【展覧会レポ】群馬県立近代美術館「群馬からみる日本の美 戸方庵井上コレクション5つの扉」「コレクション展示」
【約3,800文字、写真約45枚】
群馬県立近代美術館に初めて行き「開館50周年記念 群馬からみる日本の美 戸方庵井上コレクション5つの扉」「コレクション展示」を鑑賞しました。その感想を書きます。
※本展覧会はすでに終了しています。
▶︎ 結論
印象に残った点は、1)磯崎新の建築が面白い!、2)「群馬の森」は子供が大喜び!でした。展覧会については、企画展よりもコレクション展の方が見応えたっぷりでした。しかし、両展示にはストーリー性が乏しく「ふ〜ん」で終わる人が多いと思いました。今後は、撮影可能にしたり、もっと子供フレンドリーな企画を実施するなどの対策が必要ではないでしょうか。
▶︎ 訪問のきっかけ
群馬旅行に行った際、県内の美術館を検索したなかで、群馬県立近代美術館に行くことに決めました。それは主に、1)高崎駅からバス1本で行ける、2)時間があれば博物館も行ける、3)大きな公園がある(子供には最重要!)ことによります。
▶︎ アクセス
群馬県立近代美術館(群馬の森)へは、高崎駅からバスで約30分。美術館がオープンする9時半から入館したい場合、9時台(3本あります)のバスに乗ると良いです。なお、私は9時40分のバスに乗ったところ、ほぼ満員だったため、ベビーカーと一緒に乗車するのに少し苦労しました。
▶︎ 群馬県立近代美術館とは
✔️ 今年で50周年の歴史
1967年に群馬県明治百年記念事業準備会議が発足。1974年に群馬県立近代美術館が開館、「群馬の森」が供用開始(今年で50周年!)。1979年、群馬県立歴史博物館開館が開館しました。
群馬県立近代美術館は、県ゆかりの作家作品、日本・海外の近代美術、現代の造形表現など、収蔵作品は約2,100点(2023年3月時点)。また、日本と中国の古書画による「戸方庵井上コレクション」も229点を所蔵しています(井上房一郎は群馬県出身の実業家)。
なお、HPには、美術館建設の経緯、目的(パーパス、ミッションなど)の開示がないことが気になりました。それらに美術館の独自性があり、そこに基づいて美術館の運営、展覧会の企画が始まるはずです。「所詮は100年記念でつくられた美術館だから、”仏作って魂入れず”なのは仕方ないのかなぁ」と思ってしまいました。
✔️ 磯崎新による四角い建築
建築を担当したのは磯崎新です。1971年、井上房一郎は、作家の斎藤義重の紹介で磯崎新を知り、推薦したことがきっかけ。1971年では、磯崎新の北九市立美術館(1974年)も水戸芸術館(1990年)もないため、先見の明がありましたネ。
▼ 磯崎新の代表作の1つである水戸芸術館
この美術館の特徴は何といっても、たくさんの正方形。建築は、一辺を12mとした立方体フレームの集積を基本構造とし、外壁のアルミパネルなどは一辺120cm、館内の壁面や床面のパネルは一辺60cm、床のタイルは一辺15cmの正方形となっている面白い造りです。
立方体を基準としているため、流動的に増殖可能というコンセプトもありました。実際に、シアター棟(1994年)、現代美術棟(1998年)が増築されました。特に、現代美術棟は採光環境も良く、私のお気に入りの場所でした。
✔️ 田中一光によるロゴ
美術館のロゴは、奈良県出身の田中一光によるもの。磯崎新の建築コンセプトに則って、正方形に9文字が配置されたデザインです。
✔️ その他
館内には、子供用に絵本コーナーがありました。これはとてもいい取り組みだと思います!基本的に、子供にとって美術館は面白くありません。そこで有効なのが、絵本に加え、塗り絵、触れるアート、寛容な看視員だと思います(機会があれば、noteでまとめたいです)。
▶︎ 「開館50周年記念 群馬からみる日本の美 戸方庵井上コレクション5つの扉」感想
この日は、時間が十分でなかったことから、群馬県立近代美術館の全体をサクッと楽しむことにしました。なお、展示室内はすべて撮影禁止です。
群馬県立近代美術館の特徴でもある「戸方庵井上コレクション」を軸に、全98点を5章で分けて展示していました。国宝は1点、重要文化財(地方指定含む)は9点です。
戸方庵に敬意を払っているためか、キャプションでは「戸方庵井上コレクション」は赤囲みで目立っていました。その一方で、俵屋宗達の「国宝」はちょこんと記載されているのは、少しクスッとしました。
特に、印象に残ったのは、長谷川宗宅《柳橋水車図屏風》、伊藤若冲《菜蟲譜》、伝 司馬江漢《時計図》、作者不明《文房図》でした。
▼ 《柳橋水車図屏風》は岡田美術館でも見ました
全体を通して、作品は粒揃いではあるものの、展示方法が平凡だったため、メッセージ性が低い企画展だと思いました。「戸方庵井上コレクション」を軸にしているため仕方ない部分はありますが、記憶に残りやすいキュレーションや見せ方の工夫が必要ではないでしょうか。
▶︎ 「コレクション展示」感想
コレクション展は、2階の展示室2〜7で実施されています(約150点)。企画展同様、コレクション展も撮影禁止です。
西洋近代は、ピサロ、ルノワール、モネ、ムンク、ルオー、ドラマンク、シャガール、ローランサン、ドゥフィ、ピカソなど、多くの人が知っている有名人の絵画が並んでいました。
中でも、1998年に増築された現代美術棟は、大きなホワイトボックス空間だったため、見応え抜群。天井真ん中に採光の窓がある珍しい造りでした。
現代美術棟の中でも、福田美蘭《still life》がめちゃくちゃ面白くて、釘付けになりました。厳かな西洋絵画(?)が、額ごとスパッと切られた作品です。写真で紹介できず残念😩
なお、全て撮影禁止は満足度が下がると思いました。例えば、企画展は撮影禁止でも、コレクション展は一部でも撮影可能にするなど、メリハリをつけた方がいいです。
群馬県立近代美術館のアクセスは、良くありません。そのため、来場者に勝手に情報を拡散してもらって、客数を増やすなどの工夫が必要です。HPも含めて、今の時代にフィットしていないと思いました。
▶︎ まとめ
いかがだったでしょうか?企画展よりも、コレクション展の方が楽しい展覧会でした。ただ、どちらもストーリーが乏しいため、特に示唆は得られませんでした。価値があったのは「磯崎新の建築が面白い」「”群馬の森”に子供は大喜び」だと思いました。
▶︎ 群馬の森について
群馬県立近代美術館の魅力の1つが「群馬の森」の中にあることです。とても広大で自然が豊かなため、とても気持ちがいいです。
「群馬の森」で素晴らしいのが「あそびの広場」!広い空間の中に、大きくて楽しめる遊具や、小さい遊具が点在しているため、子供は何時間でも遊べます。このために、子供をココに連れてきたと言っても過言ではないです。