【展覧会レポ】東京ステーションギャラリー「テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする」
【約4,600文字、写真約35枚】
東京ステーションギャラリーに初めて行き「テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする」を鑑賞しました。その感想を書きます。
▶︎ 結論
インテリア好きの方は必見!「ザ・コンランショップ」を開いたテレンス・コンランを扱う日本初の展覧会です。良かった点は、1)生涯の軌跡、手がけた製品を知ることでコンランについて詳しくなった、2)イギリスらしいセンス、色使いを再認識できたことでした。なお、コンラン本人の「考え方」をもっと深掘りした内容だと満足度が高くなったと思います。
▶︎ 訪問のきっかけ
訪問したきっかけは、1)「ザ・コンランショップ」に思い入れがあった、2)東京ステーションギャラリー(以下、TSG)に行ったことがなかった、3)1月2日も営業していたことによります。
「ザ・コンランショップ」と言えば、西梅田にあった大阪店(2015年閉店)や新宿店に何度か行きました。主に、自分のものを買うためではなく、誰かのプレゼントを買うために利用していました。私の中では「ザ・コンランショップ」で買えば間違いない!というポジションでした。
近年「ザ・コンランショップ」は全く行ってませんでした。懐かしさもあったことに加えて「コンランさんって誰やねん」という興味もありました。
▶︎ アクセス
東京ステーションギャラリーへは、東京駅から徒歩約1分。「丸の内北口」の目の前にあります。
▶︎ 東京ステーションギャラリーとは
JR東日本発足1周年の1988年「東京駅を単なる通過点ではなく、香り高い文化の場として提供したい」という意図でTSGは開設。2006年、東京駅の復原工事に伴い一時休館。2012年、リニューアルオープンしました。
TSG最大の特徴は、辰野金吾の設計によって1914年に創建された東京駅の駅舎(重要文化財)完成以来、保存されてきた煉瓦をそのまま使用していることです。階段と2階の展示室はほぼ煉瓦の壁でできており、創建当時の鉄骨も見ることができます。
「テレンス・コンラン展」では、展覧会の性質上、2階の煉瓦の壁をあまり見ることができなかったのは残念でした😨
TSGの活動指針の柱は、1)近代美術の再検証、2)鉄道・建築・デザイン、3)現代美術への誘い、の3つです。美術館の運営は、東日本鉄道文化財団です。
なお、HPに館長のあいさつやコンセプト、ミッション、運営主体、沿革などの開示がない点が気になりました。「館内のみどころ」にサクッとまとめるのでなく、誰が、どういう考え方で美術館を運営しているのか、独立して記載した方がいいと思います。
アートアジェンダに、館長・冨田章のインタビューが掲載されていました。
「そこそこ、お客様の入る展覧会」というコンセプトが生々しくて良いですネ(笑。私は1月2日の人出の多い日に訪問したため、当日券を購入するために5〜6名の列ができていました。まさに「そこそこ、お客様の入る展覧会」というコンセプト通りでした。
今回の展覧会は、1)日本初のテレンス・コンランを扱う展覧会、2)「ザ・コンランショップ 新宿店」出店から30周年、3)TSGの前に「ザ・コンランショップ 丸の内店」がある、といったTSG独自の着眼点が垣間見えました。
▶︎ 「テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする」感想
✔️ テレンス・コンランって誰
ロンドン生まれのテレンス・コンラン(1931-2020)は、アーツ&クラフツ運動や、バウハウスのデザインから大きく影響を受けました。モットーは「Plain, Simple, Useful」。
第二次世界大戦後、ブリティッシュ・ポップアートが生まれました。まず、コンランは、食器、テキスタイルのデザインで注目されました。1957年に、コンランによるテキスタイル集の本も出版するほど。その後、家具の輸入販売、イス、キャビネットの製作などを手がけました。
コンランがつくった「ロープチェア」はピカソが2脚購入したそうです。
