【展覧会レポ】GMOデジタル美術館「バンクシー展」
【約4,300文字、写真約25枚】
渋谷にあるGMOデジタル美術館に初めて行き「バンクシー展」を鑑賞しました。その感想を書きます。
▶︎結論
満足感は高くないものの、一風変わった美術館のため、1度は足を運んでもいいと思いました。それは主に、1)バンクシーの本物が3点ある、2)観覧料は300円と安い、3)渋谷駅から近い、4)20分で手短に楽しめる、5)見せ方に工夫があるためです。デート、子供連れ、東京観光にも向いていると思いました。
▶︎アクセス
GMOデジタル美術館へは渋谷駅から徒歩約3分。ハチ公側と反対側にある「渋谷フラスク」に同居する「東急プラザ渋谷」2階にあります。
住所:東京都渋谷区道玄坂1-2-3 東急プラザ渋谷 2F
▶︎訪問のきっかけ
GMOデジタル美術館は、渋谷にあって、年中無休のため「いつか行ければいいや」と思っていました。しかし、DIC川村記念美術館の休館に関するニュースを見て「美術館も"明日ありと思う心の仇桜"で、行ける時に行っておかなあかんなぁ」と思いました。
渋谷でちょっと用事があったため、その後にサクッと寄ることにしました。
▶︎GMOデジタル美術館 東京・渋谷とは
GMOデジタル美術館は、2021年9月に開館。元々はバンクシーの作品を1点《風船と少女》のみ収蔵。オープン当時は「世界一小さな美術館@GMOデジタル・ハチ公」でした。美術館のテーマは「現代アートをすべての人に」。
GMOインターネットグループ株式会社 代表取締役グループ代表 会長兼社長執行役員・CEOの熊谷正寿は、アートを多く収集しており、オフィスにもアートが展示されています。特に、ジュリアン・オピーがお気に入り。2015年11月に2日間限定でオフィスも公開しました。
その後《花束を投げる暴徒》《Bomb Love Over Radar》の2つが加わり「GMOデジタル美術館 東京・渋谷」となったようです。
「世界一小さな美術館」と銘打っていたほど、美術館の広さは、目視で約4メートルx約4メートルの空間しかありませんでした。
20分交代制、1回で入れるのは10名以内だと思います。webによる事前のチケット購入がおすすめですが、横にあるミュージアムショップでも当日券を購入できます。土日でも各回で人数が溢れることは、ほぼなさそうでした。
3階に椅子が若干あるため、開始時間までそこで待つことができます。
入場料は300円とリーズナブル。300円という価格設定は、バンクシー公式のテーマパーク型展覧会「Dismaland」の入館料3ポンドをリスペクトした結果なのでしょうか。
▶︎「バンクシー展」感想
スペース内に、ヨギボーのようなクッションが6つ置いてありました。部屋全体を見渡たせるため、右奥か左奥のクッションに座るのがおすすめです。
まず最初に、映画のような大袈裟なBGMと映像が流れます。最近、流行りのイマーシブな演出でした。映像の再生中、看視員がフードを被って横で待機しています。
約10分の映像作品が終わると、幕が上がります。そこからバンクシーの作品が3つ、恭しく出現します。
看視員がカンペを見ながら作品を説明してくれます。GMOデジタル美術館の作品は、当然「ペストコントロール証明書」が入っているそうです。
《風船と少女》は、2018年のサザビーズ・ロンドンで落札直後にシュレッダー付きのフレームによって裁断され、話題となりました。ここで展示されている作品は、2004年に制作された150点のうちの1つ。関係者へ販売時のみ⼊れられるハートマーク付きのサインが作品左下に確認できます。
なお、シュレッダーされた後の《Love is in the bin》が、2021年に1,858万ポンド(約28億円)で落札されました。前回落札価格の104万2,000ポンド(約1億5,800万円)の約18倍です。
バンクシーは、作品の転売を批判する意味を込めて、シュレッダーを仕込んだにもかかわらず、それが高額で転売されるとは皮肉です。
《Bomb Love Over Radar》は、2001年にイーストロンドンの壁に描かれた壁画の版画作品。赤いレーダーマークがついたものは世界に1つらしいです。
