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【展覧会レポ】台東区立朝倉彫塑館「朝倉彫塑館90年 建物の魅力」

【約4,200文字、写真約45枚】
東京都・日暮里にある台東区立朝倉彫塑館あさくらちょうそかん(以下、朝倉彫塑館)に初めて行き、常設展時「朝倉彫塑館90年 建物の魅力」を鑑賞しました。その感想を書きます。

▶︎ 結論

規模が小さいため期待していませんでしたが、予想外に良かったです!それは主に、1)和魂洋才の建物にセンスを感じた(特に本棚!)、和室で心が豊かになった、2)朝倉文夫の芸術に対する考えに感化された、3)3m超を含む、朝倉文夫の作品が圧巻だったためです。彫刻に興味がなくとも楽しめることに加え、日暮里観光にも最適な美術館でした!

おすすめ度:★★★★☆
会話できる度:★★☆☆☆
混み具合:★☆☆☆☆
展覧会名:【常設展示内】特集「朝倉彫塑館90年 建物の魅力」
場所:台東区立朝倉彫塑館
会期:2025年1月4日(土)~3月5日(水)
休館日:月曜日、木曜日
開館時間:午前9時30分~午後4時30分
住所:東京都台東区谷中7丁目18−10
アクセス:日暮里駅から徒歩約5分
入場料(一般):500円
事前予約:不要
展覧所要時間:約1時間
撮影:館内は3カ所のみ可能
URL:https://www.taitogeibun.net/asakura/oshirase/news/1644/ 


▶︎ 訪問のきっかけ

朝倉彫塑館の入り口

訪問のきっかけは、1)今まで朝倉文夫の作品を全国で目にしたことがあったため、朝倉文夫について詳しく知りたかったこと。

佐伯勇像@大和文華館(2024年6月撮影)

2)美術館が日暮里という微妙な立地にあるものの、スーパードライ ミュージアム(茨城県・守谷)の帰りに寄ることができたことです。

▶︎ アクセス

初めて降りた日暮里駅

朝倉彫塑館は、日暮里駅から徒歩約5分。案内板が至る所にあることに加え、道順も分かりやすいため、アクセスは良いです。

観光案内図にも明記
案内板もあって安心

日暮里は趣きのある街並みが広がっています。当日、美術館しか行く時間がなかったことが残念😢

駅から3つ目の角を曲がると「朝倉彫塑館通り」
さりげない外観で見落としがち
美術館の正面
屋上に何かいる
いざ、入館!
靴を脱ぐスタイル

入場する際、靴を脱いで袋に入れます。その袋をロッカーに預けることはできず、手で持って館内を移動します(途中で外に出る箇所があるため)。

朝倉彫塑館で珍しい点が、カメラを持っている場合、美術館が準備する「カメラバッグ」を使う必要があることです。カメラが作品に当たることや、撮影禁止の作品をサクッと撮られることを予防しているのでしょうか。

マットの上でのみ撮影が可能(館内に2カ所)
市販?別注?のマット
最後の部屋も撮影可能

住所:東京都台東区谷中7丁目18−10

▶︎ 台東区立朝倉彫塑館とは?

入り口にある概要

朝倉彫塑館は、朝倉文夫が邸宅兼アトリエとして新築した建物(1907年)を使用。建物は8回以上も改築、増築され、今の形になりました(1935年)。設計は全て朝倉文夫が担当

1967年に一般公開、1986年に台東区に移管、現在の名称(台東区立朝倉彫塑館)になりました。2001年に建物が有形文化財に指定。運営・管理は、(公財)台東区芸術文化財団が行なっています。

なお、「彫塑ちょうそ」とは「彫刻」と同義のようです。

sculptureの訳語として、彫り刻む技法「彫刻(carving)」とかたちづくる技法「塑造(modelling)」を合わせて「彫塑」という言葉が生まれたのです。提唱したのは大村西崖せいがいという朝倉の先生でした。朝倉は「彫塑」という言葉に拘りを持ち、朝倉彫塑館と命名したのです。しかし、「彫塑」という言葉は定着しませんでした。現在、日本では「塑造」を含んだ広い意味で「彫刻」と呼ぶことが一般的です。

朝倉彫塑館より

▶︎ 朝倉文夫って誰?

猫大好き朝倉文夫

朝倉文夫は、1883年大分県生まれ。1907年、東京美術学校の彫刻科を卒業。1921年から東京美術学校で教鞭をとりました。

邸宅では「朝倉彫塑塾」として、お金がない人に学費不要で彫刻について教えました(洋画家の佐伯祐三も生徒の一人)。朝倉文夫は、生涯で400以上の彫像をつくり「東洋のロダン」とも呼ばれました。1964年没(81歳)。

1952年、文化功労者にも選出。経済界などの偉人にとって「朝倉文夫に胸像をつくってもらったら一人前や!」的な存在だったのでしょう。

大和文華館では「朝倉文夫先生」と刻まれている(2024年6月撮影)

▼ 大和文華館の感想

▶︎ 「朝倉彫塑館90年 建物の魅力」感想

チケット

✔️ 展覧会の概要

閉まる時間(16時半)が早い点に注意

2025年、建物の竣工から90年を迎える朝倉彫塑館。この機会に改めて建物と庭園の魅力に迫ります。まずは、朝倉のこだわりがつまった建物の見どころをご紹介します。

公式サイトより

私にとって1時間は必要な内容でした。現在の常設展示は、朝倉文夫の作品はほどほどに、朝倉彫塑館の建築を楽しむ内容になっています。

今回の展覧会は、ブロンズ作品だけではなく、朝倉文夫の人となりや、建築も楽しめた点は、予想外に楽しめたポイントでした。

✔️ 3m超!朝倉文夫の作品

館内の様子

今回の展覧会では、朝倉文夫のブロンズ作品は10〜20ほどしかありません。入館して早々に、重要文化財《墓守》がお出迎え。日暮里にある天王寺墓地の墓守が、将棋をさす様子を見る姿がモデルです。

