展覧会レポ:五島美術館「古伊賀―破格のやきもの―」
【約3,100文字、写真約35枚】
初めて五島美術館に行き「古伊賀―破格のやきもの―」を鑑賞しました。その感想を書きます。
※既にこの展覧会は終了しています。
結論から言うと、良かった点は、❶五島美術館の背景を知れたこと、❷茶道の道具について詳しくなったこと、❸庭園が気持ちいいことでした(古伊賀の作品はどれもほぼ同じに見えましたが…)。茶道に興味がある方、既に携わっている方には、特におすすめの美術館でした。
▶︎訪問のきっかけ
五島美術館という名前を初めて聞いた時、長崎の五島列島にある美術館と思っていました。その後、電車で東急大井町線に乗った際「五島美術館に行く方は上野毛駅で降りてください」的なアナウンスを聞いたため「会いに行ける美術館」だと分かり、興味をもちました。
▶︎アクセス
五島美術館は東急大井町線の上野毛駅から徒歩約5分。二子玉川駅からも徒歩約15分で行けます。私は、上野毛駅から歩いて行きました。
知らない美術館、知らない駅に行くときは、ワクワクします。行ったことがない上野毛駅に、何の期待もしないで行きました。驚いたことに、上野毛駅は安藤忠雄さんがデザインした駅でした。
▶︎五島美術館とは
五島美術館の横に「五島」と表札がかかった豪邸がありました。五島美術館に行く前、「もしかして…?」と思っていました。
五島美術館は、東急電鉄の創業者・五島慶太氏がつくった美術館です。なお、五島慶太氏が亡くなった翌年、五島美術館が完成したそうです。庭園を含めると、約6,000坪あることが特徴です。
美術館の入り口で「東急セキュリティ」の札を付けた方が警備していました。東急と関係があるのかな?と思いましたが、そういうことなんですね。
五島美術館のコレクションは、日本と東洋の古美術品(明治期以前)をもとに構成され、「源氏物語絵巻」をはじめとする国宝5件、重要文化財50件を含む約5,000件が所蔵されています。
電鉄会社に関連する美術館は、近鉄の松伯美術館をはじめ、多くあります。お金がたくさんあると美術品蒐集に行き着くのでしょうか🤔
▶︎「古伊賀―破格のやきもの―」感想
古伊賀とは、三重県の伊賀で、桃山時代から江戸時代に作られた焼き物の総称です。古伊賀の特徴は、ヘラ工具を使用した波状の文様や格子状の押し型文様の他、ゆがみ、緑色のビードロ、灰かぶりや焦げ、鉄釉を垂らすといった作為性の強い意匠(引用)だそうです。
最終日に近かったからか、朝一の時間に行ったにもかかわらず、観覧者が多かったです。観覧者の年齢層は高め。写真撮影は1点を除いて全て不可。
展示は全94点。様々な美術館などから取り寄せています。五島美術館の所蔵は4点。作品全てに20文字x10行ほどの説明が丁寧に書かれていました。
展示室1には、様々な茶道に関する道具が展示されていました。私は茶道の知識が全くないため、勉強になりました。展示されていた道具は以下です。
・花生…花を生ける器(花入とも言う)
・水指…水を入れる器。
・香合…香木や練香を入れる器。
・茶入…抹茶を入れる器。
・茶碗…お茶を飲む器(古伊賀はゴツいため不向き)
・鉢…お茶前の食事で香の物を入れる器。
・壺…茶葉を貯える器。
展示室内には、似たような花生や水指などが横にずらーっと並んでいます。丁寧な説明がありますが、ぱっと見、私にはほぼ同じに見えました(写真がないため、伝わりづらいですが)。他の観覧者の中には「みんな同じに見えるね」「お茶をやっている人じゃないと分からないね」と言う人もいました。一つだけ適当に部屋に転がっていても、作品と気付かなさそうです😅
私のような知見がない人ではなく、茶道をされる方が見れば、荒々しい自然がつくる偶然の産物にうっとり、楽しめるのでしょうか。作品をたくさん見たり、界隈の人の評価を勉強することで、理解が深まると思いました。
茶道界では、茶室に何を飾るか、どういう花生や水指などを使うか、どんな花を生けるかで、その人の感性が評価されているのかな、と考えながら鑑賞していました。
メインビジュアルに使われている五島美術館所蔵、重要文化財の《伊賀耳付水指 銘 破袋》。大胆に割れており、存在感や趣を感じました。なお、展示する場所がすごく分かりづらかったです。メインビジュアルであれば、もっと目立つ場所に展示することに加え、「重要文化財」の表記を赤文字にするなど「見てくれ!すごいんだ!」と訴える工夫があると良かったです。
また、順路が一部、分かりづらかったです。展示室1では、案内パネルの真横に、最後の番号の作品が展示されていました。そのため、何も考えないと、最後から見てしまい、観覧者がぶつかる光景を何度も見ました。順路を分かりやすく明示した方が良いと思います。
▶︎庭園
五島美術館の特徴の一つが、総面積の半分以上を占めている庭園です。また、庭園の中に茶室や古墳もありました。私が行った日は、ちょうど茶室でお茶会を催しており、中から楽しそうな声が漏れていました。
庭園の手入れはしっかりとなされていました。中を歩くと、都会である二子玉川の一駅隣とは思えない風景で、空気さえ澄んでいる気がしました。展覧会の鑑賞で目が疲れた後に、庭園鑑賞はピッタリでした。
▶︎まとめ
いかがだったでしょうか?五島美術館の背景、茶道の世界観を知ることができて勉強になりました(古伊賀はどれも同じに見えましたが…)。五島美術館の存在感は強くないかもしれませんが、気持ちいい庭園もあり、二子玉川も近いです。また、茶道をする方には特におすすめの美術館と思いました。
▶︎今日の美術館飯
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