【展覧会レポ】横浜市民ギャラリーあざみ野「SHIMURAbros 雲をつかんで虹を見た」
【約3,900文字、写真約40枚】
横浜市民ギャラリーあざみ野で「SHIMURAbros 雲をつかんで虹を見た」を鑑賞しました。その感想を書きます。
▶︎結論
すごく「現代アートっぽい」作品が無料で見られるため、とてもお得な展覧会です。いつもの横浜市民ギャラリーあざみ野と雰囲気も違い新鮮です。作品の見た目がシンプルに美しいことに加え、普段の生活とは違った物の見方に気付くことができるかも。あざみ野の近くにお住みの方は必見!
▶︎訪問のきっかけ
「ぷらいまり。」さんのXに掲載されている写真に興味を惹かれたため、訪問しました。
▼2024年7月に訪問した、あざみ野市民ギャラリーの展覧会
▶︎アクセス
横浜市民ギャラリーあざみ野は、あざみ野駅から徒歩約5分。駅から峠を越えると、大きな建物が見えてきます。
住所:神奈川県横浜市青葉区あざみ野南1丁目17−3
▶︎横浜市民ギャラリーあざみ野とは?
横浜市民ギャラリーあざみ野は、2005年10月に開館。横浜市が取得した「横浜市所蔵カメラ・写真コレクション」の保存活用事業を受託しており、それがギャラリー唯一の収蔵品(?)です。
なお、横浜市民ギャラリーあざみ野は「アートフォーラムあざみ野」内にあります(名前が似ているため、ややこしい)。
建物の見た目は「大きくて、若干シュッとした公民館」という印象。こういうハコモノ的なギャラリーからは、どうしても創設者の意思が見えないため、施設全体の魅力が欠けます。もし高い志をもって運営しているなら、当たり障りのない言葉ではなく、自分の言葉で熱いメッセージを館内やHPに記載してほしいです。
「令和4年度<横浜市民ギャラリーあざみ野>収支予算書及び報告書」では、収入が183百万円(9割以上が指定管理料=横浜市民からの税金)、支出が188百万円(主に人件費82百万円、管理費62百万円、事業費26百万円)。その結果、4百万円の赤字です。
公益財団法人の基準は「公益目的事業に係る収入がその実施に要する適正な費用を償う額を超えないと見込まれるもの」と定められています。必要な経費を計算した上で、利益が±0になるように、市から「指定管理料」収入を得ているようです。
公益財団法人横浜市芸術文化振興財団は、横浜美術館など計13の施設を運営しています。
▼横浜美術館が参加する芸術祭の感想
横浜市民ギャラリーあざみ野は、企画展を年に3回実施しています。この経費はほぼ税金で賄われているため、横浜市民は積極的に利用した方が良さそうです。
また、人流の多いあざみ野駅にポスターを設置したり、広告を出すなど、客数を上げて費用対効果を最大化してほしいと思います。
▶︎「SHIMURAbros 雲をつかんで虹を見た」感想
横浜市民ギャラリーあざみ野としては珍しく、順路は2階からです。
✔️2階
2階には部屋を3つ設けています。その中にそれぞれ見せ方の違う作品が設置してあります。
1つ目の部屋では、強いライトから光が肉眼でわかるレベルで出ており、その間に鏡が置いてあります。光の線が、無機質で物質的にピーン!と真っ直ぐに伸びており、それが鏡でパキッと曲がる様子は、自然界の法則でありながら、人工的でもあるような、不思議な感覚を受けました。なお、子供は「怖い、早く出たい」と言っていました😅
今まで、横浜市民ギャラリーあざみ野では、部屋をドーンと大きく使って、そこに作品を置いただけ的な展示が多かったように思います。
しかし、今回の展覧会は、全体を通して、すごく「現代アートっぽい」いつもと違う雰囲気をビジバシ感じました。この内容で無料とはすごくお得です。公益財団法人さまさまです。
2つ目の部屋には大きなスクリーンが3つ並べられており、それぞれ異なった映像が流れています。
血が写るシーンも含まれている若干ホラーな映像でした。3つの映像は連動しているようでしていない、不思議なコラボレーションでした。
▼東京都写真美術館にもあるマイブリッジの作品
3つ目の部屋には、不思議な光の玉が写っていました。
光の玉の映像がずーっと映されています。まるで、アンディ・ウォーホル《エンパイヤ》のようでした。変わらない映像と共に、近くのウーファーから雷のような重低音が流れています。
カメラのピントが徐々に変わってきます。一体これは何の光なんだろう?と思って見ていると…。
工場を映した動画だと分かりました。その映像の中でも、雷が雷鳴とともに映っています(画面右上)。まるでクイズ番組のアハ体験みたいな作品でした。ずーっと見ていると不思議と心が落ち着きました。
その後、1階に降ります。
✔️1階
1階には、大きな空間に作品がトントンと設置されています。
主に、丸い《見かけの虹》という作品群が展示されています。
これらの素材・技法は、光学ガラス、木、プレキシガラス、インクジェットプリントです。色の使い方はインスタグラムのロゴに似ています。
《見かけの虹》シリーズは、オラファー・エリアソンの作品のようでした。
円盤を使った作品は他にもありました。表から見ると板が見えるものの、裏から見ると実際に板がないという、トリックアートのような作品です。
この作品を見ると、ダン・グラハムの作品を思い出しました。
どの作品も、東京都現代美術館などにあっても、違和感なさそうです。普段の生活では得られない物の見方や、刺激が得られるかもしれません。
✔️SHIMURAbrosとは?
SHIMURAbrosは、ユカ(1976年生まれ)とケンタロウ(1979年生まれ)の2人組、ともに横浜生まれ。活動は主にドイツで行なっています。
2014年よりオラファー・エリアソンのスタジオ(ベルリン)に研究員として在籍していたそうです。作品を見て、エリアソンっぽいと思いましたが、実際に関わりがあったとは…!
動画による作品紹介が分かりやすいです(約30分)。一見して「芸人っぽい名前」「芸人がコスプレしたアーティストっぽい格好」をしています。しかし、内容は真面目です。シンプルな見た目の作品の裏側にも、アーティスの深い考えや人生観があると知ると、より理解が深まります。
なお、映像でパイプ椅子を使っている点が気になりました。インタビューの時くらい、もっと良い椅子を使ったほうが良いと思います。
映像はずっと残りますし、椅子がシャビーだと、インタビュー内容もシャビーな気がするからです。また、30分も話しているんだから、もっと座り心地の良い環境を準備してあげてほしいです。
▶︎まとめ
いかがだったでしょうか?オラファー・エリアソンのスタジオで研究員をしていたアーティストによる作品を見ると、普段の生活とは違った物の見方に気付くかもしれません。また、見た目が美しい作品はシンプルに惹かれます。無料はお得過ぎるので、あざみ野の近くに住んでいる人は必見です!