《花束を投げる暴徒》は、板の上に直接スプレーペイントされています。マンチェスター市立美術館(イギリス)に長年所蔵されていた、世界に1点だけの作品です。
私は『バンクシー アート・テロリスト』(毛利嘉孝)を読んだことがあります(おすすめ)。
落書きは違法行為のため「アートではない」とする側面と、すぐに他人に改竄されたり消されたりするその一連の行為が「アート」にも捉えられます。バンクシーはそれを逆手にとって「ただ格好良い作品」という以上に「アートの価値とは何か?」という命題を突きつけています。
なお、バンクシーは、自身の展覧会やグッズ販売を許可していません。
日本では「バンクシー展 天才か反逆者か」(2020年)、「バンクシーって誰?展」(2021年)が開催されました。これらには「非公式」という枕詞が付けられていました。作品にはペストコントロールがありますが、展覧会はアーティスト非公認ということです。
購入した作品を展覧会で展示する際、日本の法律では、アーティストの許可は不要です。しかし、慣習としてアーティストに許可を求めるのが一般的だそうです。バンクシーは、他人がバンクシー作品の展覧会を実施することを許可していないため「非公式」だったという訳です。
法律的に問題ないのであれば、落ち度はありません(私も大学で著作権法を専攻していたため理解できます)。しかし、アーティストが許可していないのに、展覧会を大々的に実施するのは、アーティストへのリスペクトが感じられないため、どこか気持ち悪さが残ります。
また、当時、日本で実施していた「バンクシー展」では、作品と一緒に写真を撮ってウェーイ✌️という鑑賞者が、全体の99%のように見えました。作品の性質上、仕方ないですし、それがアートに興味をもつ端緒になれば良いと思います。
しかし、そのような光景にモヤモヤを感じることに加え、バンクシーが展覧会を容認していないため、私は「バンクシー展」に行きませんでした。
GMOデジタル美術館の観覧者も、作品と一緒に写真を撮ってウェーイ✌️という方が多く、作品としっかり向き合う人はあまりいませんでした。空間が狭い上に、観賞時間が約10分しかないので仕方ないのかもしれません。
なお、アーティストのグッズを発売する場合は、許可が必要です。そもそも、バンクシーはグッズ販売を許可していません。そのため、バンクシーグッズを発売している企業は、信用しない方が無難です。
ただし、GMOデジタル美術館のバンクシーグッズは、作品の所有権にもとづいたグッズのため、法律的な問題はないかもしれません。しかし、バンクシーとしてはグッズ販売を許していないため、「義理と人情」的にはグレーかもしれません。
バンクシーファンである、SOPH.の元・代表の清永浩文もそのような行為を批判していました。
バンクシーの活動は、上記のように「アートか犯罪か?」「展覧会やグッズ販売の可否」「作者の意図に反せず値上がりするマーケット」「作品を鑑賞せず消費する観覧者」など、さまざまな問題が生じます。この"問い"を考える契機を提供する行為自体が「アート」だと私は感じます。
しかし、子供に「じゃぁ私も壁に落書きしていいの?」と聞かれたら、少し困りますネ😅
鑑賞後《風船と少女》がプリントされたTシャツをもらえます。しかし、その条件が面倒なため、私は応募しませんでした(もらっても着なさそう)。
鑑賞後、全員にシール(と風船)がもらえます。また、グッズも100円引きになるのは、ありがたかったです。
全体を通して、不思議なタイプの美術館だと思いました。「これで良いのかな…」と思いますが、300円だし、深く考えないことにしました。
▶︎まとめ
いかがだったでしょうか?何とも不思議な美術館でした。バンクシーの本物を、駅の近くで、300円と値段も安くサクッと見られるため、意外とおすすめだと思います。見せ方も一般的な美術館とは一味違いました。デートや子供連れ、東京観光にも向いていると思います。
▶︎今日の美術館飯
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