【展覧会レポ】愛知県美術館「アブソリュート・チェアーズ 現代美術のなかの椅子なるもの」「2024年度第2期コレクション展」
【約4,900文字、写真約70枚】
愛知県美術館に初めて行き「アブソリュート・チェアーズ 現代美術のなかの椅子なるもの」と「2024年度第2期コレクション展」を鑑賞しました。その感想を書きます。
▶︎結論
さまざまな現代アート的に尖った「椅子」を見ることで楽しめました。一部の椅子は実際に座れるため、物理的にも楽しめます!また、椅子も含め、物事にはさまざまな面があることを再認識できました。そのほか、常設展も粒揃い、駅からのアクセスも良かったため、名古屋観光にも最適なスポットだと思います!
▶︎訪問のきっかけ
家族で名古屋観光をするにあたり、最初は、豊田市美術館に行くことを検討しました。谷口吉生の建築を見かったためです。しかし、1)名古屋駅から片道約1時間半かかるため家族で行くには遠い、2)開催中のエッシャーの展覧会は、上野の森美術館で見たことがあったため、候補から外しました。
▼リニューアルに谷口吉生が関わった大倉集古館
そこで、ネットで検索し、愛知県美術館を見つけました。1)名古屋駅から近い、2)埼玉県立近代美術館で開催していた「アブソリュート・チェアーズ」展は行けなかったため、愛知県美術館へ行くことに決めました。
▶︎アクセス
愛知県美術館は、栄駅から徒歩約5分。愛知芸術文化センターという複合施設の10階にあります。
住所:愛知県名古屋市東区東桜1丁目13−2
▶︎愛知県美術館とは
愛知県美術館は、愛知芸術文化センターが開館した同じ年(1992年)にオープン。2年かけて2019年にリニューアルオープン。天井脱落対策、床・照明の設備更新、トイレの洋式化などを行ったそうです(その割に全体的に公民館のようなシャビーな印象でしたが)。
館長は拝戸雅彦(2021年〜)。1992年10月~2008年3月まで愛知県美術館の学芸員も勤めていた方です。
なお、HPを見ると「館長メッセージ」が「準備中」!新館長の就任後、約3年も放置されているのでしょうか?!企業HPなら、投資家が真っ先に確認する「社長メッセージ」に当たるページです。
愛知県美術館は、企画展や常設展のキャプションなどを書く前に「館長メッセージ」を気合入れて書くべきです。館長をはじめ、職員の誰も不思議に思わないのでしょうか?情報発信に対する意識の欠如にびっくり😨
▶︎「アブソリュート・チェアーズ 現代美術のなかの椅子なるもの」感想
美術館で初めて見た「座れますよ!」マーク。面白い取り組みです。なお、珍しいマークを見て期待値が上がりましたが、作品の中で実際に座れる椅子は多くなかったです。
「アブソリュート」は、絶対的、究極的などを意味します。「絶対的とは何か?」「椅子とは何か?」を紐解きながら作品を見ていくと、新しいものの見方が分かってくる構成でした。
だいたい半分の作品が撮影不可でした。展示室の冒頭にはデュシャン《自転車の車輪》や草間彌生《無題(金色の椅子のオブジェ)》が設置してあります(撮影不可)。
いきなり不思議な「椅子」を見ることで「これは座れるのか?椅子なのか?」とインパクトのある問いが投げかけられます。
なお、展覧会の1つ目の作品には、撮影可能なものを置いた方が良いと思いました。いきなり撮影不可の作品がバーン!とあることで「うわ!面白そう!だけど撮影できないのか…残念😨」とテンションが下がるためです。
私は今、椅子に座ってパソコンのキーボードを叩いています。そのため、椅子=座る・プライベート・リラックスする機能しか思い浮かびません。しかし、展覧会を通して、椅子にはそれら以外にも役割があると気付きました(例えば、権力を示す、拷問を与えるなどネガティブな役割)。
