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【展覧会レポ】TOTOギャラリー・間「大西麻貴+百田有希 / o+h展:⽣きた全体ーA Living Whole」
【約3,600文字、写真約30枚】
TOTOギャラリー・間に初めて行き「大西麻貴+百田有希 / o+h展:⽣きた全体ーA Living Whole」を鑑賞しました。その感想を書きます。
▶︎ 結論
建築を学んでいたり、生業にしている人に、特におすすめのギャラリーでした。展覧会では、大西麻貴+百田有希が、時間的・空間的に、そこで生きる人の生活を深く考えた上で設計していることが分かりました。乃木坂駅から目と鼻の先のため、六本木にある美術館とセットの訪問がおすすめです。また、TOTOの意外な一面も知ることができたため、勉強になりました。
おすすめ度:★★★☆☆
会話できる度:★★★☆☆
混み具合:★★☆☆☆
展覧会名:大西麻貴+百田有希 / o+h展:⽣きた全体ーA Living Whole
場所:TOTOギャラリー・間
会期:2024年9月4日(水)~11月24日(日)
休館日:月曜
開館時間:11:00~18:00
住所:東京都港区南青山1丁目24−3 TOTO乃木坂ビル
アクセス:乃木坂駅から徒歩約1分
入場料(一般):無料
事前予約:ー
展覧所要時間:30分〜1時間
撮影:すべて可能
URL:https://jp.toto.com/gallerma/ex240904/index.htm
▶︎ 訪問のきっかけ
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1)このギャラリーのためだけに乃木坂に行く気が起こらなかったこと、2)ギャラリーの閉館期間が長い傾向にあるため、中々行けませんでした。この日は、森美術館に行った帰りに寄ることができました。
▼ 同日に行った、森美術の展覧会の感想
▶︎ アクセス
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TOTOギャラリー・間へは、乃木坂駅から徒歩約1分、六本木駅からも徒歩約10分です。ギャラリーはビルの3階と4階にあります。
住所:東京都港区南青山1丁目24−3 TOTO乃木坂ビル
▶︎ TOTOギャラリー・間とは?
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人間・時間・空間、そしてそれぞれの間合いという、日本特有の概念を表象する「間」の一字を名称とした「TOTOギャラリー・間」は、社会貢献活動の一環としてTOTOが運営する、建築の専門ギャラリーです。1985年10月の開設以来、TOTOギャラリー・間は国内外の建築家の展覧会にこだわり続けてきました。
✔️ TOTOとは?
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TOTO株式会社は、北九州市に本社を置く、衛生陶器をはじめとする住宅設備機器などの製造販売を行うメーカーです。日本では、トイレ、洗面器などの衛生陶器で約6割のシェアがあります。ウォシュレットを開発した企業としても有名です。
✔️ なぜギャラリー?
そんなTOTOが、
⚫︎なぜ、ギャラリーを運営するのか?
⚫︎なぜ、建築専門のギャラリーなのか?
