佐倉誰

北大短歌会OGの佐倉誰(さくら すい)です

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【短歌連作19首】まんじゅうこわいを信じる人を信じてみるのはどうだろう

鬼の目のように満月光る夜テーブルに隠れて悪だくみ 化粧水毎日床にこぼしてる私ですら星座は守るかな ばかでかいショーウィンドウで爪とぎをする将来のために積み立て 信号ですっと目を逸らした彼が聖☆おにいさんとか読んでたらうれしい 顔よりも大きな花束抱きながら喋るのは花束の腹話術 当てずっぽうのこたえが当たるわけないねあのちゃんのデスボイスありがとう 雨風に濡れた新聞とアスファルトはげしく愛し合うむごい夜 どんぶりに顔をうずめて泣くことが異界の入口とは思わずに 母親

    • 【短歌連作50首】光年

      見ていたい洗濯機の透明なふたみたいあなたに両手をついて 嘘に嘘かさねて夢のような日々すごしてミラノサンドできあがり なにかわたしを呼んでいるのに街中のマンホールびくともしない夜 完成しない建物だったわたしたち屋根がないのに血の繋がった 目の敵って心の友ってことでしょう、野花で編んだかんむりあげる 植物と土を分別して捨てるときたましいはどちらの味方? 百マス計算埋める手つきで地球上のあらゆるイニシャルをかっさらう わかったよピアノの中で寝るやつがブスってことでいい

      • 【短歌連作21首】口の中はクリスマス一色

        帰っておいで寄り道はだめ鍵穴にねじ込めば真っ赤に錆びる舌 貴金属をお皿にのせて、貴金属をコック帽に詰めて、だいじなお話です。 陰口が動物柄に繁るから 食べられたら困るのわかるから 長崎の出島の地図に欠けた歯を転がすといい香りざらめの 月をわざわざ見上げずとも作れたじゃないフェルト製の隠れキリシタン 光る樹の病気があなたにも来るよ寒い季節は全身がもう 好きで好きで好きで赤らんで好きで好きでプラスチックの橇まっぷたつ 妈妈、さかさまのオーナメント、ママは二度漬け禁止

        • 【短歌連作28首】結婚願望

          みんなより東に住んで空港は羽田より成田を選び取る 伸びるだけ腕を伸ばして掲げてもなんの電波も拾わない傘 抱き帰る雨で壊れた紙袋 素足で越えたい津軽海峡 ついてきちゃったもんは仕方がないなんて終わった恋を野良猫みたいに 歴史的瞬間(笑)をおめでたがっていつのまに塞がれた蟻の巣 願うのはわたしのあなた日本一大きな橋をここに架けます 腕の毛を淡く伸ばしてかわいがる田舎の天使と都会の天使 お互いにお互いをかたどっていくわたしたちにプリクラいらないね 眼光を決めるのは結

          【短歌連作】金継ぎ(抄)

          「おおきく口をあけてあーっと鳴きなさい」濡れてきれいな銀の探針 歯を放りあげて届かずおちてくるおちてくる取り返しつかなさ 地下鉄に飛び乗り汗がひくまでを誰とも目を合わせずにいられた 引っ掻けば白く傷つく・よく走る わたしと車の似ているところ 藤棚をてのひらを傘に仕立てあげいつだって勘違いしている オブラート包みのくるみ餅だろう星のない夜に味があるなら きらきらのものはおおむね不燃ごみ 左右非対称に笑んでみる 銃創のようにいくつも唇のしるし重ねるコーヒーマグに

          【短歌連作】金継ぎ(抄)

          死神の目を騙す(雑文)

          似ていくことと欺くことについて最近は考える。ハロウィンに仮装するのは霊の姿を真似ることで“本物”に見つかっても平気で帰ってこれるようにするためらしいけど、自分が襲われたり何かしらを損なわないために「怖いもの」に擬態するのは、稀なことではないだろうと思う。 最近髪を染めた。光があたるとずいぶん明るく見える、赤紫っぽい茶髪のショートカットだ。私が思い出すのは昔ツイッターで見かけた「派手な髪色に染めてから痴漢やすれ違いざまにわざとぶつかってくる男性の被害に遭わなくなった」という女性

          死神の目を騙す(雑文)

          【短歌連作21首】新生活

          a 崖を見てから崖の語彙 はなむけは少し野蛮になるものだから 足音で自己紹介を。見逃したドラマみたいにずっと待ってた お神輿に乗り込むときの体勢でお腹にいたの?縁起がいいね 横顔にそのための色 今あなたに覆いかぶさる色 天の蓋 にょきにょきと夢が隣り町を目指し友だちの青い窓を叩いた 日常会話が扉を開けて待っている ね 宇宙で暮らす生き物たちよ 内覧に向かう車のごきげんな弾みをずっと思い出せそう 落書きのこの褪せ方がいいんです、と指をさされた壁に絵手紙 不動産

          【短歌連作21首】新生活

          【短歌連作23首】 ♪(initialized)

          それから で始まる話が好き 焼いたきゃべつのにおいを風が届けた *初耳 伸びてくるひげはひげでもねこのひげ マイネーム、のあまい響きよ 知らない人の名前のあとに(クジラ博士・故人)が空色にひかってる 友だちにカスタネットとかめはめ波くらいのかたちの距離感で会う 歩くとき踵がかぱかぱ脱げるけどいいんだこの色が ついてきて 語源から遠く離れた者として強く踏み合うお互いの足 きらきらの目が公園に向けられてからすが見つめるまぼろしの雪 本当のありがとうがまだ言えなくて

          【短歌連作23首】 ♪(initialized)

          【短歌連作30首】かにかまグルーミング

          ありがちな燃料を汲みつづけても防げないからひどい寒空 見惚れていたら古くなる雨 古い愛 縁起の良さで脳がもちきり 留守番の椅子の冷たさ噛みつぶすみかんの歯ごたえも虫めいて 泣き踊る夜はおいしい霜味のアイスクリームのようにおいしい しきぶとん下にとろけるまどろみのちぎれる時はお菓子の重さ 長い冬 こぼされるみず 長い春 よだれかけのはためき 長い冬 客席で季節がひとつ溶けるまで 合唱部員のひらかれた口 人のかたちの布屋さん見たあとはパフェのかたちのぐちゃぐちゃ屋さ

          【短歌連作30首】かにかまグルーミング

          【短歌連作14首】ヒロイン

          落書きの箱の中身を考えて、これって神様からの告げ口? 失敗の自撮りで埋め尽くされてても母星がどこかすぐ言い当てる お手紙 とおもって包みをひらいたらおりものシートで星のお姫さまはしょげました 雪の下にある自転車と直線に伸ばされたト音記号のきもち 亀裂に向かってそれはあざやかなヒッチハイク 月が止まっていれない夜に 乗り捨ての車にもひみつの名前 からあげをお菓子みたいに食べて 「壊れたラジカセ見たことがない 壊れてないラジカセも」 姫は水飲みが下手 星のお姫さまが

          【短歌連作14首】ヒロイン