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【展覧会レポ】国際連合大学前広場「GLOBAL PHOTO EXHIBITION - PEACE FOR ALL」

【約4,600文字、写真約45枚】
東京・青山の国際連合大学前広場で開催されているユニクロ初のグローバル写真展「GLOBAL PHOTO EXHIBITION -PEACE FOR ALL」を鑑賞しました。その感想を書きます。

▶︎結論

「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」ユニクロらしい写真展でした。「PEACE FOR ALL」の取り組みをうまく活かしていることに加え、質の高い作品を、公共の場において無料で見られることに意義があると感じました。これを機に、難民の方の状況に意識がより高まり、行動が変わることに期待します。

ひろしまゲートパークでも巡回予定(2024年10月9日~10月15日)

おすすめ度:★★★☆☆
会話できる度:★★★★☆
混み具合:★★☆☆☆
展覧会名:GLOBAL PHOTO EXHIBITION -PEACE FOR ALL
場所:国際連合大学前広場
会期:2024年9月19日(木)~2024年9月23日(月・祝)
休館日:無休
開館時間:8:00~18:00
住所:東京都渋谷区神宮前5‐53‐70
アクセス:表参道駅から徒歩約5分
入場料(一般):無料
事前予約:ー
展覧所要時間:10分〜30分
撮影:全て可能
URL:https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/sustainability/peace-for-all/event/magnum/ 


▶︎訪問のきっかけ

メインサイン

訪問のきっかけは主に3つです。

1)ユニクロの「PEACE FOR ALL」のTシャツを7枚もっている
詳細は後述。

2)キュレーターが東京都写真美術館の学芸員
私は東京都写真美術館へ、年に5〜10の展覧会を見に行きます。そのため、そこの学芸員の方がキュレーションしている点に興味をもちました。

▼東京都写真美術館の投稿

3)ユニクロ初のグローバル写真展
ユニクロはMoMAやTateなど世界の美術館と協業しています。しかし、ユニクロが主体となって展覧会をしたことは稀だと思います。「無印良品 銀座」は「ATELIER MUJI」で展覧会を継続的に実施しています。ユニクロの写真展はどういうものか?興味がありました。

▼ATELIER MUJIの投稿

話は少し逸れますが、「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」(東京都現代美術館)、「イヴ・サンローラン展」(国立新美術館)など、アパレル関連の展覧会が続いています。そして、それらは大盛況ブランディングにも大きく寄与していると思います。

ユニクロもLifeWearの考え方をベースに展覧会を実施してはどうでしょうか?「ユニクロの服って、着心地がいい、合わせやすい、機能性がある、丈夫で長持ち」というイメージはお客様に浸透していると思いますが、「ユニクロと言えば"LifeWear"だよね」とまで浸透していないと思います。

世界中でユニクロの知名度が上昇している中、ユニクロも展覧会を実施すれば大盛況になり、"LifeWear"ブランディングにも効果的だと思いました。

LifeWearの定義(画像引用

今、「LifeWear」について改めて調べていると、過去にあったページがなくなっていました。年2回発行するLifeWear Magazineで訴求していると思いますが、「LifeWear」について分かりやすく説明するページを常設しても良いかな?と思いました。

過去に存在したサイト(画像引用

▶︎アクセス

国連大学とマーケット

国際連合大学前広場は、表参道駅から徒歩約5分。毎週土日は「Farmers Market @ UNU」が開催されています。

青山付近の横断歩道

住所:東京都渋谷区神宮前5‐53‐70

▶︎PEACE FOR ALLとは?

会場内の説明

PEACE FOR ALL」とは、ユニクロの考えに賛同した人が無償でTシャツをデザインし、そのTシャツ(1,500円)の利益の全額(価格の20%)を3つの団体に寄付する取り組みです。

現在、44種類が発売。このTシャツの良いところは、1)デザインが良い、2)日常で着られる、3)支払ったお金が世の中の役に立つことです。

チャリティTシャツをつくるなら誰でもできます。しかし、買っても着ないならゴミです。「PEACE FOR ALL」のTシャツは、着たいデザインがあることに加え、服としてクオリティが高いです。

アートや服が好きな私にとって、一石n鳥の取り組みです。

私がもっている「PEACE FOR ALL」のTシャツ
左上から:佐藤可士和、 クリスティーナ・デ・ミデル、エマニュエル・ムホー、安藤忠雄、ソール・ライター、オリヴィア・アーサー、ジュリアン・オピー

ユニクロは団体に寄付するだけでなく、ユニクロの方が実際に寄付団体と難民キャンプなどを訪れてサポートしています。こういった取り組みや姿勢は、他の企業と違う点だと思います。

▶︎「GLOBAL PHOTO EXHIBITION - PEACE FOR ALL」感想

メインサイン

PEACE FOR ALLの取り組みから、世界最高峰の写真家集団「マグナム・フォト」との新しいプロジェクトが始動します。(略)3人の写真家が世界各地の寄付先へ赴き、不安な生活を強いられながらも力強く生きる人々の姿と、支援活動の瞬間を独自の視点で撮影。(略)服のチカラ写真のチカラの融合により、PEACE FOR ALLは活動の輪をさらに大きく、そして力強くひろげてまいります。

ユニクロ初となるグローバル写真展」とリリースあった一方で、実施場所は「国際連合大学前広場」。写真を野晒しに置くのか?気になっていました(雨の予想で心配でしたが、当日は曇り)。実際は、野外に写真がプリントされた幕が設置されていました。作品数は63。

