展覧会レポ:岡田美術館「歌麿と北斎 ―時代を作った浮世絵師―」
【約4,300文字、写真約20枚】
箱根にある岡田美術館に初めて行き「歌麿と北斎 ―時代を作った浮世絵師―」を短時間で鑑賞しました。その感想を書きます。
結論としては、とても充実した美術館でした。良かった点は、❶展示方法がセンス抜群、1階→5階のストーリーも秀逸、❷ジャンルは多岐に亘り、貴重な作品が多数、❸合計約450点の大ボリューム。ゆっくり見れば2〜3時間はかかりそう。入館料は2,800円と高額ですが、ギリギリ納得できました。創設者の岡田さんに感謝です!
▶︎訪問のきっかけ
大涌谷に行く機会があった際、1時間ほど時間が作れそうだったため、近くにある美術館をgoogle mapで探しました。そこで岡田美術館を見つけました。過去、美術手帖がおすすめしていたことを思い出して「これは良い機会」と思ったため、行くことに決めました。
▶︎アクセス
岡田美術館は、大涌谷からバスで約15分。バス停の小涌園で下車します(大涌谷が「おおわくだに」なら、小涌園も「こわくえん」と読んでほしい…)。小涌園のバス停から目の前に岡田美術館があります。
岡田美術館へは車で来館をおすすめします。バスは時間を読むことが難しく、渋滞に巻き込まれて大きく遅延するためです。バスで行く場合、移動時間も含めて、岡田美術館だけを楽しむくらいの時間配分がベストです。
岡田美術館の近くに箱根小涌園ユネッサンがあります(足湯は無料)。
▶︎岡田美術館とは
岡田美術館について調べた際、最初に「岡田って誰やねん」と疑問に思いました。しかし、公式HPのどこを見ても書いていません。そこで、wikipediaで調べると、「概要」の冒頭にその記載が見つかりました。
岡田美術館は、パチスロで財を成した方の私設美術館のようです。公式HPにはその記載がどこにもありません。「基本理念(美術館の使命)」は創設者の想いが由来のはずですし、どんな展覧会を企画する場合も、創設者の考えが根底にあるはずです。
岡田美術館に来た方は、私同様「岡田さんって誰?」と思うはずです。創設者の岡田和生氏がどういう方なのか、どういう思想で美術館が建てたのかをHPなどで記載すべきです。(後に述べますが)こんなに素晴らしい美術館をつくった岡田さんを紹介しないことはもったいないと思いました。
岡田美術館は、全5フロアからなる展示室に加えて、足湯カフェ、開化亭(レストラン)、庭園、渓流散策コースがあり、施設がとても充実しています。今回、私は約1時間しかなかったため、駆け足で展示室を周ったのみ。ゆっくり過ごす時間があれば3時間はかかりそうです。
▶︎「歌麿と北斎 ―時代を作った浮世絵師―」感想
岡田美術館の展示室は全5フロアあり、それぞれでテーマを設定しています。1〜5フロアで合計して約450点が展示。3階で、企画展「歌麿と北斎 ―時代を作った浮世絵師―」を開催しています。
大涌谷のついでに軽い気持ちで岡田美術館に来ましたが、入館料を見てびっくり。2,800円!引き返すことができないため支払いました。まさか今年一番入館料が高い美術館が岡田美術館になるとはゆめゆめ思いませんでした。
ロープウェイ乗り場がある桃源台に250円の割引券が売っています。是非、利用しまししょう(私は帰宅時に発見しました…)。
岡田美術館内は一切撮影は不可。さらに、入館時にセキュリティゲートをくぐる必要があります。ビーっと音が鳴ったとしても、ケータイ、カメラを持っていなければ、再度くぐり直したり、身体検査を受けることはありませんでした。ケータイを奪われると、作品鑑賞に没頭せざるを得ませんでした。
✔️ 1階「中国・青銅器、韓国陶器」
1階は、たくさんの陶磁器が見やすい照明で展示されていました。第一印象は「陶磁器ばかりで少し退屈。こういう展示が5フロアも続くのかな…、これで2,800円はいかがなものか…」でした。
なお、私は順路の逆から見てしまいました。「壁画通路」からの入場が正しいルートです。しかし、エスカレーター近くに「岡田美術館とは」的な説明が掛けてあっため、それを読み、そのまま自然な流れて「5」の部屋から見てしまいました。1階は、特に順路を明確に示した方が良いです。