中には、工藤哲巳の作品が2つあり、ともに工藤節炸裂のホラー作品でした(撮影不可)。他の作品と比べて雰囲気が「浮いている」印象を受けたことに加え、子供には少し刺激が強いと思いました😅
椅子を使った表現方法もバラエティがありました。シャオ・イーノン&ムゥ・チェン《集会所一高塘》は、無人の中で、たくさん並べられた普通の椅子が写っているだけの写真です。この光景を見ると、人々が何か良くないものを盲信しているような、ちょっと怖い雰囲気を感じます。
後半は、近年見たことのあるアーティストの作品がズラリ。美術館巡りをする際、このように点と点が線になる瞬間は、嬉しいひと時です。
埼玉県立近代美術館の「椅子展」の感想をnoteで読んだ際、最も印象に残っていた作品が、ミシェル・ドゥ・ブロワン《樹状細胞》でした。埼玉県立近代美術館では、吹き抜け空間に宙吊りにされていました。
▼埼玉県立近代美術館の「椅子展」感想の例
この作品を投稿内で見た時「アブソリュートチェアーズ展ええやん!」と思ったほどでした。「これは巡回展では無理なんやろうなぁ」と諦めていました。しかし、愛知県美術館の室内でも展示されていたため安心しました。
パイプ椅子を上手に組み合わせた形状は、まるでウイルス。部屋にできた影も、格好良かったです。「現代アートっぽく面白い椅子を作ったろ」的な作品は多くありましたが、椅子をたくさん集めて1つにする作品は少数派でした。このような発想の方が、私の記憶に残りました。
閑話休題、私はmataさんの【美術館の名作椅子】シリーズが好きです。今まで美術館で何となく座っていた椅子。「おっしゃれ〜」「フカフカで気持ちいぃ〜」と思うのみでした。その椅子が1脚300万円するものもあると聞いてびっくり。椅子の世界は奥が深いことに加え、その道に詳しい方の話は参考になると感心します。
▼【美術館の名作椅子】シリーズの一例
名作椅子シリーズにあるように、椅子は快適性を目的に作られています。しかし、それと対極にある「不快な椅子」を見ることで、(椅子に限らず、)世の中の面従腹背、二律背反な側面に改めて気付くきっかけとなりました。
▶︎「2024年度第2期コレクション展」感想
コレクションは「県美の名品、裏話」「木村定三コレクション」「明治から昭和初期の洋画」「新制作派協会彫刻部の創立メンバーたち」の4部構成。
常設展の点数は意外と多かったです。子供は美術館を早く出たかったため「まだあるの…😩」と辟易していました(笑。内容も粒揃いで、中には常設展のチケットだけ買っている来場者もいました。
中でも、私の好きなルーチョ・フォンタナの作品を見られたのが嬉しかったです!しかも黒!キャンバス裏の説明もあって興味津々でした。
なお、空間がシャビーで公民館みたいでした。各セクションの説明は、白地にゴシック体で書いただけ、文章のトーンも固い。作品も「置いただけ」感が強い。作品の見せ方に工夫や、ストーリー性があるとなお良いと思いました。ステキな作品が多かった一方で、残念な印象に残りました。
例えば「椅子展」と連動して、コレクションの中から、椅子が写った作品を集めるなどすれば好評だと思うのですが、いかがでしょうか?
また、企画展も含め、看視員が必要以上に多いと感じたことに加え、対応が厳しい方も一部いました。非効率な上に、鑑賞もしづらいため、見直した方が良いかと思います。
▶︎まとめ
いかがだったでしょうか?「椅子展」は埼玉県立近代美術館で好評だった通り、満足感は高かったです。見ても楽しめる作品が多かったことに加え(一部の椅子は座れる!)、椅子は快適性以外にもさまざまな一面があることを再認識できました。常設展も粒揃いだし、駅からのアクセスも良いです。名古屋観光にもおすすめのスポットだと思いました!