クロネコヤマトミュージアム:親子で気軽に楽しめる企業系博物館(無料!)
【約3,700文字、写真約30枚】
東京・品川にあるクロネコヤマトミュージアム(正式名称:大和グループ歴史館)に初めて行きました。その感想を書きます。
▶︎結論
一般的な美術館・博物館に飽きた人にはおすすめです!大人だけでなく、親子でも十分楽しむことができます(無料!)。クロネコヤマトの歴史を気軽に楽しめることに加え、子供も遊べるポイントがいくつかあるためです。企業系ミュージアムに行くことも、休日の選択肢として大いにありです。
▶︎訪問のきっかけ
去年、品川の「キヤノンギャラリー S」に行った際に、クロネコヤマトミュージアムの存在を知りました。
「休日に子供と行ける美術館はないかなぁ」と思っていたところ、クロネコヤマトミュージアムを思い出しました。子供は「触れるものがないと美術館はヤダ!」と言います。このミュージアムの概要を見ると、配達員体験や、お絵描きコーナーもあるようだったため、行くことにしました。
今年の8月に「トヨタ産業美術記念館」に行って満足度も高かったです。そのため、企業系ミュージアムへの興味も増していました。
また、美術館に行くことが好きな私にとっては、実務面も気になります。「美術品の運搬に関する説明もあるんかな」と期待もありました。
▶︎アクセス
クロネコヤマトミュージアムへは品川駅から徒歩約10分です。
住所:東京都港区港南2丁目13−26
▶︎クロネコヤマトミュージアムとは
オープンしてまだ5年目、比較的新しいミュージアムです。企業の100周年にミュージアムを造るのは、何とも企業的ですネ。トヨタ産業技術記念館は、豊田喜一郎の生誕100年を記念してオープン。水戸芸術館は、水戸市制100周年を記念して造ったのを思い出しました。
入場料は無料!ミュージアムは2階〜6階と広範囲。まずは6階に上り、展示を見ながらスロープを降りて渦巻きのように2階へ辿ります。しかも、展示フロアの上下は車路になっており、トラックが走っている珍しい造りです(設計:日建設計)。
品川で5階層使っていると、維持費も大きいのではないでしょうか。かなり気合の入ったミュージアムですネ。
来場者は親子が多かったです。その他、カップルや夫婦、男性お一人など。未就学児でもそれなりに楽しめます。館内は広いため、子供はキャッキャと楽しそうでした(読み物が多いゾーンは興味なさそうでしたが)。
なお、展示の内容を鑑みると、新入社員や投資家、お取引先にとっても有用な施設だと思いました。
ちなみに、パンフレットには「[愛称]クロネコヤマトミュージアム(正式名称:大和グループ歴史館)」とありました。愛称って自分で名乗るものでしたっけ…。なぜ2つ併記しているのか謎です。
▶︎感想
2階の受付で入館証をもらってゲートを通ります。その後、エレベーターで6階へ進みます。なお、撮影可能な場所は3箇所しかありません。
私は『小説ヤマト運輸』(高杉良)を読んだことがあります。ヤマト運輸が孤軍奮闘し、今のポジションを築いたか理解できました。特に、2代目社長・小倉昌男が時代に合わせて、宅急便をはじめ、様々な需要を自らつくり出した点に感心しました(余談ですが、三越百貨店の横暴にはびっくり)。
✔️6階
6階からスタートして、創業の資料が並びます(撮影不可)。
ヤマト運輸は、創業者・大和康臣が1919年に八百屋で資金を貯めて起業しました。大和康臣は、自動車が増えた時代の風を感じて、運送業に興味をもちました。当時は、スタッフ15人でスタート。日本にあったトラック全204台のうち、4台を購入しました。
創業当初は鮮魚をメインに運んでいたそうです。その後、三越と協業、家具の運送(1922年)、引越し婚礼(1924年)、定期便(1929年)、今のクロネコマークが登場(1960年)、宅急便(1976年)、スキー宅急便(1983年)、音楽宅急便(1986年)、クール宅急便(1988年)、空港宅急便(2000年)、|PUDO《Pick up & Drop off》ステーション(2016年)などに拡大。
「シアター」では、時代に合わせた事業の変遷を、アニメを交えながら約10分でコンパクトに概観できます。子供と来た場合「シアター」から見ることをおすすめします(最初の読み物展示は、子供にとってはつまらないため)。
1964年に、美術品専用車ができたそうです。ヤマト運輸の美術品の運送は、インカ帝国文化展(1958年)が最初。美術品運送に関するインタビュー動画(4分29秒)も展示されていました。
専用トラックの特徴は、エアーサスペンション、温度管理(美術館と同じ20〜22度)だそうです。美術品運送は大きく3種類(企画展、公募・コンクール展、海外・国内美術品輸送)。美術品運送で重要なことは、1)身だしなみとマナー、2)梱包資材などの事前準備だそうです。ミイラの梱包は1体1日かかったとのこと。
美術に興味がある私にとって、美術品運搬の梱包資材の実物があれば、なお良かったです。読み物ばかりではなく、実物があると説得力が増します。
特に子供にとっては、パネルばかりだと退屈です。来場者の大半は親子だったため、触れる展示や、ゲーム感覚で遊べる展示が増えると良いですネ。
✔️5階〜4階
2代目社長・小倉昌男が就任したのは1971年。宅急便ができたのは1976年です。宅急便事業のきっかけは、1)小倉昌男が息子のお古を親戚に送ろうと思った、2)吉野家は品番数を絞って事業を効率化していた、3)UPSが積載効率を向上させる取り組みをしていたことです。
大口の集荷ができないなら、家庭からたくさん集めて、密度を高めれば、ビジネスとして成り立つと判断。当時、ヤマト運輸の社内では反対の声がほとんどだったそうです。
それらも含めて、全般的に小倉昌男にすごくフューチャーした構成でした。小倉昌男は「全員経営」「サービスが先、利益が後」「変わるべきものと、変わるべからざるもの」などの言葉も残しました。ヤマト運輸の従業員教育の中で、創業一族の考えは非常に重要なポイントなのでしょう。
ヤマト運輸は、1989年に「魔女の宅急便」の特別協賛も行いました(ジブリが企業協賛した初の作品)。その経緯は『天才の思考 高畑勲と宮崎駿』(鈴木敏夫)に詳しいです。
ミュージアムの宅急便エリアでは、子供も楽しく宅急便を学べるコーナーがありました。
✔️3階〜2階
3階からは2000年以降の最新の取り組み(ECの発展、デジタルの活用、環境対応など)が展示されていました。最後には、感想を書き込むコーナーがあります。そこを抜けると2階の受付に戻りました。
2階の受付には「スワンカフェ」があります。スワンカフェは、障がい者の働く「おいしい焼きたてパンの店」として、公益財団法人大和福祉財団が運営しています。1998年6月、銀座に1号店がオープン。現在、日本で全25店舗を営業しています。
「スワンカフェ 品川港南店」の目の前には川が流れているため、ゆったり過ごせます。ドーナツ3つセットとコーヒーの購入がおすすめです。
▶︎まとめ
いかがだったでしょうか?クロネコヤマトの歴史を気軽に学べる上、子供にとっても、シアター、制服の着替え、お絵描きなど楽しめるポイントも用意されている点が良かったです。しかも、無料!一般的な美術館・博物館とは一味違った面白さ、意外性があります。品川駅からのアクセスも良いです。親子、カップル、友人同士などで楽しく過ごせると思います。