本の装丁を考えるー随筆編1ー
こんばんは、七緒らいせです。
今回は【文学フリマ東京36】で頒布する本の装丁について、お話したいと思います。(装丁といいましたが、正確にいうと本の造りの部分の話です。)
私は基本的に中身と外側、全部自分で作ってしまう人です。中身を書いて、レイアウトして、表紙をデザインして、などなど。
そうすると、文学フリマのブースで「執筆も装丁も全部自分でやったんですか?」と割と頻繁に声をかけられます。
おそらく、文学フリマに出ている人の大部分が「文字書き」の人たちなので、デザインまわりのことは外注に出すことが多いから、不思議に思われるのでしょう。
なので、本の中身を書いた人間が、そのあと何を考えて装丁を決めていくのか、その過程を少しまとめてみようと思います。
文学フリマ36では、随筆集と詩集との2冊を頒布します。
今回はまず、きちんと本の形をした(?)随筆集の方を取り上げて、その売り方に関する思考の部分をまとめていきます。
これから文学フリマのブース設営を考える人にも有効だと思うので、ぜひお目通しください!
1.前提条件をリストアップする
本を作ってイベントで売るとき、何を目的にするのかは人によって違うと思います。
自分の作品を発表することだったり、お小遣い稼ぎだったり、〆切がないと完成させられないからイベント出店を〆切にしたり、などなど。
ただ、共通する思いは「売りたい!」と「赤字にはしたくない!」だと思います。
――たくさんの人に読んでほしいから値段を下げたい。
――赤字覚悟でやってはいるものの、あわよくば黒字にしたい。
――せっかくだから目を引く装丁にしたい。
――印刷代にはお金をかけられない。
このような葛藤に苛まれながら、発行部数を想定し、値段を考え、印刷所、紙の種類などを決めていくことと思います。
これらが本の装丁を考えるさ際の前提条件になってきます。
イベント頒布とはいえ「ものを売る」試みなので、ある程度マーケティング的な思考が必要だと思っています。
特に装丁は、本の「パッケージ」の部分であり、宣伝部分であり、一番売るための思考が必要になってきます。
みなさんが書店で本を買うとき、表紙の装画に惹かれて手に取ることがありますよね。そこで名前も知らなかった作家との出会いを果たすケースもあるでしょう。
文学フリマという場は、道行くお客さんのほとんどが、自分のことを知りません。
加えて、お客さんが中身をじっくり読んで購入の判断する場合はあまり多くありません。
なので、書店以上に装丁が重要になってくるのです。
前置きが長くなりましたが、このようなことを考えながら今回の随筆集の前提条件をリストアップしていきます。
だいたいこんなところでしょうか。
ざっくりと4P分析(Product・Price・Place・Promotion)に基づいて書いてみました。
(自分の場合、Priceの部分は売り方の方針が固まって装丁にかかる費用が決まった後に決めます。なのでとりあえず、予算と頒布数の目安だけ書きました。)
これらの前提条件をもとに、今回の装丁の方針を「売りたい」と「赤字にしたくない」に即して決めていきます。
・「売りたい」ので、「ユニークな装丁にしたい」
本を手にとって欲しければ、まずは「目を止めてもらう」ことが必要です。
文学フリマに行ったことがある方ならわかると思いますが、そのブースを目当てに人が来てくれるブースはごく一部で、大体のブース(個人参加は特に)は、その場で初めて知って、買ってもらうことがほとんどです。
なので、まずは何かしら興味を持ってもらう必要があります。
「何かしら」というのがポイントで、これは必ずしも本である必要はないと思っています。
大きなポスターだったり、不思議なオブジェだったり、素敵なアクセサリーだったり。
道を歩いている人の興味を引っ掛ける釣り針は、もちろん多いほうが有効です。
なので、本の装丁だけでなく、ブース設営も、「興味の釣り針を作る」をベースに考えていくと良いと思います。
でも、とりあえずは本を売っているのだから、パッと目を引く本を作ろう、と考えていきます。
これは詩のブースに特有なことかもしれませんが、ユニークな形の本と手製本は人の足を止めさせる確率が高いな、と思います。
一般的に流通している本のなかでも、詩集や句集、歌集は凝った装丁が多い方です。
その理由のひとつに、「余白が多い」ことが挙げられるでしょう。
余白までも、作品の一部としていかに楽しませるか。
この部分に、大きく装丁が関わってきます。
だから、詩のブースの周りを歩いている人、つまり「詩集」というひとつの体験に興味がある人は、装丁に対するアンテナが敏感です。
なので、詩や短歌・俳句のブースは凝った装丁にすることが有効ですし、実際に凝った装丁が多いです。
(私なんかは、凝った装丁を見たいがためにこの辺りのブースをふらふらしています。)
また、今回から見本誌ブースが復活しました!
見本誌ブースは、もしかしたら文学フリマに特有かもしれません。
全てのブースの新刊が一堂に会した場が設けられます。
意外にこの場も宣伝 Promotion として有効です。
特徴的な作りの本は特に、その空間で目につくようです。
(コロナ禍以前、「見本誌ブースで見て来ました!」というお声をそこそこ聞きました。)
そのため、今回のひとつ目の軸として「ユニークな装丁」を立てておきます。
・「赤字にしたくない」ので、「発行部数を抑えたい」
これは、先の項のような頒布に対してプラス要素ではなく、むしろ消極的な要因です。
何度か冊子印刷をしたことのある人なら分かるように、本は刷れば刷るだけ安くなります。
そのため、ここ数年は私も50〜70部ほど一度にまとめて刷っていました。
しかし、新刊として出して売れるのは、(刺繍の場合)多くても20冊程度。
半分以上を在庫として余らせていました。
これでは本の原価に対して黒字になるように値付けしても、意味がありません。
結果余らせてしまっては大きな赤字です。
なので今回は、そもそもの発行部数を抑えて、売り切れる部数を作ろう!というのが二つ目の軸になりました。
以上2つの軸から導き出したのは、「面白い形の手製本を作ろう!」でした。
次に、具体的に面白い形を考えていきたいと思います。
以下目次は、明日以降の目次の予定です。
文学フリマ当日までの毎日連載のような形で書いていきますので、ぜひお付き合いください。
2.中身の特徴を抽出する(次回予定)
3.製本の方法を考える(次回予定)
4.紙を決める(次回予定)
5.製作開始~完成(次回予定)
そして!鋭意製本中の七緒らいせの意欲のために!ぜひ文学フリマのカタログの方に「気になるボタン」をお願いいたします↓
https://c.bunfree.net/c/tokyo36/h1/P/13
それではまた明日お会いしましょう、おやすみなさい。
七緒らいせ
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