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ダブルチェック職人の朝は早い 〜ZIPファイル送信とダブルチェックの日々

ーーダブルチェック職人の朝は早い

「おはようございます

ーーそう挨拶するのは、某企業に勤める総務のAさんだ。挨拶一つから朴訥とした誠実さが滲み出ている

朝、早くて大変ではないんですか? とスタッフが聞くとA氏は答える

「仕事が待っていますからね。それをこなすことを考えると苦はありませんよ

そう笑いながら答えた。
出社すると、すぐにPCにスイッチをいれた。年季の入った一体型のPCだ。

「ああ。古いでしょう。社長からは変えてやるって言われているんですが、気に入ってしまってね。わざわざ、使わせてもらっているんですよ

我々の思ったことを察したか、そう行ってきたA氏。
年代物PCは、職人がコーヒーを淹れてきた時にようやく「7」の文字をディスプレイに表示させた

「やっぱり慣れた道具の方がやりやすいですからね

職人は「時間があるから」といって、我々スタッフにもコーヒーを振舞ってくれた。そのころにようやくPCは立ち上がり切る。
その頃にはすっかり始業時間を過ぎていた。

「さて、と

そういって、PCソフトを立ち上げる職人。
そして、メールボックスの未送信に溜まっているメールを一つ一つチェックしていく。

ーーこれはなにをしているんですか?

「ああ。これは、メールに添付されたファイルがちゃんとパス付きのZIPファイルになっているかを確認しているんですよ

そういって職人は一つ一つ、メールを確認する。
指差し確認をしながら、メールに添付されたファイルを見て、暗号化をチェックする。
そして、手元においた紙にチェックをつけて、全てにチェックをつけたら、
送信ボタンを押した。

そして、Eメールは電子の世界へ放出された。

ーー手元のシートはなんですか?

「これはチェックシートですよ。申請された分を本日、チェックして送信するためのシートです。

聞くと、職人は答えてくれた。
流れとしては 各職員がメールを作成し、ファイル添付をする場合は、パス付きZIPファイルをつける。職員はそのまま送信はせずに、職人へチェックを依頼する。
職人がチェックをしたのちに、職人が送信を行うという流れだ。

職員が職人にチェックを依頼する際に、このチェックシートにメールの件名と担当者を書いて、提出する仕組みになっているという。

ーー全職員の、ですか。

「はい。

相当な量になるとスタッフは思った。

「基本的に前日の午後申請分を、今日の午前中に処理します。そして、今日の午前に依頼されたものを午後にチェックする、という感じですね

職人は一日の流れを説明してくれた。職人の口調とは裏腹に仕事の過酷さが伝わってくる。

「メールの先には相手がいますからね。時間に遅れるわけにはいきません

そうだろう。メールは瞬時に届く、というが世の常識だ。要求されるレベルは一刻も早くといったものだろう。

職人に苦労を聞くと、仕事自体に苦労と思うことはない、と答えてくれた

「この仕事にはやりがいを感じています。この職務ができてから、ZIPのパス漏れがなくなりましたしね。ただーー

職人は続ける

「職員の中には一刻でも早くメールを届けたいと思っている人もいます。特に若手はリアルタイムなやり取りになれているので、依頼して翌日の朝に送信されるというのに戸惑われる方もいますね

ーーたしかにSNSが発展し、即時のやり取りがふつうになっている中、この仕事の意味が理解できない人もいるだろう

「その気持ちもわかります。しかし、なくすわけにはいかない

ーーそう答える職人の目には自身への職務への誇りが感じられた。

「でも、ちょっとでも早くできるように、いままで紙ベースでの申請だったものをエクセルベースに変えようという働きをいましています。

ーーなるほど

「相手に早く届けたい、という気持ちは一緒ですからね


ーーー仕事に誇りを持ちながらも、時代の流れに応じて、仕事のやり方を変えようとする職人。そこには現代人が忘れかけている仕事の本質に向き合う姿勢が感じられた。


次回は、もう1人のダブルチェック職人。エクセルの合計値が正しいかどうかを電卓で叩いて確かめる職人を紹介します。



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Nazy
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