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#短編小説
【小説】地球の上であなたと
(約13,000字)
バンのスライドドアが開くと同時に、金木犀の匂いを載せた空気が車内に流れ込んできた。後部座席にいた僕は顔を上げ、こんな都会の街にも咲いているんだなと思った。
「ここで降りてください」
運転席から、コバヤシが人の良さそうな顔で振り返って言う。
「ここで、ですか?」
聞き返しながらも僕はシートベルトを外してカバンを肩にかける。
「はい。あなたが面会を希望した方は、今日この場
【小説】始まりの兆し、終わりのキッカケ
(約9,800字) 2023/12/26追記
「月が出てる」
半歩先を歩くダイスケさんが白い息を吐きながらそう言った。12月26日の月曜日だった。
道路に積もって凍った雪を踏む、わたしたちふたりの足音が、静かな住宅街に響いていた。綿をちぎってばらまいたような雪がふわふわと舞っている。
ダイスケさんの視線を追いかけて東の空を見上げると、山吹色のほそい月が浮かんでいた。下弦の月だ。
夜空が瞬