✔️ おしゃれ家具店をオープン
1964年、家具、キッチン用品などを扱う「ハビタ」1号展をロンドンに出店。デザインが生活の質を向上させると信じ、個人の生活空間から都市、社会までを広く視野に入れ、デザインによる変革に突き進みました。1973年「ザ・コンランショップ」1号店をロンドンにオープン。
✔️ イギリスらしいポップな色使い
展示されていた当時の家具を見ると、「民藝」とは正反対、工業的でシンプル、モダンなイギリスらしさを感じます。IKEAの北欧デザインともどこか違うと感じました。また、おしゃれ過ぎて生活臭が皆無、日本の狭い家に置いたら似合わないなぁと思いました。
イギリスのアーティストと言えば、私はダミアン・ハーストなどを思い浮かべます。ポップな色使いは、コンランと共通していると感じました。
日本では、1994年に「ザ・コンランショップ 新宿店」をオープン(現在、麻布台、新宿、丸の内、伊勢丹新宿、代官山、福岡の6店舗)。
私の中で「ザ・コンランショップ」と言えば、コンポニビリ、ボビーワゴン、イームズハングイットオールの印象が強いです。
✔️ ライフスタイルをつくる
コンランは家具以外にも、1953年「スープキッチン」を皮切りに、50や100のレストランを手掛けたと言われれています。インテリア業とレストラン業は親和性がありますネ。1989年、ロンドンに「デザイン・ミュージアム」も造りました。
コンランは、デザインだけでなく、ライフスタイルをつくった人だと思いました。コンランには「サー」の称号が与えられています。イギリスでは「コンランやろ、知ってるに決まってるやん」という風に、日本で言う文化功労者のような有名人ポジションなのでしょうか。
1部屋だけ撮影が可能でした。そこには、有名無名関係なく、コンランが良いデザインと思った小物も展示されていました。この感覚は、柳宗悦などと似た感覚なのでしょう。
✔️ 展覧会からの気付き
私は初めてTSGに行きました。展示室内が狭く、鑑賞しづらいと感じました。来場者が多かったことに加え、展示の影響だったのかもしれません。
展示全体から「おしゃれな家具やなぁ」で終わりがちな印象を受けたため、コンランの考えをもっと深掘りした方がいいと思いました。私はコンランの「つくったモノ」よりも「コンランその人」を知りたかったです。
来場者も、コンランはどうやってセンスを身につけたのか?、人々に何を提供したかったのか?、なぜここまで事業を拡大しようと思ったのか?ということに興味があったのではないでしょうか。
それにしても、外国の家の棚はおしゃれ!色んなものを飾っているにもかかわらずゴチャついていません。そういう棚を作りたいです。
✔️ おまけ(美術館のメモ論)
鑑賞中に手帳にメモをしていると、看視員の方にペグシルを強制的に渡されました。今までさまざまな展覧会を訪問していますが、鉛筆ホルダーの使用がダメと言われたのは初めてだったため、びっくりしました。
美術館で鉛筆の使用が推奨されているのは、ボールペンやシャーペンの芯は作品を傷つける恐れがあるから、と私は理解しています。
看視員の方に理由を尋ねると「ホルダーが硬いから」とのことでした。そんなこと言い出したら、ケータイなどを持つことも全部禁止なのでは?と屁理屈をこねそうになりましたが、素直に指示に従いました。
「ペンっぽいものを持っていると、一律に確認しなきゃいけなくなるから、便宜的にペグシル使ってほしい🙏」と言われれば私は理解できました。TSGは、看視員の方にペグシルを使う目的まで伝えた方がいいと思いました。
▶︎ まとめ
いかがだったでしょうか?テレンス・コンランを扱う日本初の展覧会。特にインテリア好きの方は楽しいと思います。コンランの軌跡や実際の作品を見られたことに加え「イギリスらしさ」を感じることができました。欲を言えば、コンランの人となりにもっとフォーカスしてほしかったです。建物自体が重要文化財である東京ステーションギャラリーに初めて行くこともできて良かったです!
▶︎ ザ・コンランショップ
その後「ザ・コンランショップ 丸の内店」に寄りました。新丸の内ビルの3階、4階にあります。ステキな家具を見ると、何だかいい暮らしを想像して、心が豊かになります(その分、目が飛び出る値段が多かったですが)。