私は、TOTOといえばトイレのイメージしかありませんでした。事前知識ゼロでギャラリーに足を踏み入れた時は、理解が追いつきませんでした。TOTOの公式サイトに、以下の記載がありました。
事業に関わりの深い「建築・デザイン・水まわり」を中心とした生活文化に寄与する社会貢献活動を行っています。その一環として、主に建築文化の醸成・育成に寄与することを目的に、「TOTOギャラリー・間」と「TOTO出版」の2つの活動を行っています。
トイレを含め水まわりは、単独では存在できません。空間とのトータルコーディネートが重要です。そのため、社会貢献の目的で、建築のギャラリーを運営しているのです。TOTOギャラリー・間の公式サイトでも、その点を明確に補足していると、より良いと思いました。
なお、過去も含めた運営委員に、安藤忠雄(現在は特別顧問)、田中一光、吉岡徳仁、妹島和世など、錚々たるメンバーの方がいらっしゃいます。そこからは、気合いの入れようが伝わってきました。
✔️ 北九州にはミュージアムも
北九州の小倉には「TOTOミュージアム」があります。
2017年に創立100周年を迎えるTOTOの記念事業として、2015年8月に開設されました。見学は無料。TOTOギャラリー・間で開催した展覧会の巡回も、定期的に実施しています。
✔️ 出版業も行う
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TOTOには出版部門があり、1989年の創設以来、建築・デザイン・生活文化に関連した書籍を発行しています。1995年からはTOTOギャラリー・間と連動した書籍も刊行しています。また、乃木坂ビル2階で、建築関連の書籍をメインに扱うBookshop TOTOを運営しています。
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書籍の発行は、累計約330点、稼動点数は約200点。年間8~10点ほどの新刊を発行しているそうです(2012年現在)。「文化活動は続けることに意義がありますから、刊行点数を減らさざるを得なくても継続しています」とのこと(参考)。
なお、TOTOと同じくトイレを扱うLIXILも、都市、建築、デザイン、生活文化をテーマにして、2021年まで出版業をしていました(参考)。
▶︎ 「大西麻貴+百田有希 / o+h展:⽣きた全体ーA Living Whole」感想
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大西と百田(略)が建築をつくるとき、多様な背景や特性をもつ利用者や地域の人々の声、その土地に伝わる物語にまで耳を傾け、人の営みを丁寧に拾い上げながら建築に翻訳してきました。(略)個々の価値観や機能を出発点に、それらが折り重なり合うことによって誰もが自分の居場所を見つけることができるように、「生きた全体」を考えることとは、各存在のかけがえのなさを大切にし、寛容で多様な社会の理想形を、建築を通して示そうとしていると言い換えられるのではないでしょうか。
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会場は3階(+外の庭)と4階で構成されています(全体で約240㎡)。
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スペース内には、実際に手がけた建築や、架空のものも含め、さまざまな模型が展示されていました。
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安藤忠雄の「住吉の長屋」みたい
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中でも、奈良の香芝にある施設が印象に残りました。「Good Job! センター香芝」は「障害のある人とともに、アート・デザイン・ビジネスの分野をこえ、社会に新しい仕事をつくりだす場所」だそうです。
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GoodJob!センターは、たくさんの壁や屋根、天井や家具が集まってできた空間です。みんなの気配が感じられるひとつながりの空間に、明るい吹き抜けのギャラリーや少し暗く落ち着いた作業場所、印象的な窓辺の机など、さまざまな環境が生まれました。それぞれに、気持ちのいい居場所を見つけてもらえると嬉しいです。
アトリエでものづくりをしている人もいれば、カフェでお茶をしている地域の人もいる、2階で発送作業をしている人もいる。誰がケアする側で誰がケアされる側なのか、その境界が曖昧になる価値観、それぞれの人のかけがえのなさを讃える空間をめざした、とのこと。
▼ Good Job! センター香芝は、HPもステキ
建築は造って終わりではなく、そこでは生活があり、仕事があり、人々の長期的な営みがあります。その地域に密着しないと、本当の意味での良い建築はできないと感じました。この考えは小売業と同じですネ。
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3階から庭に出て、階段で4階に進む珍しい造りです。
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4階では、3階とも連動した内容が、模型に加え、主にパネルを使って展示されていました。4階は狭いため、ベビーカーは入らないと思います。
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私は、TOTOギャラリー・間に初めて来ました。場所は六本木の繁華街から離れているし、来場者はほとんどいないと思っていました。しかし、びっくり。会場内では常に約10人の来場者がいました。
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4階に、3階にある「Good Job! センター香芝」の説明もありました。
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TOTOギャラリー・間は、建築が好きな人(建築を学んでいる人、生業としている人)が集い、楽しめる場所という印象を受けました。アートというよりは、実用寄りの展示が多かったように思います。
▶︎ まとめ
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いかがだったでしょうか?TOTOの意外な一面を知ることができたことに加え、知らなかった建築家の実績や、思いを知ることができました。特に、建築を学んでいたり、生業にしている人にはおすすめです。乃木坂駅からすぐの場所にありますし、六本木にたくさんある素敵な美術館に行ったついでに、TOTOギャラリーにも寄ってみてはどうでしょうか。
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