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展覧会レポ:N&A Art SITE「ヴィム・ヴェンダースの透明なまなざし」

【約2,900文字、写真約18枚】
N&A Art SITE(東京・目黒)で開催されている「ヴィム・ヴェンダースの透明なまなざし」を鑑賞しました。その感想を書きます。

結論から言うと、もともとヴェンダース氏が好きな方、映画「PERFECT DAYS」を観て興味をもった方におすすめの展覧会でした。中でも、約1時間の映像はヴェンダース氏を理解するために大変役に立ちました。

なお、私の「PERFECT DAYS」感想のnote投稿は、ビューが️12,012 (2月19日現在)となるなど、映画の注目の高さが窺い知れます。

展覧会名:ヴィム・ヴェンダースの透明なまなざし
場所:N&A Art SITE
おすすめ度:★★★☆☆
会話できる度:★★★★☆
ベビーカー:ー
会期:2024年2月1日(木)―3月2日(土)
休館日:(日) (月) (祝) 
開館時間:12:00-17:00
住所:東京都目黒区上目黒1-11-6
アクセス:中目黒駅から徒歩約5分
入場料(一般):無料
事前予約:不要
展覧所要時間:30分〜1時間
混み具合:ストレスなし
展覧撮影:ほぼ撮影可能。「Written in the west」シリーズのみ撮影不可
URL:https://nanjo.com/wim_wenders_lucidgaze/ 


▶︎訪問のきっかけ

訪問のきっかけは、1)「PERFECT DAYS」が良かったこと、2)美術手帖のXで、展覧会があることを知ったためです。私はヴェンダース氏についてほぼ何も知らなかったため、理解を深めたく行ってみました。

▶︎N&A Art SITEとは

N&A Art SITEの外観

N&A Art SITEとは、エヌ・アンド・エー株式会社が企画運営を行う東京・目黒の展示スペースです。

エヌ・アンド・エー株式会社とは、現代美術をメインコンテンツとしつつ、美術館などの企画・運営、展覧会・芸術祭などのキュレーション・運営、パブリックアートのコンサルティングなどを実施している企業です。

中でも、新宿アイランド・パブリックアート計画の企画・実現、十和田市現代美術館、弘前れんが倉庫美術館の創設と企画・運営・管理などが代表的な成果のようです。

新宿にあるパブリックアート:ロバート・インディアナ《LOVE》

「エヌ・アンド・エー」とは、代表取締役(南條史生)と、専務取締役(秋岡久恵)の頭文字でしょうか。

展覧会の配置

N&A Art SITEは、1フロアのみの構成でした。作品数は合計25と多くありません。そのため、サクッと見れば約15分で見終わります。なお、約1時間のドキュメント映像をどの程度見るかによって、滞在時間は変わります。

場所は中目黒駅から徒歩約5分。住宅地の中にあります(N&A Art SITEもぱっと見、普通の家です)。近くに郷さくら美術館があります。

住所:東京都目黒区上目黒1丁目11−6

中目黒川
近所のカフェ

▶︎「ヴィム・ヴェンダースの透明なまなざし」感想

外の看板

ヴェンダースは1971年の長編映画デビュー(略)『パリ、テキサス』(84)でカンヌ国際映画祭パルム・ドール、(略)最新作『PERFECT DAYS』(23)でも国内外から注目を集めています。写真家としても(略)世界中の美術館で展覧会が開催されています。本展では、ヴェンダースが「究極のロードムービー」と称する『夢の涯てまでも』(91)のクライマックスシーンのために制作されたHDハイデフィニションプリント作品「Electronic Paintings」(91)に加え、『パリ、テキサス』ロケ時にヴェンダースが撮影し、写真家としての氏の才能を知らしめたアメリカ中西部の風景写真「Written in the west」(83)シリーズを展示します。

公式サイトより
展覧会の風景

有名ではない小規模な展示スペースで、平日にかかわらず、常に来場者が5人ほどいて驚きました。「PERFECT DAYS」の人気ぶりを再認識しました。

私の初ヴェンダース作品は「PERFECT DAYS」でした。そのため、ヴェンダース氏については何も詳しくありません。「PERFECT DAYS」を観て、ヴェンダース氏はクラシックな人なのかなぁ、と思っていました。

しかし、この展覧会を通して、当時の最新のデジタル技術を積極的に取り入れたり、尖った表現をするような先進的な人だと知りました。

《UNISON》

ヴェンダース氏が 「究極のロードムービー」と称する 「夢のてまでも」 (91) のクライマ ックスシーンで、主人公の盲目の母親は、最新鋭の機械を通して、主人公が世界中を旅しながら撮影したイメージを脳内で 「見る」ことになります。そのシーンは、1990-91 年に東京のNHK編集室において、最先端映像技術であったハイビジョンで制作され、ヴェンダース氏によって「夢のシークエンス」 と名付けられました。

左から《FATHER AND SON》《BOY》《SIDEWALK》

映画制作の過程で、8ミリ・16ミリフィルム、ビデオ画像、写真、ドロ ーイングなどのアナログをデジタルに変換した時、見た事もない絵のような幻影を偶然に発見。そのイメージに主演俳優らの写真を撮影・合成し、鮮烈な視覚表現を作り上げました。

左から《WOMAN RUNNING》《CORRIDOR》

「PERFECT DAYS」でも、主人公の夢のシーンで似たような表現が繰り返しあったことを思い出しました。

また、展覧会には、約1時間の映像作品《ヴィム・ヴェンダース イン 東京》(1990年)が放映されていました。この映像が、ヴェンダース氏を理解する上で、特に参考になりました

《ヴィム・ヴェンダース イン 東京》:小さいテレビで流れている映像

「夢の涯までも」は、新宿や青山などでロケをした作品です。ヴェンダース氏は、日本の都市と自然、裏路地の飲み屋街、パチンコ屋など、もともと日本のカオスな風景が好きだったようです。

これらは「PERFECT DAYS」にもつながる考え方だと思いました。世界一高いタワーである東京スカイツリーのお膝元には、浅草の下町が広がっています。その対比がヴェンダース氏には魅力的に映ったのでしょう。

ヴェンダース氏曰く、小津安二郎は「失われた楽園」だそうです。ヴェンダース氏の作品は全て、小津安二郎へのリスペクトにつながっていると改めて認識できました。「夢の涯てまでも」などを含め、他の過去作品も観たいと思いました。

展覧会の風景
ヴェンダース氏のサイン
当時のインタビュー記事など

▶︎まとめ

いかがだったでしょうか?もともとヴェンダース氏が好きな方、「PERFECT DAYS」を観て興味をもった方にはおすすめの展覧会でした。約1時間の映像《ヴィム・ヴェンダース イン 東京》は、ヴェンダース氏を理解する上で大変役に立ちました。また、彼が撮った写真作品もステキでした。

ヴェンダース氏の言葉①
ヴェンダース氏の言葉②

▶︎今日の美術館飯

★3.3/ザ・シティ・ベーカリー NAKAMEGURO (東京都/中目黒駅) - BREAKFAST フレンチトースト (¥968)、SET DRINK (+¥220)

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