11.5%
職場の人間関係が悪かった・・・9.1%
会社の将来性、安定性に不安があった・・・8.0%
仕事内容に不満があった・・・7.0%
休日や残業時間などの待遇に不満があった・・・5.2%
会社倒産やリストラ・ハラスメント等の非自発的理由があった・・4.7%

株式会社マイナビ 転職動向調査2024年版

 ちなみに、私も転職活動をしている。きっかけは経営陣との「倫理観の相違」だ。「価値観」は、そもそも大なり小なり違うという前提をもっていて、そこまで気にならない。だが、「人としてどうか」という倫理観の相違は、従業員が不幸になり、一緒に未来をつくりたくは無いと感じさせるものだった。

 さて、人事総務としては、従業員の退職は大きな課題である。最近では人手不足の影響もあり、やれエンゲージメントだ、やれ待遇改善だと離職を防ごうと対策を立てている。もはや、人に選ばれない組織は存続できないと言われている。あなたの組織でも、そういった取り組みをしているのではないだろうか。

 いったい、従業員は何故辞めるのか。
最近、理由は1つに帰結していると感じている。
「人間関係が悪く、ここで働いていると心身の健康を保てない」
「給料が安く、上がらず、生活が向上するイメージがもてない」
「同じことの繰り返しで、成長ができない」

「あぁ、未来が見えなくなったんだなぁ」と思った。
全部「未来への希望がもてない」ということに集約されると思う。

 実際に退職者インタビューをして、会社の将来が不安という理由で辞めていく人もいた。しかし、こんなにも「未来」が重要なキーワードだとは思っていなかった。

 人間関係改善のために飲み会を、社長との座談会を、資格取得支援を……。いろいろな施策が一気に色褪せた。私は、わかっていなかった。軸とするべきは「未来」だったのだ。

 今日を耐えた人が目の前にいる。今日は耐えられたのだ。それが明日は、1年後は、10年後は耐えられない。希望がない。

 頑張ったやつが報われる、人の尊厳を踏みにじる人は罰を受ける、あの人のようになりたい。ここで将来のイメージができる、未来をつくっていきたい、そう感じさせる「何か」が要るのだ。

 自分自身でやりたいことが明確になり、辞めていくことは仕方ない。喜ばしいことでもある。しかし、縁あって出会った従業員が「未来がない」と辞めていくのは、恥ずべきことだと思う。

 理念に嘘をつく、ルール破りをほったらかす、協力すべき責務を放棄する、迷走だと感じる朝令暮改、上がらない給料、変化できない閉塞感……。そんなことを改善せずに、「ほら、飲み会を推奨するいい会社でしょ」「従業員の話を聞く、いい社長でしょ」「我が社は資格取得を奨励します」では芯を喰わない。

 従業員が辞める理由は「未来がない」だ。そして、組織にも未来は必要である。「未来」を軸にする。結果として同じような施策になるかもしれないけれど、芯が違う。

 リーダーシップの透明性、成長を支援する人事評価、成果に注力できる規範の整備……。

 未来を語る。そして語れる。朝令暮改でも進んでいる行先はわかる。見えない未来が、ちゃんと在るのだと感じさせる。そんな「何か」にアプローチしていきたい。


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