見出し画像

心理の本を読むことでうつ病から回復した話➉(大学生編Ⅴ)

読んでくださってありがとうございます。
機能不全家族のもとで育ち、精神疾患(うつ病など)で苦しみ、そこから回復した自分の半生を書きたいと思います。
今回は大学生編Ⅴになります。

前回の話はこちら

1話はこちら

弁証法的行動療法(DBT)を知る

自分は第三世代の認知行動療法を学んでいくうちに、「弁証法的行動療法(DBT)」を知ります。

この心理療法を知った時、「もっと早く知りたかった」と思いました。自分が悩んでいた症状にドンピシャの心理療法だったからです。
とはいえ、この心理療法のスキルは、もう実は今までの経験から身につけていました。

この記事はこの本を元に書いています。

DBTは自分でうまく制御できない激しく辛い感情を抱えて苦悩する人々を援助する為に開発された心理療法です。
特に境界性パーソナリティー障害(BPD)の人に有効でマーシャ・M・リネハン博士が開発した心理療法です。

リネハン博士は自身もBPDだったと告白してます。
自分自身が苦しんだ経験から、BPDの人を救う心理療法を生み出したという点に自分はとても好感を持ちました。

日本では、DBTを学べるところは皆無に等しく、自分はいつものように本で勉強します。
また、認知行動療法の学会ではDBTの第一人者である遊佐先生のワークショップを運良く受けることが出来ました。

弁証法ってなに?

弁証法とは、矛盾しているように見える二つのもの両方を尊重しながら、比較をすることを意味します。

DBTでは、「価値判断せずに自分自身を受け入れつつ」同時に「自分を傷つけるような行動を変え、健康的な生活を送れる」ことを目指します。

つまり、「受容」と「変化」いう一見矛盾する二つのこと、その両方大事だと考えています。

この考えは自分にとって馴染み深いものでした。
それは、うつ病から回復するときに、うつ病を受け入れると考えたことにそっくりだったのです。(自分の経験談5話参照)

徹底的受容

DBTにおいて、最も重要なスキルの一つとして位置付けているのが、「徹底的受容」です。

「徹底的受容」とは、出来事を価値判断したり、自分自身を批判することなく、現在の状況を受け容れることです。
別の言葉でいうと、マインドフルネスです。(自分の経験談9話参照)

ただし、何もかも諦めて自分に起こる全ての悲惨な状況を受け入れることとは違います。他の人の悪い行動を容認することでもありません。

徹底的受容とは、すでに起きてしまったことを怒ったり、状況のせいにしたりして、変化させようとする行為を止めることを意味します。

徹底的受容や弁証法の考えは、自分の好きな言葉である、「平安の祈り」に似ています。

変えられないものを受け入れる落ち着きを。
変えられるものは変えていく勇気を。
そして二つのものを見極める賢さを。

これは自分の拡大解釈かもしれないですが、徹底的受容は世間的に望ましくないとされる自分の行為でさえ受け容れるものだと思ってます。

自分は『完全自殺マニュアル』という本を買い、いつでもこの世からバイバイできると思い、自殺することを夢見ていました。

これは、世間的に明らかに望ましくない考えだと思います。
実際、この本は母親に処分されたみたいで、今現在でこの本を見つけられませんでした。

とはいえ、これは自分が生きるための精一杯の行動だったのです。

この場合の徹底的受容は、自分自身を価値判断したり、批判したりせず、ありのままの自分を受け容れるということでしょうか。

また、徹底的受容とは、現在の瞬間を徹底的に受け容れることも指します。
これは、現在の瞬間が、自分と他人が引き起こしたもので、双方の決断の結果によるものだという事実を受け容れる必要があることも指します。

これは、自分が人様に対して迷惑をかけたという事実も受け容れるということです。

自分は過去に寂しさのあまり、かなちゃんに対して電話に出るまで電話をかけ続けるという鬼電をしていました。(自分の経験談6話参照)

