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短編小説

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#短編小説

【小説】僕と絵描きとゴールデンレトリバー

【小説】僕と絵描きとゴールデンレトリバー

第二回あたらよ文学賞応募しましたが、ダメだったやつです。
他の方の講評を読んで、お題に対する発想力や設定の時点で全然及ばなかったんだなと思いました。
少し恥ずかしいけど、やっぱり自分が嫌いな物語ではないので。ここに置いておきます。

懲りずにまた書きます!

(約5,000字)

「もしも孤独に色があるなら、俺は、青だと思うんだよ」
 パレットの上で絵の具を捏ねながら、ゴウさんが言った。
「孤独…

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【小説】先生の花

【小説】先生の花

(約10,400字)

 いまはもう草原と化したグラウンドの真ん中に、先生は、ただひとりで立っていた。

 その凛々しい姿を目にした瞬間、あたりに立ち込めていた蝉の声が、しゅわっとやんだ。考えるよりも先に、身体が動く。わたしは草を踏み分け、先生のもとへ走り出していた。

 近くまで来ると、わたしは先生を見上げる格好になった。

 草の青さをいっぱいに載せた風が吹き、先生の身体がゆらゆらと揺れる。そ

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【小説】地球の上であなたと

【小説】地球の上であなたと

(約13,000字)

 バンのスライドドアが開くと同時に、金木犀の匂いを載せた空気が車内に流れ込んできた。後部座席にいた僕は顔を上げ、こんな都会の街にも咲いているんだなと思った。
「ここで降りてください」
 運転席から、コバヤシが人の良さそうな顔で振り返って言う。
「ここで、ですか?」
 聞き返しながらも僕はシートベルトを外してカバンを肩にかける。
「はい。あなたが面会を希望した方は、今日この場

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【小説】始まりの兆し、終わりのキッカケ

【小説】始まりの兆し、終わりのキッカケ

(約9,800字) 2023/12/26追記

「月が出てる」
 半歩先を歩くダイスケさんが白い息を吐きながらそう言った。12月26日の月曜日だった。
 道路に積もって凍った雪を踏む、わたしたちふたりの足音が、静かな住宅街に響いていた。綿をちぎってばらまいたような雪がふわふわと舞っている。
 ダイスケさんの視線を追いかけて東の空を見上げると、山吹色のほそい月が浮かんでいた。下弦の月だ。
 夜空が瞬

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