幕の裏側はこんな感じ

紹介にある「服のチカラ」「写真のチカラ」というコピーは素敵だと思いました。服には、気持ちや所属を表したり、体を守るチカラがあります。

写真を含むアートには、人の気持ちを揺さぶったり、豊かにしたり、新たなひらめきを与えるチカラがあると思います。私は写真を撮ったり見たりすることが好きなので「写真のチカラ」を肌で感じます。

そのほか、本のチカラ、映画のチカラ、アニメのチカラ、ゲームのチカラなど、さまざまなものにはポジティブな「チカラ」があると思います。「それらに支えられて、今の自分があるんだな」と再認識するコピーでした。

クリスティーナ・デ・ミデル
プラン・インターナショナルが児童婚の支援活動を行うベトナムで撮影

私は、会場のアーティスト3名の中で、オリヴィア・アーサーが気に入りました。私が購入した「PEACE FOR ALL」のTシャツもオリヴィア・アーサーでした。写真の周りに文字が書かれているデザインは、StussyのフォトTのようで格好いいです。

オリヴィア・アーサー
Save the Childrenによる、戦火を逃れたウクライナの子供たちを撮影

オリヴィア・アーサーの作品の中には、真正面から「平和」「紛争」のシーンを撮るのではなく、一見すると何気ないシーンやモノもあります。私は中でも「鉛筆」を写した作品が好きでした。実はこれ、ウクライナの紛争から逃れてきた子供たちが工作のワークショップで使った鉛筆です。

これを見て、コンポントム《爆弾の池》を思い出しました。

コンポントム《爆弾の池》(2023年5月撮影)

一見、どこにでもある池に見えます。実際は、ベトナム戦争で米軍の絨毯爆撃によってできた池です。このように、「問い」や「メッセージ」が込められており、想像力を掻き立てられる作品に私は惹かれます。

翻って、オリヴィア・アーサーの「鉛筆」から、非日常の中にある日常に気付くことができました。

リンドグシェ・ソベクワ
UNHCRが支援するキャンプで暮らすソマリア難民の日常を撮影

会場はマーケットに隣接していたため、そこから来場者が流れてくると思いました。

賑わうマーケット
マーケット横で写真展が開催

しかし、実際の来場者は青山通り側や、オーバルビル側から入ってくる人が多かったように見えました。マーケットに行く人はマーケットにしか興味がなかったのかもしれません。

青山通りからの入り口
青山通りからは真っ白な幕が目立つ

また、青山通り側から見た時、真っ白な幕が多いため、何をやっているのか分かりづらいと思いました。店頭と同様に、日本語でデカデカとユニクロらしくデザインしてはどうか?と思いました。

店内のアピール(画像引用

私は何だかんだで会場に1時間弱いました。写真展が「当たり前」のように街の風景に馴染む形で設置してあって、違和感なく来場者が入り、語らい、少し笑顔になって出ていくシーンは素敵だな、と思いました。

そのため、会場は「写真展!」という感じはなく、「歩いていたら、あ、何かやっている」という雰囲気でした。その意味では、青山通りから見える幕が真っ白なのは正解かも知れません。

国際連合大学本部

開催場所にマーケットがあるものの、来場者は国連大学の関係者が多いのではないでしょうか。そのため、もっと公共に近い場所で開催しても良いと思いました。

平和や紛争に興味がない人にこそ、よく知ってもらいたい取り組みだからです。ユニクロとしても、新しい顧客にリーチできるでしょう。「PEACE FOR ALL」なので、より「ALL」な人々に取り組みが伝われば良いと思います。

なお、この展示の中で、難民問題の根本にある背景などは読み取れませんでした。なぜ、ベトナム、ルーマニア、ソマリアに難民がいるのか?「写真のチカラ」に加え「文字のチカラ」によって、それを知ることができると、次のアクションに移す人が増えるかもしれません。

写真の詳しい内容は、音声ガイドで分かるかもしれません。しかし、音声ガイドはケータイでQRコードを読み取る必要があるため、相当興味がある人でないと実施しないと思いました。

豪華なナビゲーターのオーディオガイド

この写真展は、世界10都市で開催するそうです。国によって、設置場所や作品の素材は日本と異なるようです。

また、この写真展を振り返ると、作品鑑賞にあまり集中できなかったと思いました。野外であることに加えて、横がマーケットではザワザワしていたためです。今回の作品の背景や、写真作品を見る上では、東京都写真美術館のような場所で、落ち着いて作品と向き合いたいと感じました。

加えて、写真ではなく、幕にプリントされているため「写真と違って、伝わってくるものも伝わりづらいなぁ…」とも感じました。

専用の紙にメッセージを書いて、
くくりつける&ハッシュタグを付けてSNSに投稿すると、
エコバッグがもらえます
文中の"discrim-inaton"のハイフンはミス…?

なお、開催期間が5日と短いのが難点。1週間前に美術手帖などのアート系媒体で力強く宣伝した方が客数も増えたのでは?と思いました。

▶︎まとめ

いかがだったでしょうか?ユニクロ初のグローバル写真展は、一般的な写真展とは違った内容や方法でした。作品のクオリティが高いことに加え、公共の場所で開催することに意義のある写真展でした。難民について、考えるきっかけになったと思います。「PEACE FOR ALL」の取り組みを知った人たちが、今後の考え方や行動に1mmでも変化があればいいですネ。

▶︎今日の展覧会飯

★3.3/蕎麦青乃 (東京都/表参道駅) - 天丼とそば (¥1,280)


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