✔️ 2階「日本陶磁・ガラス」
不安な気持ちから2階の展示室に入ってびっくり。なんと扉を開けると区切りのない大きな部屋がデーンとあるのみ。1階とメリハリが利いています。
展示方法はセンス抜群です。暗い空間の雰囲気がとてもスタイリッシュ。個別の作品よりも、この空間を写真に撮れないことが残念でした。ちなみに、トイレもまるで有名なホテルかのように綺麗でした。展示室に限らず、館全体的のインテリアに強いこだわりを感じました。
2階は、多くの陶磁器が並んでいました。私はお皿などを見てもピンときません。見る量をこなすと、何か感じるものがあるのでしょうか。お皿と絵も楽しめて、かつ実用性もあるため一石三鳥なアートなんですかね。そんな私は、黄色を大胆に使った「色絵竹梅鶯蝶文大皿」が気に入りました。
金沢21世紀美術館特任館長や、大阪市立美術館名誉館長である蓑 豊さんは中国陶磁器が専門分野でした。陶磁器の面白さについて伺ってみたいです。
また、岡田美術館は無名の陶磁器も多く展示されています。創設者の岡田氏はとにかく陶磁器が大好きなことが伝わりました。
✔️ 3階「日本絵画〜屏風を中心に〜」
3階は、2階と違い細長い縦の展示室が並びます。今回の歌麿、北斎の企画展はこのフロアで開催されていました。
岡田美術館は展示量が多過ぎるため、気になった作品のみを重点的に鑑賞するのが良いと思います。特に3階は気になる作品がたくさんあるため、この階だけで展覧会を行なっても十分に集客ができそうです。徐々に、2,800円の信憑性が増してくるように感じました😅
3階に入って最初にある《誰ケ袖図屏風》はインパクトがありました。屏風に人は登場せず、脱いだ服だけ描かれています。脱いだ服から着ている人を想像させる発想の奥ゆかしさ、慎ましさは日本人ならではだと思いました。
北斎の大胆な春画5、6点も、年齢制限のある部屋で展示されていました。約100年で日本の貞操観念も随分変わったなぁ、としみじみ思いました。
歌麿は、今まで被写体は高貴な遊女が当たり前だった常識を破り、民衆をモティーフにした「大首絵」を多く制作しました。アートを身近な存在に昇華させた考えは、現代の岡村太郎やココ・シャネルのようで素敵です。
そのほか、上村松園、鏑木清方、河鍋暁斎、北斎の《富嶽三十六景》3点、同じく北斎の《遊鯉図》《雪中鴉図》、円山応挙など、見応えのある作品が多く展示されていました。
北斎は、80歳を超えた頃、「画狂老人卍」と自ら名乗ったそうです。名前から迸る厨二病感が面白いです。マクドナルド創業者レイ・クロックは52歳で起業しました。年齢に左右されず、ひたすら画に邁進した姿勢からは学ぶものがあります。
✔️ 4階「日本絵画・書跡」
4階は、3階と似た長細い展示室が続きます。ただし、3階と縦横の向きが違うため、新鮮に感じました。空間の魅せ方がどの部屋もセンスあり過ぎです。ベンチの形からもセンスが溢れていました(撮影禁止が残念)。
このフロアは、埴輪、青銅器、縄文土器、日本画などジャンルの幅が広いです。埴輪の緩い顔はとても癒されました。
なかでも、「岡田美術館の名品コーナー」にある宗達、光悦、光琳、春草の作品は見応えがありました。上村荘園の作品も印象に残りました。
✔️ 5階「仏教美術」
5階は若干の仏像美術が展示されていました。そのほか、福井江太郎《風・刻》のインタビュー映像を見る部屋、開化亭へ繋がる外階段がありました。
▶︎まとめ
いかがだったでしょうか?全体として、すごく満足度は高かったです。1階から2階、3階と見るうちに、展示のセンスの良さ、ストーリーにどんどん引き込まれました。岡田さんに感謝です!
展示物は、ほぼ全てが岡田美術館の収蔵品です。ジャンルは多岐に亘り、貴重な作品も豊富です。入館料の2,800円はギリギリ納得できました。ゆっくり見ると2〜3時間はかかる大ボリュームです。約1時間の駆け足で周ったのが悔やまれました😢