《墓守》(画像引用

ブロンズ像ってどうやってつくるんだろう?と思いながら鑑賞していたら、ちょうど作り方を説明するペーパーがありました。

ブロンズ作品ができるまで

思った以上に工程が多くびっくり。

《小村寿太郎像》(画像引用

展示室内には《小村寿太郎像》も設置されています。高さ3m78.5cmもある容姿は圧巻!ロン・ミュエク《スタンディング・ウーマン》でも同様の感想を抱きました。とにかく大きいは正義!

ロン・ミュエク《スタンディング・ウーマン》(2024年4月撮影)

▼ 十和田市現代美術館の感想

猫くらいの作品であれば、ブロンズ作品の制作工程を想像できますが、《小村寿太郎像》までの大きさになると想像ができませんでした。

《はるか》
《原題不明》

なお、普段は現代アートや絵画を見ることが多い私にとって「彫刻」の「良い」「悪い」は何をもって評価するんだろう?と疑問に思いました。正確性を追求するなら、3Dスキャンを使えば完璧な作品がつくれます。

20世紀に3Dスキャンがなかったため、正確性も評価のポイントだったと思います。それ以外にも、人の手がつくり出す「味」のような雰囲気が支持されたのでしょうか。

美術館内では、朝倉文夫が集めた「南洋銅器」などのコレクションも展示されていました。違い棚を使った見せ方も格好良かったです。

✔️ 予想以上に感心した建築

建築の全体像

朝倉彫塑館は、朝倉文夫が実際に20年間住んでいた邸宅をそのまま使った美術館です。ルートとしては、まずは1階をぐるりと回って、2階、3階、屋上、1階のスタート地点に戻ります。

アトリエを併設しているため、とにかく家が広い!(延べ床面積:約1,085平方メートル=328坪)当時は、いかに広い家で心穏やかに過ごせることが重要だったと思います。現代の共働き時代でこの家に住んだら、掃除をするだけで週末が終わりそうです。

1階から見た中庭
3階から見た中庭

敷地の中央には「五典の池」や中庭があり、1階〜3階の部屋から眺めることができます。手入れが大変そうですが、この造りがステキでした。

3階「朝陽の間」

和室を中心に、洋室もありました。素材は木に加えて竹、コンクリートなども使い、改築、増築を重ねた和魂洋才な造りは、興味深かったです。

畳を使った和室の部屋を歩くと、現代の洋室中心で暮らす私にとって、新鮮な安らぎを感じました。障子だけで外界と内界を仕切っている点も、今では驚きです(冬は寒そう…)。

1階「天王寺玄関」

私の祖父母の家には、和室があります。私の実家には和室はありません。当然、今住んでいる家にも和室はなし。私たちは、和室の安らぎを知っている最後の世代かもしれません。「日本の家」に馴染みがなくなっていくのは必然だと思いますが、どこか寂しさも感じました。

3階から見える風景

特に、1階「寝室」、2階「素心の間」がお気に入り。池や外の風景が見えるため、とても落ち着きます。水の音が絶え間なく聞こえる点も最高でした。是非、人が少ない時間に訪れ、畳の上に座って、ボーッと風景を眺めたり、自然の音に耳を傾けてほしいです。美術館の床(畳)に座れる経験も貴重でした。

屋上のオリーブの木
屋上庭園について
蘭栽培にこだわり

3階の上に屋上庭園があることは予想外でした。そこには《砲丸》《ウォーナー博士像》が常設展示されています。これは日本初の屋上緑化菜園と言われ、朝倉彫塑塾の生徒が大根やトマト、蘭などを栽培したそうです。これは、自然に触れること=芸術の基本という朝倉文夫の考えによるものです。

《砲丸》
《ウォーナー博士像》
屋上から見えるスカイツリー
2階「蘭の間」から見る《砲丸》

✔️ センス爆発!本棚の魅力

びっしり本棚(画像引用

内装で特に気に入ったのが本棚!本で詰まった本棚が、天井までズラリと並んだ部屋は最高に格好いい!私は、毎年約150冊(累計2,000冊以上)本を読みます。大量の本に囲まれた生活は憧れます。周りを本で囲まれているだけで心が豊かになりそうです。

現代、本を読めばネットや古本屋に売る人が多いです(そもそも本を読まない人が大半)。しかし昔は、いかに家の中に本がたくさんあったかどうかで、その人の「箔」が決まる時代がありました。

立花隆は、本や雑誌を買い集め、その数は5万冊以上。自宅に図書館まで作り、整理するために人まで雇っていたそうです。

3階「朝陽の間」

本棚にとどまらず、室内に置いてある花、調度品も含めて、センスの良さを感じました。朝倉文夫の作品を見にきたはずが、建築や内装が面白いとは予想外でした!

▶︎ まとめ

買ったポストカード《親子猫》

いかがだったでしょうか?朝倉文夫の作品を見にいったはずが、予想外に、建築や人となりに魅せられてしまいました。建築を分かりやすく紹介している、今回の常設展を見られてラッキーでした。今後、朝倉文夫の作品を見る目も変わりそうです。規模の小さい美術館ですが、魅力がいっぱい詰まっていました!


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Naota_t
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