これは他でもない自分が引き起こした事実であるとして、受け容れる必要があります。

とはいえ、この行為もあまりの寂しさ故、その時できる精一杯の行動だったと自分自身も受け容れるのです。

DBTにおける重要4つのスキル

DBTでは、感情の波に圧倒されそうな時に役立つ4つのスキルを学びます。
以下がその4つの重要なスキルです。

  1. 苦悩耐性スキル

  2. マインドフルネススキル

  3. 感情調整スキル

  4. 対人関係スキル

苦悩耐性スキル

苦悩耐性スキルとは、感情的苦痛を引き起こす状況から「注意をそらし、リラックスし、対処するスキル」のことです。

注意をそらすことが重要なのは

  1. 苦痛について考えることを一時的に止め

  2. 適切な対処を見つける時間を作れる

からです。

注意をそらすことと回避することは違います。
辛い状況から注意をそらすのは、耐えられるレベルまで感情が静まったら、またその状況に対処するつもりでいる為です。

注意をそらすスキル

・自傷行為から注意をそらす

•自傷行為をする代わりに氷を握る

•リストカットする代わりに
 赤マジックでマーカーを引く

•自傷行為をする代わりに腕にはめた
  輪ゴムをはじく

・楽しい活動をして注意をそらす

•友人に電話する
•ゲームをする
•髪を切りに行く

・思考から注意をそらす

•楽しかった出来事を思い出す
•自分の周りの光景に目を向ける

作業や雑用で注意をそらす

•皿洗いをする
•靴を磨く

数を数えて注意をそらす

•呼吸を数える
•通り過ぎる車を数える

リラックス・スキル

嗅覚、視覚、聴覚、味覚、触覚など五感を使います。

•好きな香水つける
•ペットの写真を見る
•好きな音楽を聴く
•おいしいものを食べる
•ぬいぐるみをハグする

リラックス•スキルには、他にも
深呼吸をする、体に思い切り力を入れてから力を抜く(筋弛緩法)などがあると思います。

マインドフルネススキル

マインドフルネススキルの狙いについて少しだけ紹介します。

1.現在の瞬間において、物事に1つずつ焦点を当てることに役立つ。圧倒されるような感情をうまく管理し、落ち着かせることができる。

2.価値判断のような考えをしていることに気づける。価値判断的思考は圧倒されるような感情を増幅させてしまう。

3.「賢明な心」を発達させる。

「賢明な心」
理性的な思考と感情の両方を大事にし、自分の人について健康的な意思決定を下す能力のこと。

感情調整スキル

感情調整スキルはDBTにおいて、最も重要な技法です。
9つの感情調整スキルがあるのですが、今回は抜粋して紹介します。

自分の感情を認識する

感情には
一次感情」「二次感情」があります。

一次感情」とは
即座に出てくる強い気持ちです。
部屋が散らかっているのを見て、妻に怒るなどがこれにあたります。

二次感情」とは
自分の気持ちについての気持ちです。
妻に対して怒ってしまったが、そんな自分に後ろめたさを覚えるなどがこれにあたります。

また、感情は1つの出来事に対し、
2つ以上の感情を持つこともあります。
これは「両価性」と呼ばれます。

例えば、
恋人に対し、愛情を感じる一方、憎しみも抱くというようなことです。

感情を認識することは、
自分の感情に気づき、ありのままを受け容れるということです。
これにはマインドフルネスのスキルとセルフモニタリングが役立ちます。

不快な出来事を、以下6つのプロセスでセルフモニタリングします。

1.何が起きたのか?
2.なぜその状況が起きたと思うか?
3.その状況は感情的、身体的にどんな気持ちにさせたか
4.そう感じた結果、どうしたいと思ったか
5.何をし、何を言ったか
6.あなたの感情と行動は、後にどのような影響を及ぼしたか

自分の例を挙げて、説明します。
自分の経験談のかなちゃんに対しての行動についてです。

1.かなちゃんにメールをしたが返ってこなかった
2.かなちゃんが自分を嫌いだから
3.悲しい、怒り
4.鬼のように電話をかけたくなった。
5.電話に出るまで電話をかけ
  「自分を心配してるって言ってたのに裏切るんだ。」と言った。
6.かなちゃんを非難し責めることを言って、
  結果なかなか会えなくなった。

セルフモニタリングに関しては
他の記事でも紹介しているので、よければ見てください。

健康と感情の関係

健康と感情は深く関係があります。

バランスのよい食生活
睡眠をよく取る
病気や身体の痛みに対し医学的援助を得る
カフェインやアルコールを摂りすぎない

などはとても大切だとDBTでは説明してます。

認知的により健康的に対処する

これは認知再構成法と呼ばれる技法です。

テストで100点取れなった出来事に対して、
「自分は出来損ないだ」と落胆する代わりに
「完璧な人間などいない。今回はうまくできなかっただけだ」と思いなおしをするというようなことです。

自分はこのスキルを認知行動療法を学んだ時に実行していました。

対人関係スキル

対人関係スキルとは、ソーシャルスキルトレーニング、アサーション、傾聴スキルトレーニングを合わせたものです。

主要な対人関係スキルは6つあります。
1.自分の望んでいるものを知る
2.関係を保護する形で自分が望むものを要求する
3.対立する欲求の交渉をする
4.相手の要求、恐れなどに気づく
5.関係を保護する形で「ノー」と言う
6.自分の価値観に沿って行動する

自分はこの考えはすでに『アダルトチャイルドが人生を変えていく本』を読み、実践していました。

自分の人生に責任を持って生きていく

自分は様々な心理療法を組み合わせて、何とか回復しました。

しかし、その間に失ったものは大きかったです。

大学4年生になった時、自分はすでに留年が確定していました。
そのため、1年生の時に取り損ねた必修科目を受けます。これはかなり苦痛でした。
1年生に混じって、4年生が一人で授業を受けに行くんですから。

5年生になった時も、同期は皆卒業したので
自分は下の学年と混じってゼミを受けました。

普通の一般企業を就活で受けるときも苦労しました。留年した理由を聞かれるからです。
自分としては、生きる為に必死に頑張っていたのですが、社会では『落伍者』扱いです。

病気になって得られたものもあるかもしれません。
しかし、元気になると、過去のことを悔やみます。
「あの時、病気じゃなかったら、もっと大学生活を楽しめたのになあ」
「病気じゃなかったら、もっといい企業に行けたかも」

とはいえ、自分はそれから人生を取り戻す努力をしました。
留年しながらも、何とか大学を卒業し、児童養護施設に就職しました。
(児童養護施設は今は退職しましたが)

卒業証書を渡してくれたのは自分のゼミの教授でした。教授は力強い握手をしてくれました。
大学卒業は自分の人生を一つ取り戻せた証で凄く嬉しかったです。

人生は死なない限り、続きます。
それはきつい現実です。
今でも投げ出したい気持ちになることもあります。生きる意味なんて今でもわかりません。

けれど、それでも普通の人と同じように
自分は今生きています。

自分の半生を振り返る経験談は以上となります。長い文章を読んでいただきありがとうございました。

次回は、番外編として
今の自分から見た、過去の自分の回復過程に関しての考察をします。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集